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患者・市民の「たしなみ」となるような共通言語を身につけ
PPI推進につなげていこう

患者・市民の「たしなみ」となるような共通言語を身につけPPI推進につなげていこう


医学研究・臨床試験を身近に捉え、医療への関心を高める取り組みとして注目される患者・市民参画「PPI(Patient and Public Involvement)」。今回は、長く製薬会社に勤務し、現在は大学での研究やJi4peでも活動する筒泉直樹さんに、PPIを推進していくためのお話を伺いました。

PPI参加への糸口は皆が共通言語を共有する環境づくり


私は製薬会社に30年間在籍し、治験や臨床開発、品質保証の業務にも長く携わりました。2020年に東京大学大学院薬学系研究科に移り、欧米でのPPIへの活発な取り組みを知り、Ji4peの立ち上げにも参加。その重要性を改めて認識し、PPI推進の活動に取り組んでいます。

日本は国民皆保険制度があり、誰もが医療サービスを普通に受けられやすい環境です。しかし、そのためにサービスの偏りや、サービスをつくる段階に、国民がうまくかかわれていないということが見えてきました。では、一緒に話し合いましょう、となればいいのですが、その時に支障となるのが、医療者や製薬会社側と患者・市民が、治験や製薬に関しての共通言語を共有できる環境が整っていないということです。

治験の用語や概要、薬や治療法の名称を言っても理解できないのです。当然ですよね、患者・市民は学んでいないのですから。PPIの概念はわかるが、実践となると、それが大きなハードルになっている。共通言語を獲得し、問題を共有できる環境をつくっていくことがまず先決だと感じました。

さまざまな立場や意見の違う人が集う場に参加することが大切


Ji4peでは体系的な人材育成を目指し、ABCDEの5つの学習コースを設けています。その中でAコースは患者・市民のための人材育成コースで、創薬から処方までの過程や共通言語を習得することができます。企業や専門家の人もAコースを学ぶと、ご自身が普段言っていることと市民の意識とのギャップについても学べると思います。また、若い世代や子どもにも興味をもってもらうために、マンガでのツールもあります。PPIへの取っ掛かりとして、そういうものを利活用するのもいいと思います。

PPIを浸透させるために、国民皆保険制度という背景をふまえたうえで、日本独自の環境づくりとして、薬はどのようにつくられ、どうすればより良いサービスを受けられるのか。共通言語を含め、そういうことを国民の「たしなみ」として若い世代から身につけることが大切だと感じています。長生きする時代になり、今日は患者ではないけれど、明日は患者かもしれない。立場が変わり必要性が生じたとき、基本的な知識のある・なしでは大きな違いがあります。

患者・市民側だけでなく、医療従事者もPPIの活動にどうかかわればよいのかわからないという話を聞きます。医療の枠にとらわれず、患者団体の方々や企業など、違う立場の人と意見交換できる機会をもつことが大事で、シーズ(もっているもの)とニーズ(求められているもの)をつなぐきっかけにもなります。Ji4peの活動でも、普段はかかわりがもてない組織や個人と話す場などのプラットフォームづくりに取り組んでいます。さまざまな知見や体験を知る機会をもっと増やしていく。それらが好循環で、共通言語を基本的なたしなみとして備えた人たちが増えていく。それが、PPIの機運を高める突破口になるのではと考えています。

PPIの学びの場


● 体系的な人材育成(PEエキスパート学習コース)
● 楽しく学べる子供たちのための社会学習コース(Webで自由研究。医療のマンガ辞典)

筒泉 直樹さん プロフィール

広島大学病院 特命教授<br>大阪大学医学部附属病院 特任准教授<br>(一社)メドグラティアム 代表理事<br>筒泉 直樹 さん 広島大学病院 特命教授
大阪大学医学部附属病院 特任准教授
(一社)メドグラティアム 代表理事
筒泉 直樹 さん
1964年大阪生まれ、京都在住。外資系製薬会社にて30年にわたり医薬品の開発に従事。東京大学大学院薬学系研究科、国立精神・神経医療研究センターを経て、現職。
(一社)医療開発基盤研究所 理事、(一社)日本QA研究会 理事、(一財)臨床試験支援財団 評議員、ACRP米国本部フェロー。
趣味は、音楽(ヴァイオリン他)、スキー、スキューバダイビングなど。