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研究者や企業に働きかけて治療薬開発を実現
車いすユーザーのためのアプリも開発し、社会貢献を目指す

研究者や企業に働きかけて治療薬開発を実現
車いすユーザーのためのアプリも開発し、社会貢献を目指す

2024年12月に販売が開始された「GNEミオパチー ※1」治療薬は、患者団体が行政や研究者、製薬企業に熱心に働きかけ、連携して取り組んだ結果として誕生した薬です。NPO法人 PADM ※2(遠位型ミオパチー患者会)代表の織田友理子さんは、当事者としての視点を活かし、車いすユーザーのためのアプリ開発も実現し、国内外で注目される存在となっています。今回のフォーカスオンでは、織田さんに治療薬やアプリ開発の経緯と、活動を支える思いをお聞きしました。

※1 GNEミオパチー:遠位型ミオパチーの代表的な型のひとつ
※2 PADM:Patients Association for Distal Myopathies

NPO法人 PADM 代表
認定NPO法人 ウィーログ
代表理事 織田 友理子 さん


NPO法人PADM代表、認定NPO法人ウィーログ代表理事。
2002年22歳で遠位型ミオパチーと診断される。2005年に結婚、翌年長男を出産。2019年国連後援のワールドサミットアワードでグローバルチャンピオンを受賞。2023年ジャパンSDGsアワードにおいてSDGs推進本部長(内閣総理大臣)賞受賞。2025年7月国連本部での国連ハイレベル政治フォーラム(HLPF)で、日本のSDGsに関する取り組みの発表に参加。

 
 
まず、治療薬開発の経緯を教えてください

「GNEミオパチー」は、手足の先など体幹から遠い部位より筋力低下が始まり、徐々に全身に及ぶ進行性筋疾患の一種で、日本国内の患者数は1000人に満たないとされる希少疾病です。

私たちは、2008年から任意団体「PADM遠位型ミオパチー患者会」として活動を始めました(2013年に法人化)。2009年にGNEミオパチーに対するシアル酸補充療法の有効性を研究するマウス実験が行われていることを知り、研究代表者の西野一三先生(国立精神・神経医療研究センター)に面会し、創薬をお願いしました。また、難病指定と治療薬実現を訴えて署名活動を行い、6年間で204万人の署名を集めて厚生労働省に提出し、2015年に指定難病となりました。

並行して、治療薬開発を多くの製薬企業に働きかけましたが、莫大な資金がかかると断られ続けました。ようやく1社が公的助成を得られることを条件に協力を名乗り出てくれたので、行政機関への陳情を何度も行い、助成金を獲得。2010年から青木正志先生(東北大学)が中心となって医師主導治験が始まりました。そして、2024年3月に治療薬が正式に承認され、12月から販売が開始されました。

バリアフリーのアプリはどのようなきっかけで生まれたのですか

バリアフリーマップ 「WheeLog !(ウィーログ)」アプリ バリアフリーマップ 「WheeLog !(ウィーログ)」アプリ 2010年に助成制度を利用してデンマークに留学し、現地の障がい者の活動を学び、単に支援してもらうのではなく、「面白そう」と思ってもらって健常者を巻き込む活動を目指したいと考えるようになりました。その後、2014年にバリアフリー情報を発信する「車椅子ウォーカー」という動画チャンネルをつくりました。

しかし、一方的な情報発信ではなく、双方向で情報を共有できるプラットフォームが必要と考えるようになり、米グーグル社主催の社会貢献アイデアコンテスト「Googleインパクトチャレンジ」に応募し、グランプリ賞金5000万円を得ました。

そして、福祉工学の研究者である伊藤史人さん(現・岩手県立大学)やロボット研究者の吉藤オリィさん(オリィ研究所)らの協力で、車いすユーザーが安心して外出できるバリアフリーマップ「WheeLog!(ウィーログ)」というアプリを開発したのです。

 
 
行政や製薬企業への働きかけや連携に際して、どのような点に留意しましたか

国連ハイレベル政治フォーラム(HLPF)でのスピーチ 国連ハイレベル政治フォーラム(HLPF)でのスピーチ 私たちは、治療薬開発を目標に、「何もしなければ、何も変わらない。」とスローガンを立てて署名運動や治験参加者募集などに取り組んできました。目標を明確にして、自分たちが今、何をなすべきか、何が必要かと考えて広く発信しながら活動した結果、協力者が増えてきたという実感があります。

治療薬開発が始まってからは、同じ目標に向かって製薬企業や研究者の皆さんと一緒に歩むという思いで、密に連携を取りながら私たちにできることは少しでも役に立ちたいと活動してきました。改めて、治療薬開発は本当に多くの皆さんの協力で実現したことだと感謝しています。そして、私たちの取り組みが、まだ治療法のない難病の患者団体の活動のモデルケースになればいいなと考えています。

症状が進行する中でも、精力的に活動されている織田さんのモチベーションはどこから生まれてくるのでしょうか

私は、患者であり、重度障がい者ではありますが、とても恵まれていると思っています。夫をはじめ、私という人間を理解し、手を貸してくれる人たちがいて、活動する場があります。こうした環境に恵まれている当事者は少ないですから、そのリソースを社会貢献に活かすべきだと思いますし、貢献することが私の生きがいになっています。

治療薬もアプリ開発も、私は実現すると信じていましたが、周囲には「実現できない大きな夢」と思われていたようです。しかし、本当に実現した今、周囲の空気感が変わり、より信頼されるようになってきたと感じています。だからこそ、この信頼をさらなる社会貢献につなげていきたいのです。

当事者として自分が感じる困難を、次の世代に引き継がないようにするため、問題解決につなげたい。自分が使命を果たせるのであれば、生きている限り使命を果たしたいと思っています。

団体のリーダーとしては、どのような思いがありますか

希少疾病の患者団体は稀有な存在であり、大切な存在です。「WheeLog!」が評価され、車いすユーザーとしての側面が注目されるようになりましたが、PADMは難病患者の問題解決に取り組む団体であるべきと考えて、アプリの管理は別団体で行っています。

診断を受けた際、医師からは「患者数が少ないから同じ病気の人に会うのは難しいだろう」と言われました。しかし、インターネットが発達して全国の患者さんとつながれるようになりましたし、私は首から下が動かせませんが、視線入力装置で国内外の人とコミュニケーションができています。想像の域を超えて社会が変わり、私たちを取り巻く状況も変わってきました。だからこそ、時代に合わせて、常に活動をアップデートしていくことが必要だと思います。

その一方で、インターネットやSNSで患者同士がつながることはできますが、ただ知り合うのではなく、患者が安心してつながり、より良く生きるという思いを分かち合えるのは患者団体だと思うのです。これからも、何があっても安心してつながれる場の提供という、団体としての使命を守りつつ、社会的に信頼される活動に取り組みたいと思います。

まねきねこの視点

『まねきねこ』では以前から、治療薬開発に向けたPADMの活動に注目してきました(2012年第32号掲載)。行政や研究者、企業、支援者との連携や協力を得て、前向きに進む織田さんの活動は、多くのヘルスケア関連団体の皆さんにとっても参考になるのではないでしょうか。