ヘルスケア 仕事探訪 第5回
精神保健福祉士
心のケアと生活支援 双方が求められる専門職
病院から司法施設まで幅広い領域で従事
精神保健福祉士は、1997年に誕生した精神保健福祉領域の国家資格です。心に病や障がいのある人の相談や、社会復帰への訓練などを行い、他職種とも連携しながら、生活課題の解決やサポートを行う仕事です。
長らくPSW(Psychiatric Social Worker)の略称で認知されてきましたが、近年、国際的にも一般的なMHSW(Mental Health Social Worker)という呼称が広まりつつあります(以下、MHSWと表記)。その背景には支援対象が、精神障がい者に限らず、メンタルヘルス(心の健康)に課題のある人にまで広がっていることがあります。また、配属される場所は精神科病院にとどまらず、多岐にわたります。
■ 精神科医療機関
受診や入院に伴う患者や家族の悩みを受け止めながら、医師の診療に必要な情報を聞き出します。また、困りごとを聞き、支援する役割を担います。退院支援では、家族や施設の受け入れを調整し、復学や復職、住む場所の確保などの解決策を探っていきます。
■ 行政機関
障がい者福祉に関する相談窓口となっている市区町村役場で、地域住民からの相談や各種手続き、福祉サービスを利用するための支援などを行います。精神保健福祉センターや保健所では、心の健康に関する地域全体の課題に取り組んでいます。
■ 司法施設
「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」(2003年制定)により、社会復帰調整官や精神保健参与員への任用があり、また、刑務所、少年院などの矯正施設でも配置が進んでいます。
■ 教育機関
いじめや不登校、その他さまざまな生活上の問題についての相談援助を行います。家庭や地域の関係機関の中心となり、地域ぐるみの支援に取り組んでいます。
■ 産業分野
職場で増えつつあるストレス性疾患の予防やうつ病対策、職場復帰のための研修など、働く人の心の健康を守るための取り組みが進められています。
人に寄り添い、 答えを導き出すことにやりがいを見出す
高ストレス社会といわれる現代。心の病気は誰もがかかる可能性のあるものです。大きな社会問題となっている自殺、虐待、引きこもり、いじめなども、精神的な問題と深いかかわりがあり、また、甚大な事故や災害時には心のケアの専門家の配置が求められています。
そんなMHSWは、どんなときにやりがいを感じているのでしょう。「病状が落ち着き、患者さん自身の本来の力が発揮され、いきいきと過ごす姿を見たとき」「人生の再スタートを踏み出す場面に立ち会える」「マラソンの伴走者のようにサポートしていける」など、病気や生きづらさを抱える人に寄り添い、ともに解決策を見つけていくことに、大きなやりがいを感じているようです。さまざまな深刻な課題を抱える現代社から、期待が寄せられている仕事といえます。
仕事DATA
■ 人数 113,121名
※2025年5月現在、(公財)社会福祉振興・試験センターへの登録者数
■ 精神保健福祉士 試験受験資格
学歴や実務経験、養成施設の修了などにより、11のルートが設定されている。保健福祉系大学卒業ルート、同系短大を卒業し相談援助実務を経験するルート、一般大学・短大を卒業し相談援助実務の経験や一般養成施設で学ぶルートなどがある。
■ 勤務先
病院、自治体・保健所、福祉事務所、精神保健福祉センター、地域活動支援センター、児童養護施設、矯正施設、教育機関、企業など
参考URL・文献
(公社)日本精神保健福祉士協会
(公財)社会福祉振興・試験センター
田中英樹 菱沼幹男編著『社会福祉士・精神保健福祉士になるには』ぺりかん社 2021
WILLこども知育研究所編著『精神保健福祉士の一日』保育社 2017