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中枢性尿崩症(CDI)の会

中枢性尿崩症(CDI)の会

関東支部支部長 渉外部部長 大木里美

稀少疾患と言われる病気は社会的な認識度が低いことから、医療や福祉の面でもさまざまな問題を抱え、その患者会を取り巻く環境にも厳しいものがあるようです。そこで今回は、少ない会員数や資金不足に苦労しながらも、他の団体との連携やネットワークの構築により活動の幅を広げている「中枢性尿崩症(CDI)の会」を取り上げ、稀少疾患の患者会が直面する問題やその解決策を探ってみました。

活動の状況
情報提供と患者同士の交流を目的に、患者会を結成

中枢性尿崩症(CDI)は、通常、脳下垂体後葉から分泌される「抗利尿ホルモン」が分泌されないか、または低下する病気で、発症は3万人に1人、患者数は全国に4000〜5000人とされるめずらしい病気です。

抗利尿ホルモンは腎臓内で水の再吸収(尿濃縮)を促し、体内に必要な水分量をコントロールする働きを持つので、CDI患者の場合は、体内の水分が大量の尿となって排出され、常に水分不足の状態になります。脳腫瘍や外傷によって視床下部・脳下垂体後葉に発生した障がいが原因となる続発性CDI、遺伝による家族性CDI、原因不明の特発性CDIがあります。内分泌科領域の病気ですが、専門医は全国に10人以下で、誤診される率もとても高いようです。足りないホルモンを補充する治療法により通常に近い社会生活を送ることができますが、完治することはありません。

稀少疾患ということでなかなか同じ病気の人との出会うことがなく、病気に関する情報も少ないことから、香川県在住の現代表が、情報提供と患者同士の交流を目的にホームページを作り、2001年5月に「中枢性尿崩症の会」を立ち上げました。2002年4月に名古屋で初めて総会と勉強会を開催しましたが、この時は参加者全員が患者同士の出会いに感動しました。現在は関東支部と関西支部に分かれて活動しており、関東支部は北海道から岐阜県までをカバーしています。本部は香川県ですが、関東には厚労省があり、ネットワークを広げるチャンスも多いので、関東支部に渉外部を設け、対外的な活動を行っています。

患者会運営の、最大の問題は人手不足

会員は幼児からお年寄りまで各年代にわたり、会員数は少しずつ増えていますが、運営面での大きな問題は資金不足と人手不足です。特に人手不足が深刻で、会員数が少なく、病気で無理をすることができないので役員の確保すら難しいのが現状です。親の会も作ったのですが、結局立ち消えになり、人手さえあれば続くのに…と悔しく思います。情報提供や相談はパソコンによるメールが中心なので、通信環境のない場合は原則として受け入れていません。パソコンが使えなくても入会したいという要望は多く、会としても受け入れたいのですが、役員が忙しすぎて電話相談などにも対応できませんので、それをどう解決していくかが今後の課題です。また、専門医が少なく、しかも名古屋近辺に集中しているので各地で勉強会や講演会が開きにくいという問題もあります。

そんな中でも会を活性化するために、緊急事態時のSOSカードの作成配布や、食事会の開催など毎年何か「新しいこと」を行うようにしています。会員同士のメーリングリストでは、最初から病気以外のことも書き込む設定にしました。外出したとか、仕事場でこんなことがあったとか、日常生活の話題の中に他の患者さんの参考になることもありますし、病気のことが不安で外に出られない患者さんの励みにもなるようです。

今後はホームページの充実や、Q&Aブックの作成などにも取り組み、電話相談にも対応できる「普通の患者会」をめざしたいと考えています。

連携やネットワークで、活動の幅を広げる

CDI患者が直面している問題は、海外では主流となっている便利な標準薬(デスモプレシン錠剤)が日本では認可されていないことと、医療費の公的補助が受けられないことです。CDIは下垂体機能障害の一つですが、複数のホルモン病を併発している患者も多く、高価なホルモンの薬の他にMRI検査を受ける必要もあり、専門の医療機関が数少ないので通院に交通費もかかり、多くの患者は高額な医療費に困っています。そこで医療費の公的補助を求めて、下垂体系の患者会が集まり「日本下垂体機能障害患者団体連合会」(日下連)を結成し、特定疾患の追加認定を受けるための活動を始めました。具体的には、共同で要望書の提出や署名活動などを行っています。

また、群馬大学医学部の市民講座に参加したことがきっかけで、医療情報部の酒巻教授と知り合い、医学生を対象とした授業で患者講師を務めました。現在は酒巻教授や他の患者会の人たちと「患者の視点で作る教科書づくり」に加わっています。

交流のある「腎性尿崩症友の会」の紹介で「ヘルスケア関連団体ネットワーキングの会」にも参加するようになりました。また、ネットワーキングの会が主催するワークショップに参加して日本コンチネンス協会とつながりができ、講演を依頼したり、泌尿器科学会に参加することもできました。ワークショップでの関東地区の集まりで埼玉県障がい難病団体協議会を知り団体加盟したことにより、埼玉県の県民講座という形で関東でも初めて医療講演会・勉強会を開催し、このつながりから寄付金を得て会を紹介するパンフレットを作ることもできました。「ネットワーキングの会」の関東・関西学習会のつながりも貴重で、講演者を探すときや署名活動の方法を知りたいときなど、さまざまな団体の知恵を借りています。こちらから声をかけて交流していけば、小さな会でも連携していけば、こんなに活動の幅が広がるということを実感しています。

CDI患者のQOLはあまりにも低いので、この状態を何とかしたい。幸い、ワークショップへの参加や紹介パンフレットが契機となって、ネットワークが広がり、運が開けてきたと感じます。「いつか私たちの会が軌道にのったら、他の会のお手伝いをしよう」を合い言葉に、今は多くの人や団体の力を借りながら、少しずつ活動を広げていきたいと考えています。

主な活動

■パソコン(メール等)での情報交換
■交流活動(親睦会・食事会など)
■会報発行(年2回)
■最新医療情報の入手
■総会、勉強会、講演会の開催
■デスモプレシン錠剤(飲み薬)の国内導入活動
■特定疾患追加認定等、医療費公費 負担の実現に向けた活動
■啓発活動(パンフレットの配布等)
■役員による幹事会の実施、外部勉強会への参加
■その他、よりよい環境作りのための活動

組織の概要

■設立/2001年5月
■会員数115名(関東支部62名、関西支部53名)