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九州IBDフォーラム・熊本IBD

九州IBDフォーラム・熊本IBD

会長 中山 泰男氏

IBD(炎症性腸疾患‥Inflammatory Bowel Disease)とは通常、潰瘍性大腸炎とクローン病のことを指し、それぞれ大腸、または大腸および小腸に認められる難治性の慢性腸炎です。九州IBDフォーラムは、熊本、宮崎、佐賀、長崎のIBD患者団体が合同で連携し、社会保障の充実やQOL(生活の質)の向上、就労支援などの活動を展開しています。熊本IBDを立ち上げ、幅広い運動を通して九州IBDフォーラムへと発展させてきた、熊本IBD会長の中山泰男さんにお話をうかがいました。

活動の状況
闘病体験を役立てたいという思いを持って会を設立

IBDは10〜20歳代の若年層の発症率が高く、私も1981年、17歳の時に熊本市の病院でクローン病と診断されました。当時は今のように治療法も進んでおらず、院内のIBD患者会で医師から、「君たちは治らない病気で本当にかわいそうだ」と言われ、非常にショックを受けました。その後入退院を繰り返し、2001年、何度目かの手術後に、同室に入院していた中学生のIBD患者に医師が同じように「もう治らない病気です」と言うのを聞きました。医療者側からの一方的な言葉に、20年経っても何も変わっていない、これではいけないと、病院から独立した「熊本クローンの会」を患者自身の立場で設立しました。 その時に強く思ったのは、私たちの闘病体験を役立てたいということでした。体験を話すことで他の患者の励みや参考になる。今でいうピアカウンセリングです。話すことで私たちもつらい過去から抜け出すことができる、生まれ変われるのではと思ったのです。熊本県内の保健所を2年間かけて根気よく訪問し、患者団体として徐々に認められ、体験発表ができるようになりました。

難病患者全体の支援を見据えて活動を展開

発足と同時に全国のIBD患者会の連絡組織、IBDネットワークにも加盟。2003年には「熊本IBD」と改名し、潰瘍性大腸炎患者の入会を促進しました。「子どもの思いがわからない」と親が入会するケースも増え、私たちの若い頃の体験談を聞くことで安心される方も多いようです。 活動を続けている中で、熊本県全体の難病施策の遅れが見えてきました。熊本IBDとして行政に要望書を提出しても、「それはあなたたちだけの問題で、他の団体は何も言ってこない。困っていないからだ」という答申です。そこで県内の患者団体に呼びかけ、2003年に9団体が集い「熊本県難病団体連絡協議会」が発足。事務局は熊本IBDが引き受けました。難病相談支援センターの設置では、県から運営委託を受けるための母体、「NPO法人熊本県難病支援ネットワーク」設立の主事務を担当。署名を集め、発足に尽力しました。 私たちの活動の原点は、IBD患者の社会参加です。若いIBD患者が将来に夢を持てるようにするにはどうすればいいかを考えたとき、IBDだけのことを考えていても前に進みません。難病患者全体で団結しなければ。そのために熊本県の難病施策の推進、JPA(日本難病・疾病団体協議会)への加盟など、全国とつながっていく運動を展開してきました。また、ヘルスケア関連団体ネットワーキングの会への参加をきっかけに、いろいろな患者団体の方々、医療・福祉関係者や大学の先生方との出会いがあり、貴重な意見や情報が得られ、会の大きな力となっています。

患者団体は地域の資源「九州IBDフォーラム」を結成

IBDネットワークのイベントやJPAの九州ブロック会議などを通じて、九州各県のIBD患者団体との友好関係が深まる中、「IBD宮崎友の会」が深刻な役員不足で解散するという話を聞きました。それなら熊本IBDと合併しようと持ちかけました。会報の発行やイベント開催を合同で行って無駄を省き、かつ、お互いの患者団体の独自性は残し地域に密着した活動は続けていこうというものです。患者団体は地域の資源です。患者にとって相談できる窓口であり、電話1本でつながれる。それは行政にとっても大きなメリットです。つぶさないために支え合う仕組みができないかと考え、2006年に「九州IBDフォーラム」という合同会派を結成しました。2007年には「佐賀IBD縁笑会」が、2010年には長崎の「チョウチョウ会」が合流し、現在4県の団体で構成されています。

病名を明かしての就労を訴えていきたい

若年で発症するIBD患者にとって就労はとても大きな課題です。2006年のIBDネットワーク熊本総会では、就労がIBDネットワークの基本事業として採択されました。就労支援世話人という新しいポストができ、私が初代世話人として厚生労働省と折衝し、調査事業などを行ってきました。 IBD患者は病気を隠して就労している人が多いのが実情です。熊本IBDのスローガンは「病気を明かして就労しよう!」です。難病であっても仕事がしたいという意志を示そうと、難病相談支援センターからも、ハローワークに病名を記入して就労希望の登録をしようと呼びかけています。 通院状況や仕事をする上で配慮が必要なことなどが記入できる「難病者就労相談シート」も作りました。 それらの結果「病名を明かしたら壁はそれほど高くはなかった、高くしていたのは患者自身だった」という気づきも生まれ、就労実績が上がってきました。

患者として堂々と生きていける社会をめざして

2010年には、熊本IBD10周年記念「障がい者制度改革で難病はどうなると?」というシンポジウムを開催しました。九州IBDフォーラムもある程度仕組みが整ってきたので、次のステップは障がい者制度改革を受けて自分たちの意見をまとめ、必要な支援を要求していくことです。2009年には熊本でも「障がい者差別禁止条例をつくる会」が設立され、熊本IBDの長廣幸事務局長が副代表に選任されました。患者であることで卑屈にならない、患者にも人権があることを理解して堂々と生きていける社会をつくっていくのが、私たちの大きな目標です。

事務局長 長廣幸 氏
私も15歳で発症したクローン病患者です。中山会長にすすめられ闘病体験をさまざまな機会で話し続けてきましたが、泣かずに冷静に話せるようになるまで3年かかりました。話すことで聞く側も話す側も元気になれることを実感しています。今後、会では若い世代の話すこと(おしゃべり)が得意な「しゃべりすと」の育成に力を入れていこうと話しあっています。

主な活動

■患者および家族の交流会・勉強会、シンポジウムなどの企画・開催
■IBDに関する情報の収集と提供・4県合同の会報誌『こんちぇると』の発行(毎月)・ホームページの公開
■他団体と連携し社会保障の拡充、就労支援、QOL向上を目指す活動

組織の概要

九州IBDフォーラム
2000年 熊本クローンの会として設立
2001年 IBDネットワークに加盟
2003年 熊本IBDと改名
2006年 熊本IBDとIBD宮崎友の会の合同会派として九州IBDフォーラム設立
2007年 佐賀IBD縁笑会が合流
2010年 チョウチョウ会が合流
■会員数:250名