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日本ALS協会 筋萎縮性側索硬化症と共に闘い、歩む会

日本ALS協会 筋萎縮性側索硬化症と共に闘い、歩む会

常務理事(事務局長) 金沢公明 氏
副会長 川上純子 氏
理 事 吉本佳預子 氏

難病中の難病とも言われ、進行すると全身の自由が利かなくなるALS(筋萎縮性側索硬化症)。この病気と共に闘い、歩む会として25年前に設立されたのが日本ALS協会です。人工呼吸器を着けた患者が先頭に立ち、国や行政に直接働きかけて最重度患者に必要な制度や支援を実現し、難病対策の進展にも大きな役割を果たしてきた日本ALS協会の活動をご紹介します。

活動の状況
ALS患者とその家族が歩み続けた25年

ALS(筋萎縮性側索硬化症)は、全身の運動神経が侵され、発病からわずか数年で、歩くことも話すことも食べることもできなくなり、全介護の状態になることも珍しくない病気です。呼吸機能に障がいが及ぶと、呼吸補助装置や人工呼吸器などが必要になります。50〜60代で発症することが多く、国内の患者数は約8500人と言われ、患者さんの高齢化が進んでいます。

原因は不明で、今のところ、病気の進行を止めるまでの効果が認められる治療法は見つかっていません。しかし、医療や介護技術の進歩により、致命的な症状である呼吸筋の麻痺を人工呼吸器などの装着によってカバーし、療養生活のための適切なサポートがあれば、生きられるようになってきました。 日本ALS協会は、1986年、患者である川口武久さんの闘病記『しんぼう』の出版を静山社社長松岡幸雄さんが手がけたことをきっかけに、川口さんが初代会長、松岡さんが事務局長として、神経内科の権威であった椿忠雄医師の協力などを得て設立され、患者、家族、遺族によって運営されてきました。 日本ALS協会設立当時は、ALSに対する社会の認識は希薄で、患者さんへの告知を躊躇する医師も多い時代でした。そこで、日本ALS協会ではまず、闘病状況や病気に関する情報を掲載した機関誌の発刊や、近隣の患者同士が交流するための支部づくりに取り組みました。さらに、会員の体験をふまえ、医師や専門職の協力も得てケアブックを発行しました。ケアブックは改訂を重ね、新たに発病した患者や家族のバイブル的な存在となっています。

ALSの原因究明と治療法開発やケア体制の確立を目的としてジャルサ基金(後にALS基金と改称)の制度をつくり、1990年から募金活動にも取り組んできました。1995年からは「ケア講習会」をほぼ毎年開催し、医療福祉関係者にも参加を呼びかけ、ALS患者を取り巻くさまざまな問題を取り上げています。2006年には「ALS/MND(運動ニューロン病)国際シンポジウム」を横浜で開催するなど海外の医療関係者や患者・家族団体との交流も進めています。

患者自らが訴え、医療や福祉制度の改善を実現

日本ALS協会の大きな特徴は、人工呼吸器を着けた患者自身が先頭に立って、自らの生きる姿を訴え、社会参加することにより、多くの人の共感を呼び起こし、ALSに対する理解を深め、制度面の改善を実現し、患者がよりよく生きられる世界を切り開いてきたことです。

長期療養施設の設置、研究班の設置、人工呼吸器などの公費負担、コミュニケーション機器の日常用具組み入れ、一時緊急入院制度、郵便による代筆投票制度、40歳からの介護保険認定、在宅療養患者・障がい者に対するヘルパーの吸引容認などは、国や行政に働きかけた活動の成果です。そして、その活動はALS患者だけではなく、他の難病患者や障がい者にも役立ってきたと自負しています。

呼吸機器は性能も飛躍的に進展し、人工呼吸器を装着することによって大幅に延命させることができ、また同時にALS患者の療養環境は改善されてきました。しかし、近年は高齢化社会の進行と経済不況が国家財政を圧迫して医療・福祉が後退し、ALS患者の療養の場は在宅療養中心に移っており、介護する家族の負担も増加傾向にあります。

今後、取り組むべき課題としては、法人化の実現、組織の充実強化、医療・介護ネットワークの構築、ALS基金の充実発展などがあげられます。法人化については、以前から社団法人を前提とした準備を進めてきましたが、公益法人改革が進められる中でまだ実現には至っていません。今後の協会の在り方と合わせて、どのような法人化が適当か検討を進めています。

ALSが治療できる病気となるまで、当事者としての活動を

ALSを取り巻く医療や福祉の環境は整備されてきましたが、ALSは今もなお、多くの患者さんが次々と亡くなっている病気です。人工呼吸器を着けられないために、あるいは生き続けたくても介護の手がないために、亡くなる患者さんがいるという現実を解決したいというのが、私たちの願いです。また、残された家族への対応も私たちだからこそできることです。人工呼吸器を着けられなかったことを悔いる家族もいれば、人工呼吸器によってかえって苦しい思いをさせたのではないかと後悔する家族もいるなど難しい問題ですが、グリーフケアなどの取り組みを少しずつ始めています。

医療の進展により、ALSの原因も少しずつ解明され、治療薬の治験なども行われるようになりました。創薬も夢ではなく目標というところまできていますので、創薬を実現するために私たちも製薬企業に積極的に協力したいと考えています。

インターネットなどでALSについての情報も簡単に得ることができるようになり、あるいは今までの活動によりさまざまな制度や仕組みが整備され、皮肉なことに日本ALS協会を必要としない患者さんや家族も増えてきました。支部の活動が活発になる一方で、本部は人材難や財政難に悩まされるという現実もあります。患者団体としての活動は厳しい時代を迎えていますが、ALSが治療できる病気となるまで、患者や家族が安心して暮らしていけるように、当事者としての思いや願いを発信し、社会に働きかけていきたいと思います。

主な活動

■療養支援
患者家族への療養支援活動(たん吸引の講習会開催、ALS相談室、ケアブックの編集発行)
■企画調査
たん吸引の実施状況の把握、重症高齢者の安心生活環境提供に関する調査協力、事前意思表示に関する調査など
■啓発・広報
機関誌『JALSA』発行・ホームページ運営・内外セミナーへの講師やパネラーの派遣
■研究助成
ALSに特化した原因究明と治療法確立、介護向上と福祉機器開発(特殊意志伝達装置)
■渉外
障害者自立支援法問題への対応や訪問看護推進モデル事業の取り組み

組織の概要

日本ALS協会
■設立:1986年
■支部:39支部
■会員数:約6000名