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一般社団法人 全国心臓病の子どもを守る会

一般社団法人 全国心臓病の子どもを守る会

事務局長 下堂前 亨 さん
副会長・理事 神永 芳子さん

心臓病の子どもは100人に1人の割合で生まれてくると言われます。近年、医学の目覚ましい進歩により、重症の心臓病児も乳幼児期に手術を受けて約9割が成人できるようになりました。しかし、手術後も生涯にわたって医学的に管理が必要で、また成長につれ、就学や就労など新たな困難に直面せざるを得ません。「全国心臓病の子どもを守る会」は、心臓病の子どもをもつ親や心臓病児者本人たちが、“病気と向き合い、病気とともに生きていくための活動”を行う患者団体です。結成50周年を控え、いっそう充実した幅広い活動を目指す同会とその歩みをご紹介します。

活動の状況
親の会として草分け的存在患者団体の中でも先駆者的な役割を果たす

「心臓病の子どもを守る会」(以下「守る会」)は、1963年(昭和38年)に結成されました。子どもの心臓病には先天性心疾患、不整脈、後天性心疾患(心筋症や川崎病による心血管合併症)などがありますが、当時は、心臓手術を受けられる病院は限られていたうえ、公費の援助もなく、心臓病の子どもを抱える家庭は、病院探しや高額の医療費などに苦しんできました。また、今日も変わらず続く悩みとして、心臓病は見た目にはわからないため周囲の理解を得にくく、あるいは過剰に反応されることの多い病気で、病児や家族が孤独になりがちであることが挙げられます。

「守る会」結成から間もなく、親同士が手を携えてともに支え合い病気を乗り越えようとする活動に賛同が集まり、わずか数年で会員数は大きく増加。全国に次々と支部が誕生しました。「守る会」は、まず、子どもたちが安心して手術などの医療を受けられるように、育成医療制度や新鮮血液確保対策推進の要望などを国や行政に働きかけ、実現しました。さらに、心臓病児を受け入れる保育園や幼稚園が少ない実状から、会員自ら一日保育や日曜保育などに取り組み、地方自治体の支援を得て心臓病児保育園も開園。教育現場へも心臓病児に対する理解と配慮を求めてきました。小児心臓病学会とも協力関係にあり、専門家からも、患者と医療をつなぐ役割を「守る会」が果たし、結果的に小児心臓病治療の進歩に貢献してきたと評価されています。
心臓病の子どものために――との思いひとつに、さまざまな分野で働く親たちがそれぞれの得意分野を活かしながら結束を強める「守る会」は、日本の患者・家族の団体の中でも先駆的な存在として、積極的な活動を続けています。

支部ごとにサマーキャンプや交流会を開催 本部では機関誌『心臓をまもる』を発行

現在、全国ほとんどの都道府県に支部があり、各支部で交流会やサマーキャンプ、クリスマス会、心臓病についての正しい知識や情報を得るための学習会や医療講演会などが行われています。専門医やボランティアの協力もあり、安心して参加できるサマーキャンプは、子どもたちだけでなく、その家族にとっても交流を深める絶好の機会となっています。最近は、病児本人にも理解できる学習会を開催する支部が増えてきました。
結成当初から機関誌『心臓をまもる』を毎月発行していることも「守る会」の大きな特徴です。『心臓をまもる』は、首都圏在住の会員による編集委員会を中心に編集・発行され、会員のほか専門医や医療機関、保健所などに配布されています。心臓病にかかわる医療や福祉制度の情報を提供し、会員や病児のメッセージを紹介して、悩みや思いを共有すると同時に、心臓病児者の現状や直面する問題を社会に訴える役割を果たしています。
成長した病児たちは、「守る会」やその支部の中の青年部を発展させて、心臓病者友の会(心友会)を組織。15歳以上の心臓病者本人たちが運営しています。毎年行われる全国交流会では、全国各地から若い心臓病者が集い、つながりを密にしています。
2011年3月の東日本大震災では、会員の安否確認や避難所の訪問、義援金活動、国への要望を提起しました。心臓病は一見ではわからない障がいであるため、周囲の理解や協力を得にくく、心臓病児の避難生活は困難を極めたようです。その一方で、「守る会」の会員同士の協力や支援が活発に行われ、絆を再認識したという声も多く聞かれました。福島支部で開催されたサマーキャンプは、例年より参加者が多く、みなが互いに励まし合う貴重な場となりました。私たちも大震災を通じて、同じ立場の親たちが子どもの命を助けたいと願い、思いを分かち合い・支え合う「守る会」の“活動の原点”を改めて認識しました。

結成50周年を控え、法人化も実現 成長した病児の自立や就労問題にも積極的に取り組む

2012年、「守る会」は結成50周年を迎えます。50年の間に、医療技術や診断技術は飛躍的に進歩し、今日、先天性心疾患児の約9割が成人を迎えられるようになりました。しかし、大人になっても受診するのは小児循環器科です。循環器の専門医の間にも、先天性心疾患は子どもの病気ではないという認識が広まり、1999年に発足した「日本成人先天性心疾患研究会」は、2010年に「日本成人先天性心疾患学会」へと発展しました。今後は学会と連携した活動も考えています。
また、周産期医療を含め、小児心臓病に対応できる医療施設の集約化が進み、自宅から遠方の施設で手術を受ける病児も増えています。交通費や家族の付き添いといった負担が大きいので、ファミリーハウスの設置や支援体制の充実を図る活動にも尽力しています。
また就労や結婚、妊娠・出産など、子どもの成長につれ、さまざまな問題に直面していくという心配や悩みは、今も変わりません。そこで、「内部障害者シンポジウム」を開くなど、病児の自立や就労の問題を話し合っています。
2010年に一般社団法人に改組した際には、「長年活動を続けてきて、今さら法人化の必要があるのか」と議論になりましたが、特に成人した心臓病者の就労や医療費の問題に取り組むためには、もっと活動の幅を広げ、社会的な認知度を高めるべきであると考えました。財政的な基盤も整備されたのを機に、成人の先天性心疾患の問題を広く訴え、心臓病をもって生まれた子どもが大人になっても、安心して自立してゆける社会を目指して、より幅広い活動を目指していきます。

組織の概要

一般社団法人 全国心臓病の子どもを守る会
■設立:1963年
■会員数:約4500名
■支部:46都道府県51支部

主な活動

1963年 設立
1967年 身体障害者福祉法に心臓病適用
1968年 青年部初の全国交流会開催
1974年 小児慢性特定疾患治療研究事業創設(心臓病児の内科的医療費無料に)
1978年 新鮮血液確保対策予算確保/心臓病者友の会(心友会)誕生
1990年 心臓病など内部障害者に運賃割引適用
1995年 心臓移植シンポジウム開催
2005年 内部障害者シンポジウム開催
2010年 一般社団法人に改組沿革
■機関誌『心臓をまもる』発行
■出版物発行
■交流会、学習会、医療講演会、相談会、クリスマス会、療育キャンプなどの開催