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全国多発性硬化症友の会

全国多発性硬化症友の会

多発性硬化症(MS:Multiple Sclerosis)は、脳、脊髄、視神経などに炎症が起き、運動障害や視力障害、感覚障害、痛み、しびれ、排尿障害など多彩な症状と障がいを起こす難病です。この病気の当事者団体として1972年に結成され、40年以上にわたって活動を続けているのが「全国多発性硬化症友の会」。難病対策の黎明期から、専門医や、多くの患者団体と協力して、海外の治療薬の国内承認や、医療・福祉制度の拡充を目指す取り組みを積極的に行ってきた同会について、副会長の若林章さんと事務局長の坂本秀夫さんにお話を伺いました。

活動の状況
若い世代で好発する神経難病多発性硬化症

多発性硬化症とは、中枢神経(脳・脊髄・視神経など)に繰り返し炎症が起こる病気です。発症原因は不明で、今も根治する治療法は存在しません。病変が多発し、少し古くなると硬く感じられるところから、この名前があります。欧米人に多い病気ですが、日本にも1万7000人程度の患者がいるとされています。発症年齢は10歳〜50歳が多く、平均は約27歳、1対3ぐらいの割合で女性に多い病気です。なお、従来、多発性硬化症のひとつと考えられてきた視神経脊髄型多発性硬化症は、最近の研究により「視神経脊髄炎(NMO: Neuromyelitis Optica)」として区別されるようになりました。

当会が設立された1972年当時は、多発性硬化症は医療関係者にもほとんど知られていない病気で、診断がつくまでに時間がかかり、病気を悪化させてしまうこともありました。最近ではMRIにより確定診断ができるようになりましたが、専門医はまだ少なく、長い期間病気と闘う必要があります。若い時期に発病し、良くなったり悪くなったりを繰り返し、次第に悪化して視力が低下したり、身体が不自由になったりするという病気の特徴と、「感染する」「遺伝する」などの誤解や、差別、偏見も見受けられることから、就労や結婚などに際して困難に直面する患者は少なくありません。

治療薬の開発や医療・福祉制度の拡充に向けて積極的な活動を展開

「日本にも患者がいるのではないか」という専門医の呼びかけに全国から4名の患者が集まり、結成されたのが全国多発性硬化症友の会の始まりです。その後、専門医の組織である「NPO法人 日本多発性硬化症協会」と連携しながら、多発性硬化症(視神経脊髄炎を含む)の原因の早期解明、治療法の確立、医療費の公費負担、福祉向上を目指して活動してきました。現在、正会員600名、家族などの賛助会員150名、全国に9支部をもつ患者団体となっています。支部では、交流会や医療講演会などを行っています。

当事者が運営する患者団体ですから、役員を担当する患者の重症化や高齢化で活動の継続が難しくなることも珍しくありません。そこで、できるだけ役割を分担し、個人の負担が重くなりすぎないように工夫しながら活動を進めています。若い世代が中心となって新しく活動を始めた支部や、県単位で活発に活動している支部もあり、今後が期待されるところです。また、ほかの多発性硬化症の患者団体とも交流しており、「認定NPO法人 MSキャビン」と連携して厚生労働省への要請を行うなど、多発性硬化症に関するネットワークを広げていくために柔軟な姿勢で活動を行っています。

JPA(日本難病・疾病団体協議会)にも加盟し、多くの難病や慢性疾患の患者団体と協力して、医療・福祉制度の拡充や就労の悩みなどに応える活動にも取り組んできました。欧米で開発された新薬の日本での承認を求める活動によって、再発や進行を抑える新薬も使えるようになり、また、いくつかの新薬の開発も進行しています。新薬やインターフェロンなどの治療を適切に受けることで、安定した状態で社会生活を送れる患者が増えてきたことは、当会の活動のひとつの成果と言えると思います。

今、多発性硬化症患者が直面する課題とは

今年から施行された新たな難病法では、医療費助成対象疾患数が大幅に増える一方で、その対象となる疾患の患者数を制限し、患者数の多い疾患や診断基準が確定していない疾患、軽症患者が除外されることになりました。

そのため、今まで多発性硬化症(視神経脊髄炎も含む)患者は、確定診断を受け、保健所に申請を提出した時点から医療費の公費助成の対象でしたが、今年からこの制度は重症患者に限定して適用されることになりました。しかし、最近、適切な初期治療により症状の重篤化や進行を抑えることが可能な患者が多いことがわかってきていますので、診断がついた段階から公費医療費助成の対象としてほしいと考えています。また、重症度分類については病状だけでなく社会生活の困難さも勘案して、実態とかけ離れた認定が行われないように、今回の法改正が受診の抑制につながらないように取り組みを行っていきたいと考えています。

2012年6月に成立した障害者総合支援法では、難病患者も障害福祉サービスなどが利用できるようになりました。しかし、利用している人はごくわずかで、制度自体を知らない患者が多いのが現状です。就労に関しても身体障害者手帳の交付を受けていない患者が多いため、法定雇用率に反映されません。従来、身体障害者手帳の仕組みは固定された障がいを対象としているので、多発性硬化症患者のように障がいが変動する患者は交付を受けにくいのです。そこで、難病患者にも適した認定基準の作成を要望するとともに、障害程度区分の認定申請を受け付ける行政の担当者に対しても、難病患者への理解と支援を周知することを求めているところです。

難病であっても充実した人生を送ることを目指して

今後に向けても、当会では、患者の社会生活や就労・就学などの妨げとなる差別や偏見を取り除くための啓発活動に加え、新たな難病対策の問題点を把握して改善されていくように要望し、患者が安心して治療や療養・社会生活を送れるように取り組みたいと考えています。さらに、欧米で広く使われている新薬の日本での開発、保険適用を願い、「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」への要望も続けます。関係する学会や製薬会社、専門医や厚生労働省との意見交換や情報交換も大切にしながら、患者がより安心して治療を受けられる医療保険制度の確立を要望していきたいと考えています。

医療が進展し、難病対策などの社会制度が激変する中で、患者自身も自分の病気をよく理解し、どのような治療を受けて、どう生きていくのか、就労や結婚、子育てなど人生設計をどう捉えるかを考えることが必要です。そして、必要な治療や支援が確実に受けられるように自ら発信し、行動していかなければなりません。多発性硬化症は増える傾向にあるとも言われています。当会としては、患者団体としての世代交代も進めながら、若い世代の患者も、年を重ねた患者も安心して治療が受けられ、病気があっても充実した人生を送れることを目指して活動していきたいと思います。

組織の概要

■全国多発性硬化症友の会
■設 立 1972年
■会員数 正会員600名 賛助会員150名

主な活動

■医療講演会・医療相談会の実施
■交流会の実施
■ホームページの運営
■電話による療養相談
■厚生労働省への要請
■全国各地の難病連、難病団体および全国 の難病相談支援センターなどとの連携