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道しるべの会

道しるべの会

道しるべの会
会長 谷口 正勝 さん

さまざまな部位に多様な症状が起こる遺伝性の神経難病FAP

家族性アミロイドポリニューロパチー(以下、FAP※1)は、トランスサイレチンと呼ばれるタンパク質が原因で、ナイロンのような線維状の構造をもつタンパク質(アミロイド)が全身のさまざまな部位に蓄積し、手足のしびれ感や、起立性低血圧・排尿障害、心不全・心肥大、蛋白尿・浮腫、吐き気や下痢、視力低下など多様な症状を引き起こす病気です。両親どちらかに遺伝子の異常がある場合に発症し、2分の1の確率で遺伝します。国の指定難病である全身性アミロイドーシスに含まれ、患者は難病法による医療費助成制度の対象となります。

日本では、熊本県と長野県に患者が集中している地域(集積地)がある他、各地でさまざまなタイプのFAP患者が確認されています。多様な症状を示し、特徴的な症状に欠けるため、確定診断されていない患者がかなりいるとも考えられています。

治療としては、アミロイドの9割以上が肝臓でつくられているため、早期の肝臓移植が有効とされ、1990年頃から肝臓移植が行われるようになりました。最近では、神経障害の進行を抑制する薬が、病気の進行を遅らせ、患者の生活の質の向上をもたらすと期待されています。

患者や家族の「道しるべ」となることを目指して発足

志多田正子さんを<br>取り上げた書籍“献身” 志多田正子さんを
取り上げた書籍“献身”
「道しるべの会」は、志多田正子さんという一人の女性の献身的な行動から生まれました。FAP患者や家族は、長い間、原因も治療法もわからない病気と、周囲からの差別や偏見に苦しみながら暮らしてきました。

遺伝病と判明したのちも、病気や家系であることを隠して生活する人が多かったのです。家族や親類をFAPで亡くした志多田さんは、多くの患者宅を訪問し、現在のヘルパーやコーディネーターのような役割を果たし、FAP患者や家族を献身的に支えました。そして「患者さんに生きる勇気を与えたい」「患者さんの生の声を残したい」という思いから、1988年に「道しるべ」と名付けた文集を発行。さらに1989年には、医療機関に後押しされて、地域の患者とともに当会を発足させたのです。

2019 年11月30日に開催された「道しるべの会 30周年記念交流会」 2019 年11月30日に開催された「道しるべの会 30周年記念交流会」 熊本県ではFAP患者の集積地があることから、熊本大学病院のFAP研究グループを中心に臨床研究が盛んに行われてきました。それは患者や家族にとっても有益でしたが、研究を積極的に進めたい医療者側と、ときに考えが行き違うこともあったようです。また海外での脳死肝移植が始まり、次に生体肝移植が行われるようになった中で、経済面やドナーの存在、病気の進行状態といった条件から、移植治療を受けられる人、受けられない人、移植を希望しない人と、患者の中にも複雑な立場の違いが生じました。志多田さんは、医療関係者とのかかわり方や、多様な患者のあり方に配慮し苦労しながら、活動に取り組んできました。

私たちは、「患者同士が本音で話し合える、患者のための会」という志多田さんたちの強い思いとその歴史を受け継ぎ、約10年前から当会の運営を担ってきました。

国際学会への参加や患者の生活実態調査など活動の幅も広がる

「道しるべの会」発行物 「道しるべの会」発行物 現在、会員の多くは熊本県在住の肝臓移植を経験した患者と家族で、ホームページなどを通じて当会を知った全国各地の患者も参加しています。長野県のFAP患者団体「たんぽぽの会」とも交流しています。

活動については、病気についての正しい知識を得ること、お互いに励まし合い前向きに生活できるよう社会に働きかけることを目標に掲げています。不安や悩みを抱えた人が安心して話をしたり、考えたりできる場を大切にするとともに、医療関係者や製薬企業との交流の場もつくり、正しい知識や最新の情報を得る機会を設けています。最近は、患者の生活実態の調査にも取り組み、就労や生活習慣の工夫など役立つ情報の共有、社会への情報発信にも力を入れています。

2019年9月には、ドイツで開催された「医師と患者のためのATTRアミロイドーシス※2のための第2回欧州会議」に参加しました。患者のための食生活ガイドブックなど興味深い取り組みを知ることができ、視野も広がりました。

今後の課題としては、肝臓移植後の患者へのサポートが挙げられます。移植治療を受けると全身的な症状の進行は抑制されますが、FAP特有の、視力低下・失明などの目の症状、心疾患の進行、著しい筋力の低下など、一人の患者が受診する科が増えていくので、今後は医療機関との連携が大きな課題です。さらに患者が就労や社会生活に取り組む際の精神面のサポートや、患者を支える家族へのサポートも必要だと考えています。

また、当会の活動を通じて、医療や社会に対して患者団体の果たす役割が重要であることを実感し、将来的にはNPO法人化など組織基盤を強化する必要があると考えています。あくまで患者や家族のための団体という目的意識を大切にしながら、徐々に〝器〞を大きくしていきたいと思っています。

病気と前向きに向き合う

私たちは、根治療法となる遺伝子治療や薬が開発され、FAPが治る病気になってほしいと心から願い続けてきました。そのためにはもっと広くこの病気を知ってもらい、研究を進めてもらう必要があります。しかし、遺伝病に対する偏見や差別が根強い中で、病気を隠したいという人が多いのも事実です。同じ病気に苦しみ、願いは同じでも、壁ができてしまうこともあり、オープンにしたくないという患者や家族へのかかわり方は、難しい課題だと感じています。

しかし、日本ではFAPの発症年齢が早まる傾向もありますので、若い世代が早い段階で遺伝子検査を受け、必要な治療を受けられるように、正しい情報を発信することは私たちの重要な役割です。そして、親世代が病気に前向きに向き合う姿を見せることで、子どもたちも前向きに生きてほしいと願っています。昨年、テレビ局の取材を受けた時には、子どもたちを含めて話し合った結果、実名を公にすることを決意しました。将来のある子どもたちのために、病気を隠さずに、病気と前向きに
向き合いたい。FAPを治る病気にするためにも、病気を隠さずに生きたい。私たちが前に進むことで、この病気に対するさまざまな問題を解
決したいと考えています。

道しるべの会

組織の概要
■ 設立年 1989年
■ 会員数 約30世帯

活動内容 
■ 会報発行(年2~3回)
■ 講演会や交流会の開催
■ ハンドブック等の発行
■ 患者の生活実態調査