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このサイトは、ファイザー株式会社が社会貢献活動として発行しております『まねきねこ』の情報誌のウェブ版であり、個別の疾患の相談は受け付けておりません。
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一般社団法人 先天性ミオパチーの会

一般社団法人 先天性ミオパチーの会

ミオパチーとは、「筋肉の病気」を意味します。先天性ミオパチーは、乳幼児期早期から筋力低下、筋緊張低下があり、以後もそれが持続する希少難病です。先天性ミオパチーの会は、当事者とその家族による指定難病認定のための署名活動をきっかけに、設立されました。「あきらめたらだめだ」を合い言葉に、分身ロボット「OriHime(以下、オリヒメ)」や、ロボットスーツ「HAL」などの最新のテクノロジー機器を積極的に活用し、生活の質の向上、患者が生き方を選択できるような情報の提供、さらに治療法確立に向けて活動を行っています。同会の理事、伊藤初江さんにお話を伺いました。

一般社団法人 先天性ミオパチーの会 理事
伊藤 初江 さん


筋組織の形態に異常があり原因となる遺伝子が確定されていない希少難病

先天性ミオパチーは、生まれながらに筋組織の形態に異常があり、生後まもなく、あるいは幼少期からの筋力低下、筋緊張低下があり、以後もそれが持続する疾患です。国内では千〜3千人が確認されており、国の指定難病に認定されています。
先天性ミオパチーは数多くの病型に分類されますが、もっとも多いタイプは良性先天型で、発達の遅れから気づくことが多いようです。首の座りの遅れ、歩き始めも2〜3歳と遅く、歩行開始後も転びやすかったり、階段の昇降に手すりが必要などの症状があります。呼吸筋が侵されると、早期から人工呼吸器を必要とする場合もあり、呼吸管理や呼吸リハビリテーションがとても重要です。また、関節の拘縮などの変形に対しては、リハビリテーション、装具、手術療法も行われます。根治的治療はなく、長期にわたりそれぞれの症状を改善、緩和する治療が必要です。
私の息子は生まれたとき、動かず、泣かず、すぐに新生児特定集中治療室(NICU)に入り、退院後も気管支炎や肺炎などで入退院を繰り返しました。周りの子どもと比べて成長が遅く、6歳で筋肉の組織を調べる筋生検を受け、先天性ミオパチーと診断されました。
病名がわかっても、治療法はなく、病気は進行していきます。生活のしづらさや、社会との差、周りの友達との差が徐々に大きくなっていきました。高校2年の時に低酸素、高二酸化炭素の慢性呼吸不全と診断され、当時の肺活量は17%でした。

署名活動「308プロジェクト」をきっかけに、団体を設立

塩崎厚生労働大臣(当時)に署名と要望書を手渡す代表 塩崎厚生労働大臣(当時)に署名と要望書を手渡す代表 後でわかったのですが、慢性呼吸不全の症状は小学校に入学する前から起こっており、頭痛や吐き気、朝起きる時の辛さや、体のだるさを訴えていました。心身ともに不安と恐怖の毎日を過ごしていました。
病院や医師、医療制度や医療格差に疑問をもち、これから生きていくためにどうしたらいいか、模索していました。
そんな時、「まずは病気を知ってもらうことから始めよう」と、指定難病を求める署名活動を開始しました。
2012年に、任意団体である「先天性ミオパチー(筋疾患)の会」(代表・伊藤亮。以下、代表)を発足。国の指定難病認定を求める署名活動「308プロジェクト」を立ち上げ、街頭に立ち市民へ呼びかけ、オンラインでも全国に呼びかけました。
署名活動を通じてたくさんの出逢いがありました。現在も、この時に知り合った筋疾患・呼吸器の専門医や研究者の先生をお迎えし、医療講演会や医療相談を定期開催しています。
結果として署名は14万筆集まり、要望書とともに厚生労働省に提出。15年に指定難病に認定されました

テクノロジー機器の使用など患者の選択肢を増やし可能性を広げる情報を発信

代表が操作して接客する「OriHime-Dタイプ」 代表が操作して接客する「OriHime-Dタイプ」 当会の目的は、先天性ミオパチーという疾患への理解と、社会的認知度の普及啓発、地域格差のない公平な医療体制の確立、医療制度の充実、研究や治療法の促進です。会の活動としては、患者さんの生活の質向上、患者さん自身が生き方を選択できるような情報の配信を行っています。たとえば代表の場合、生活向上のひとつとして「気管切開をしない呼吸補助法(NPPV※)」を行っています。
これにより、アンビューバックを使用して外出することができています。また、分身ロボット「オリヒメ」を操作して、接客業として働いています。オリヒメには、カメラ、マイク、スピーカーが搭載されており、インターネットを通して遠隔操作することにより、まるでその場にいるようなコミュニケーションをとることが可能です。代表の場合は働くことや、それぞれのオリヒメ操作者と会話をするなど、コミュニケーションを楽しんでいます。もうひとつは、ロボットスーツHALの使用です。
これは、脳からの微細な神経をロボットが検出し、身体の動作をアシストしてくれるというものです。HALを装着することで、代表の場合は歩行距離、歩行速度に成果がみられました。
このように、さまざまなテクノロジー機器を使用することで、患者さんの選択肢が増え、できることや可能性の幅が広がると感じます。当会では、このような未来につながるツールについて情報発信したり、ホームページの「みんなの相談室」で相談を受け付けるなどしています。

※NPPV(Noninvasive Positive Pressure Ventilation):非侵襲的陽圧換気療法。侵襲的気道確保(気管挿管)なしに行う人工呼吸法。

企業からの寄付を主とした資金調達で団体を運営

現在、約50名の会員の情報を得て、ホームページにもその方々の症例を紹介していますが、会員といっても会費は無料です。活動資金は主に寄付金です。年2回医療講演会を開催していますが、その際企業様に協賛をお願いし、当会ホームページでバナー広告を掲載させていただいています。
また、会活動のひとつとして、寄付型自動販売機をこれまでに約30台設置。売上の一部を寄付していただいています。現在は年間10台の増設を目標にしています。
団体の役員は、代表と私、他は会の立ち上げから私たちを支えてくれた地元企業の方々で構成されていて、月に1度定例会をしています。

早期根治を目標にして医療・治療研究に積極的にかかわっていきたい

旧・八雲病院での医療講演会の様子 旧・八雲病院での医療講演会の様子 2020年はコロナ禍で状況が一変しました。医療相談会や理事会はオンライン開催となり、今後は専門医を招いての医療講演会もオンラインでの開催を企画しています。先天性ミオパチーは希少難病で専門医が少ないのですが、その中でも多様な考え方の医師や医療関係企業の方もいます。これからは新薬開発のための治験に取り組む時代になっていきますので、医療、製薬会社、研究者とのつながりを大切にして、根治治療に向けて研究協力と治験の患者登録にも取り組んでいます。
会活動としてメディア取材や行政との折衝、イベントの企画などを積極的に行っています。「あきらめたらだめだ」という強い気持ちでスタートした活動が、団体をつくることによって社会に課題を示し、より多くの人に伝え、解決策を探っていくまでになりました。これからも早期根治を目標に、医療・治療を促進するための研究支援や提言活動、患者・家族を支えるための交流、相談会や情報提供を行っていきたいと思います。

一般社団法人 先天性ミオパチーの会
組織の概要
■設立年 2012年
(2014年、一般社団法人に移行)
■会員数 50名

活動内容
■ホームページでの情報発信、「医療相談談話室」での相談
■ 医療講演会、難病フェスタなどのイベント開催
■患者交流会
■医療研究機関との連携