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NPO法人 PAHの会 肺高血圧症患者と家族の会

NPO法人 PAHの会 肺高血圧症患者と家族の会

肺の中を流れる肺動脈の血圧が高まり、心臓と肺に機能障害をもたらす進行性の希少疾患、肺高血圧症。「PAHの会」は、肺高血圧症の患者と家族をサポートすることを目標に、病気と向き合い、正しい知識や情報を得て、悔いのない治療法を選択していくための活動を行っている団体です。日本ではまだ有効な治療法がないとされていた時期から、積極的に海外の情報を収集して治療薬の国内導入に貢献し、コロナ禍で積極的にオンラインを活用して、新たな運営スタイルの確立を目指す同会について、理事長の村上紀子さんにお話を伺いました。

NPO法人 PAHの会
理事長 村上紀子さん

 
 
肺動脈の血圧が高くなり心不全を起こす希少疾患

肺高血圧症は、心臓から肺に血液を送る血管(肺動脈)の内腔が狭くなることにより、肺動脈の血圧(肺動脈圧)が高くなる希少疾患です。心臓から肺へ血液が流れにくくなるため右心不全を引き起こし、命を落とすことも少なくない病気で、指定難病となっています。
私は1996年、娘が肺高血圧症と診断され、この病気とかかわることになりました。当時は治療法も確立されておらず、医療機関から得られる情報も極めて乏しい状況でしたが、幸い、在米の医師である知人から、欧米では薬物治療が行われ、社会復帰も可能になっているとの情報を得ました。渡米して治療を受けた娘は劇的に回復。そこで、この治療薬を日本でもぜひ使えるようにしたいと考え、他の患者・家族と活動を始め、「PAH ※1の会」の前身、「PPH ※2の会」を結成したのです。

※1 PAH:肺動脈性肺高血圧症(Pulmonary Arterial Hypertension)
※2 PPH:原発性肺高血圧症(Primary Pulmonary Hypertension)

海外の情報も得て治療法の拡充に取り組む

第12回PHA国際会議 第12回PHA国際会議 1999年1月に肺動脈性肺高血圧症に対して、厚生省(当時)により治療薬が承認されました。しかし、入院時の使用のみに適用するという厳しい条件つきで例外を認めていなかったこと、病状に合わせて投与量を増やしていかなければならないにもかかわらず、薬価は米国の約10倍という高額なものであったことから、必要な薬量を投与されない例も続出するなどの問題が生じました。そこで、当会では「在宅治療の実現と薬価の引き下げ」という2つの目標を掲げて活動を展開しました。また、娘の治療の際、米国の医師や患者団体とも交流できたことから、「PHA国際会議」(米国肺高血圧症患者会主催)にも参加するようになりました。ここで新薬の情報を得て、厚生労働省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬の要望募集」に要望書を提出。2つの薬剤の国内開発が認められ、新薬の国内導入にも貢献できました。
2009年には、肺高血圧症を取り巻く医療環境や社会環境のさらなる改善を目標として、特定非営利活動法人に移行。また学会での疾患分類方法や疾患名の変化に伴い、団体名を「PAHの会」に変更しました。

治療が普及し会員も増えるにつれて運営面の課題が生じる

13回全国PH大会(2019年9月) 13回全国PH大会(2019年9月) 複数の治療薬が承認されて肺高血圧症の治療が大きく進歩するにつれ、当会の会員も増えました。会員は、北海道から沖縄までの患者・家族で構成されており、首都圏本部、北海道支部、関西支部、九州支部を活動拠点に、各地区の代表、副代表が中心となり、全国PH大会や勉強会、交流会などの開催、病気に関する情報発信などさまざまな活動を行ってきました。顧問医など全国各地の医療関係者や、製薬企業とも連携しています。肺高血圧症では唯一の全国組織の患者団体として、海外の同じ目的で活動している患者団体とも協力関係を築き、最新の医療情報の交換などにも努めています。
団体としての課題は、医療向上への取り組みが中心となり、ピアサポート的な活動に注力できなかったこと、進行性の病気のために患者当事者が活動を持続することが難しく、理事長である私に運営面での負担が集中し、後継者の育成が困難であったことです。そのような状況の中でコロナ禍に遭遇し、従来の対面式の活動が不可能になり、当会の使命は終わったのかと悩んだこともありました。しかし、他の団体等でオンラインでの活動が広まってきたことに刺激され、私たちも取り組みを始めたのです。

コロナ禍をきっかけにオンラインでの新しい活動を模索

https://www.pha-japan.ne.jp/ https://www.pha-japan.ne.jp/ 2020年8月にはオンラインでのセミナーを開催。オンラインだから参加できるという地方の会員も少なくないことがわかり、顧問医の協力も得やすく、また、対面での活動に比べて事務的な負担も軽減できるなど、多くの収穫がありました。そこで、オンラインを活用した新しい活動に変革しようと、「PAHの会におけるPostコロナの患者会運営モデルの確立」というテーマで、ファイザー株式会社の助成プログラム「ファイザープログラム」に応募して採択されました。現在、「全国PH大会」のオンライン開催の準備を進めているところで、支部でもオンラインの活動が始まっています。正しい医療情報を提供するために、プロボノ ※3の協力を得てホームページもリニューアルしました。ニュースレター(会報誌)もメール配信等に移行する予定です。ICT技術を積極的に活用して団体運営の負担を軽減する中で後継者を育成し、活動を持続していきたいと考えています。私たちは、患者一人ひとりの命を救うために、海外で行われている治療法はすべて日本でも受けられるように、かつ全国どこでも均一の治療が受けられるようにしたいとの強い思いで活動してきました。これからも、病気や私たちを取り巻く環境の変化に対応しながら、肺高血圧症の患者と家族が、この病気を理解し病気に負けないこと、そして患者と家族が安心して闘病できる医療や社会環境を実現することを目標に歩んでいきたいと思います。

※3 プロボノ:社会的・公共的な目的のために職業上のスキルや専門知識を活かすボランティア活動。

NPO法人 PAHの会
組織の概要
■設立年 2009年4月(前身の「PPHの会」は1999年設立)
■会員数 114名(2021年5月現在)
活動内容
■会員の勉強会、交流会、全国PH大会の開催
■肺高血圧症に関する情報発信(ホームページ、LINE、メール、ニュースレターなど)
■学会、行政、医療機関への働きかけ
■早期受診、治療についての啓発活動
■海外の患者会・学会との国際協働活動