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患者中心の医療を目指し、透明性やコンプライアンスも重視しながら
患者団体と企業の協働に取り組む

患者中心の医療を目指し、透明性やコンプライアンスも重視しながら患者団体と企業の協働に取り組む

日本製薬工業協会(以下、製薬協)は、新薬メーカーなど研究開発志向型の製薬企業による業界団体です。製薬企業に共通する課題の解決や医薬品に対する理解を深めるための活動に取り組み、会員企業の活動指針や規範となる基準などを制定しています。患者中心の医療が求められる中で、患者や患者団体と製薬企業のより良い関係づくりを目指し、患者団体との関係性も深まっているようです。そこで、製薬協の常務理事の田中徳雄さんと、製薬協の委員会のひとつ、患者団体連携推進委員会委員長の喜島智香子さんに、製薬協の活動や患者団体との協働についてお聞きしました。

日本製薬工業協会 常務理事
田中 徳雄 さん

患者団体連携推進委員会 委員長
喜島 智香子 さん

最近、医療や医薬品開発に関する話題の中で、製薬協(日本製薬工業協会)の名前を聞くことが増えてきました。
まず、製薬協の概要を教えてください

製薬協は、研究開発志向型の製薬企業72社(2018年2月1日現在)が加盟する任意団体です。「患者参加型医療の実現」を目指し、製薬産業に共通する問題の解決や医薬品に対する理解を深めるための活動、国際的な連携など多面的な事業を展開しています。特に産業政策の立案とその提言活動の強化、グローバルヘルスへの対応、広報体制の強化を通じて製薬産業の健全な発展に取り組んでいます。

また、米国研究製薬工業協会(PhRMA)や欧州製薬団体連合会(EFPIA)とともに、世界の医薬品市場における主要な製薬団体として活動を展開し、医薬品規制の国際的な調和を目指す医薬品規制調和国際会議(ICH)の創始常任委員としても活動中です。さらに、国際製薬団体連合会(IFPMA)の加盟協会として、地球規模で蔓延する疾患への対策や発展途上国などにおける感染症対策、医薬品アクセス問題と知的財産権など、世界の医療・医薬にかかわる諸問題に対応しています。

製薬協の中には患者団体との協働のあり方を検討するチームもあるそうですね

製薬協の組織にはさまざまな委員会があり、それぞれの役割を担っています。

その中で、患者団体連携推進委員会は、患者団体や患者支援団体と積極的に意見交換を行って相互理解を図り、患者視点に立った取り組みを検討し、患者団体とのより良い協働を図ることを目的とした委員会です。

そもそものスタートは1999年に発足した市民・患者グループ研究プロジェクトで、2000年に広報委員会の中のペーシェント・グループ部会として活動を開始しました。2010年に独立した委員会への準備として企画政策会議直轄の患者会連携チームとなり、2012年4月に患者団体連携推進委員会となりました。運営にあたっては患者団体アドバイザリーボードを設け、5名の患者団体・連合組織の代表者の方にメンバーになってもらい、製薬協の活動について助言を受け、患者団体との協働について、ともに検討しています。

患者団体アドバイザリーボードメンバー(敬称略、五十音順)
天野 慎介(一般社団法人 全国がん患者団体連合会 理事長)
福島 慎吾(認定NPO法人 難病のこども支援全国ネットワーク 専務理事)
眞島 喜幸(NPO 法人 パンキャンジャパン 理事長)
森 幸子(一般社団法人 日本難病・疾病団体協議会 代表理事)
山口 育子(認定NPO 法人 ささえあい医療人権センターCOML 理事長)

患者団体連携推進委員会は具体的にはどのような活動を行っているのですか

患者団体セミナーの様子医療において患者団体や連合組織が重要な役割を担うようになってきています。一方、製薬企業と患者団体との付き合いや協働が深くなるほど、医療用医薬品の広告規制などを定めた医薬品医療機器等法に抵触する恐れがあると考えられるような事例も起こってきました。
そこで、製薬企業として、医療機関と同じように患者団体への広告料や寄附金等の支払い状況についても透明性を担保し、より良い関係性を構築するために「企業活動と患者団体の関係の透明性ガイドライン」、馴れ合いや不適切な関係を排除するために「患者団体との協働に関するガイドライン」を策定しています。このガイドラインをもとに各社が自社でガイドラインを作成し、自主規制を行うという仕組みです。問題となる事例については、委員会として具体的な注意喚起も行っています。患者団体向けには、「患者団体セミナー」を原則として年2回開催し(東京・大阪)、会員企業と多くの患者団体の相互理解を深めています。患者団体の現状を把握し、会員企業が患者団体と活発でより透明性の高い協働を行うことを目指して双方に対しアンケートも実施しています。また「製薬協産業ビジョン2025」から、将来の製薬企業と患者団体の協働についての記述をピックアップし、アドバイザリーボードの意見も参考にしながら、具体的な取り組み方法等について検討しています。

患者団体との協働についてどのような展望がありますか

喜島:最近、政策提言や学会への参加など、活動目的を明らかにして、活発な活動を行う患者団体が増えてきている印象があります。
臨床試験や治験についての患者団体の意識も高まってきているので、医療や医薬品の知識をもち、患者の立場として意見が言えるような人材を育てる研修プログラムのようなものも必要になるかもしれません。これからも多くの患者団体の皆さんと理解を深め合いながら、より良い協働を実現し、製薬企業や製薬協が、「患者さん中心の医療」の実現を目指して取り組んできた「PatientInvolvement(医療への患者参画)」の流れをより確かなものとしていきたいと思っています。

田中:医療の中で、年々、患者団体の協働、参画 が重みを増していることを強く感じます。患者団体連携推進委員会だけでなく、医薬品評価委員会や、産業政策委員会でも、患者団体との協働が進んでいます。
今後「コンセンサス・フレームワーク※」の取り組みも進め、患者さん中心の医療の実現に向けてさらに努力していきたいと思います。
製薬協の取り組みについては、ホームページなどを通じて広く発信しています。薬に関する知識や子どもさん向けの解説など、患者や患者団体の皆さんだけでなく、一般の方にも有益な情報もありますので、ぜひ活用していただきたいと思っています。

※患者団体、医療関係者、製薬業界間の倫理的連携のためのコンセンサス・フレームワーク
質の高い患者ケアを支援するため、患者団体、医療専門職、製薬業界間における倫理的連携を目的として確立された。
「国際患者団体連合(IAPO)」、「国際看護師協会(ICN)」、「国際製薬団体連合会(IFPMA)」、「国際薬剤師・薬学連合(FIP)」、「世界医師会(WMA)」の5つの支持団体で構成されている。