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ポストポリオをもっと知ってもらいたい…
私の原動力は、仲間との活動と、家族の支え

リレーエッセイ/第5回
ポリオの会 世話役 稲村 敦子

ポリオの会 世話役 稲村 敦子

全国各地で結成されたポリオ罹患者による8つの団体が集まり、ゆるやかな連携をしていこうと始まったのが「全国ポリオ会連絡会」です。近年、ポリオ患者会が次々と生まれたのは、ポリオ罹患後30〜40年たってからさまざまな症状が起こってくる「ポストポリオ症候群(ポリオ後症候群)」を発症する人が増え、ポリオによる障がい者数が増加したという背景があります。手や足だけではなく、呼吸器の障がいや嚥下障がい、排せつ障がいも起こります。視野狭窄や顔面マヒを起こす人も多く、症状は全身に及びます。しかし、ポリオは「忘れ去られようとしていた病気」で、もはやポリオそのものを知っている医師も少なく、ましてやポストポリオを診察することのできる医療機関は本当に少ないのです。

そこで、私たちは自分たちで勉強していかなくてはならないと考え、論文集を刊行したり、アメリカやイギリスから資料を取り寄せて翻訳出版を行うなどして、ポストポリオについての理解を広めるために各方面へ働きかけています。

このポリオの会の活動こそが、やはり私の原動力になっていると思います。それは、仲間がいるということがとてもうれしいことと、また私たちの活動が社会的に認められてきて、ポストポリオが注目されてきたと思えるからです。

そもそもポリオ経験者には「がんばりやさん」が多いと言われます。ポリオは、罹患してから一定の回復期間があり、人によってはかなりのところまで回復します。子どもの頃にポリオを発症して障がいを克服して、たとえば医師や教師などとして、健常者と同じように社会の第一線でがんばってきた…。そんな人が、仕事でも家庭でもまさに働き盛りのときに発症するのがポストポリオです。障がいを受容し、乗り越えてきたところで、再び、新たな障がいに直面するわけです。それはまた大きな困難ですが、私自身、今までいろんなことにチャレンジして、充実した人生を送ってきたと思っているので、会の活動にも積極的に取り組んでいます。

会報や論文集は医療機関にも寄贈していますが、最近は、医師からお礼を言われたり、期待されたりするようにもなってきました。医師国家試験にもポストポリオが取り上げられましたし、私たちの会は医学教育に協力して模擬患者をつとめるなどの医療への協力活動をしています。呼吸器疾患患者連合会やリハビリ医学会、老人医学会にも参加し、活動の場も広がってきました。少しずつではありますが、私たちの活動が認められてきて、いろいろなことが動き始めたかな…と感じています。

そして、家族が私を支えてくれています。夫は会の活動にとても理解があり、私が家事をせずに外出してもいやがりません。帰りが遅くなる日も「行っておいで、夕飯は作っておくよ」と言ってくれます。こうした夫の理解と協力があってこその活動だと感謝しています。そして申し訳ないと思いつつ、つい洗濯の仕方に文句を言ったりもするのですけれど(笑)。今の私の元気は、家族とポリオの会に支えられているのだと思います。