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「介護体験集 男の介護」を発行

HOW TO/第14回
「介護体験集 男の介護」を発行

今まで語られなかった男性介護者の思いを集めて
「全国パーキンソン病友の会」では、今まであまりクローズアップされることがなかった“男性による介護”に焦点をあて、会報特別号「介護体験集 男の介護」の発行を企画しています。今回は、発行に携わっている相談役の河野都さんにお話をお聞きしました。

パーキンソン病は、介護者の負担がきわめて大きい疾患

「介護体験集 男の介護」について
編集人:全国パーキンソン病友の会 医療・介護部
イラスト:北島健次郎・悦子
執筆者:全国パーキンソン病友の会 会員
脳で作られるドーパミンが減少して起こるパーキンソン病は、病因が特定されておらず、治療法も確立されていない難病(特定疾患)です。主に50才以降に多発し、日本での患者数は約12万人、男女比はほぼ同等と推定されています。主な症状は、ふるえ、筋肉の固縮、動作の緩慢、姿勢保持障害などがあり、発症した際の症状、程度は人によって大きく異なります。高齢で発症する上に、症状もさまざま、しかも進行の速度も予測できないことからその介護にあたる人は、患者さんと同等あるいはそれ以上の大きな負担を強いられます。また、高齢で発症するため、高齢者が高齢者を介護する老老介護問題にも直結しています。

女性中心だった介護に、男性の視点を加える

全国パーキンソン病友の会では2006年、女性の介護者の体験集「二人三脚の声・声」を制作・配布し、介護者から好評を博しました。そして今回、その続編として男性の介護者の体験集「男の介護」を発行することとなったのです。「妻が病気になった時の思い」や「進行する病気と介護の実態」「友の会や仲間への感謝」などがつづられ、難病であるパーキンソン病の療養介護の現状や課題、高齢化する家族の状況などが男性の視点から語られています。

刊行にあたって河野さんは、「私自身、パーキンソン病の夫の介護で大変な思いをしました。しかし男性の介護には、女性の介護とは異なる苦労もあるのではないかと思います。また、原稿からは、妻をきれいにしてやりたいと身だしなみに細かく気を配る姿や、最新の機器を活用する工夫など、男性らしい介護の特徴も見られ、女性の介護者の参考になるのではないかと感じました。実際は、男女問わず多くの介護者の参考にしていただきたいと思います。」と語られました。

「男の介護」を企画した背景にある思い

「介護体験集 男の介護」の制作は当初、会報誌編集長の北島健次郎さんと副会長の高橋忠郎さんのお2人が中心となって進めていました。しかし、パーキンソン病だった奥さんの介護に直接携わっていた高橋さんが、2008年6月に急逝されたのです。高橋さんは、ご自身の体験からも、「男の介護」の実態を世の中に広く知ってもらいたいとの思いが特に強かったそうです。そこで、彼を偲ぶ意味でも絶対に発行を実現させようと、現在は北島さんが主体となって、今秋の発行に向けて作業を進めています。

問題共有、問題提起のツールとして活用してほしい

パーキンソン病は高齢発症が多いため、介護する側も60代から80代の高齢者が中心です。この年代の男性は、「男子厨房に入るべからず」という家父長制度の風潮が濃い時代に育ち、その後、高度成長の中で働きに働き、家事や近所づきあいの経験もほとんどないといった方々です。そのような男性が妻の介護に直面した場合、炊事や食事・入浴といった介護に大きなストレスを感じることもあるはずです。

河野さんは「男性は、自分の苦労を話したがらないところもあるので、どういう点が大変なのか、何が問題なのかなど、わかりにくいところもあります。男性による介護の問題については、まだ入り口にさしかかったところであり、この書籍が、問題共有と社会への問題提起の第1弾になるのではないかと期待しています。

まだ個人的な考えですが、男性介護者の実態調査を実施した、立命館大学男性介護研究会代表者の方々にも声をかけて、連携してこの問題に取り組んでいくことも視野に入れています」と語られました。

取材を終えて

介護の問題は、パーキンソン病だけでなく他の疾患や障害に共通する問題であり、高齢化社会において、男女を問わず誰もが直面する問題でもあります。「男の介護」発行により世の中に新しい介護の視点が生まれるのではないかと、全国パーキンソン病友の会の活動に期待したいと思います。

全国パーキンソン病友の会
■会員数 6,300名
■結 成 1976年