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「難病(特定疾患)指定」「県の単独指定」を目指した活動と、そのポイント

HOW TO/第15回
「難病(特定疾患)指定」「県の単独指定」を目指した活動と、そのポイント

下垂体患者の会 代表理事 はむろ おとや
中枢性尿崩症の会 副代表・関東支部長 大木 里美

2008年6月の特定疾患対策懇談会において、クッシング病・先端巨大症・下垂体機能低下症が、他の4疾患(原発性側索硬化症、有棘赤血球舞踊病、HAM、先天性魚鱗癬様紅皮症)とともに、2009年度の難治性疾患克服研究事業に追加指定されました。今回は追加指定されるまでの活動と、下垂体機能障害の県単独疾患指定を目指す活動をご紹介します。

患者同士の連携からスタート

日本において、難病に指定される条件は、希少性(5万人未満)、原因不明、効果的な治療法が未確立、生活面での長期にわたる支障の4つです。現在、123疾患(2009年度から130疾患)が難治性疾患克服研究事業とされ、研究班を設置し、原因の究明、治療法の確立に向けた研究を行っています。また、そのうちの45疾患は、医療費の助成により患者の自己負担を減らしている特定疾患治療研究事業です。 下垂体機能障害の一部(クッシング病・先端巨大症・下垂体機能低下症)は10年前に難病指定を解除されたのですが、その後も医師たちが独自に研究を続けてきたなど、医療者側の協力も大きな力となって今回の再指定に至ったと、はむろさんはとらえています。 「2006年に『中枢性尿崩症の会』とともに日本の下垂体系の患者団体や個人と『チャレンジ難病指定下垂体機能障害を特定疾患に 日本下垂体機能障害患者団体連合会』(日下連)を結成し、難病指定を目指した活動を始めましたが、当時の国は、限られた予算の中ですべてを難病には指定できないので、より厳しい病気から1、2疾患を選び、残りは後回しという考え方でした。しかし、条件を満たしたものはすべて難病と認め、国家事業として研究するべきではないかと患者団体が連携して訴えたのです。2007年、パーキンソン病と潰瘍性大腸炎の軽症者を医療費の公費負担対象から外すという厚生労働省の方針に対し行った『患者・家族の声を!全国大行動*』、2008年『難病対策の充実と新規疾患追加を求める緊急集会』などを経て、ようやく国の難病に対する考え方が変わり、今回の7疾患もの指定につながったのだと思っています。」

地域でも支援のネットワークを広げることが重要

埼玉県在住の大木さんは、特定疾患指定と並行して、下垂体機能障害の埼玉県・県単独疾患指定を目指す活動も、日下連で協力しながら行っており、2007年には請願書が、総員賛成(全部の政党・全議員)にて採択されました。 「実績のある患者団体から、地元の県会議員の協力が必要とアドバイスされたので、私たちも地元の県会議員に想いを理解してもらい、多くの支援者の協力のもと紆余曲折の末、請願書の採択に結びつきました。難病対策の大きな変化もあり、人脈とタイミングがよかったと感じています。今後も県の単独指定を目指し、より一層頑張ります」はむろさんは「患者や患者団体が連携するためには、お互いに理解し合い、いたわり合うことが重要です。最近、30〜40代の新しいメンバーを中心として、インターネットやメールを活用する団体が増え、団体同士の交流も盛んになってきました。今回の成功体験を共有できたので、ぜひ次のステップにつなげたいと考えています。また、患者と研究者がさらに連携していけば、新しい医療の形が生まれるのではないかとも期待しています」と語りました。新たな運動に取り組む患者団体も出てきており、はむろさんも大木さんも積極的に協力しています。

*『患者・家族の声を! 全国大行動』とは

2007年、パーキンソン病と潰瘍性大腸炎の軽症者を、医療費の公費負担対象から外すという厚生労働省の方針をきっかけに、日本難病・疾病団体協議会(JPA‥Japan Patient Association)が中心に行った、医療体制の改善を目的とした要請行動のこと。79団体の要望事項を集約した冊子の配布、および混合診療に対しての慎重審議を求める決議文の配布、7団体の代表による施策拡充の訴えなどを行った。その結果、2疾患の難病指定の継続と、難病対策予算の36億円の増額となった。