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大規模な難病患者総合相談会を毎年開催
信頼関係に育まれた「富士市難病連」と、行政や医療関係者との連携

大規模な難病患者総合相談会を毎年開催
信頼関係に育まれた「富士市難病連」と、行政や医療関係者との連携
第2回

富士市難病団体連絡協議会(以下、市難連)は、富士市在住の難病患者が所属する各難病団体により、1985年(昭和60年)に結成された、静岡県下初の地域難病連です。市難連では、毎年、多分野の専門医や専門家を招き、医療・福祉、日常生活の問題まで幅広い相談に応える「富士市難病患者総合相談会」を開催し、全国的にも注目されています。医療関係者や行政とのネットワークを構築し、地域難病連として画期的な活動を実現している富士市難病連をご紹介します。

ヘルスケア関連団体の視点

コツコツと人脈・信頼関係を構築、あきらめずに働きかけることが大切
富士市難病団体連絡協議会 事務局長 秋山 悦子 さん
理 事 永井 芳子 さん
理 事 根岸 洋二 さん
事務局次長 藤澤 貞代 さん
副会長榎本 歌子 さん

市難連は、全国的にも例のない規模で「富士市難病患者総合相談会」(以下、相談会)を開催されていますね
相談会を始めた頃は小規模でしたが、回を重ねるごとに協力してくださる専門医が増え、行政や福祉関係者、ボランティア看護学生に至るまで、協力や支援の輪が広がり、現在のような充実した形になりました。

特に2011年は、県内東部の看護学生が多数参加し、また、てんかん患者の交通事故の問題を取り上げたことから、警察や教育関係者の参加もあり、例年にも増して有意義な相談会となりました。

このような行政や医療関係者との連携が実現しているのは、何か理由があるのでしょうか
相談会については、長年コツコツと続けているうちに、行政や医療関係者の人脈が広がり、信頼関係が蓄積されてきたと感じています。素晴らしい方々に恵まれたことも大きいと思います。専門医の先生方は相談会の必要性を認識されていて非常に協力的ですし、市職員のみなさんとも何でも話し合うことができ、親切に対応してくださるので、とても感謝しています。

ほかには、行政や関係者も参加して事前に準備会を開き、反省会も当日と1週間後に2回行い、課題や思いを共有していることも、相談会が年々充実してきた理由だと考えています。

行政や医療関係者と連携していくために、心がけていることはありますか
きめ細かに連絡をとり合うなどコミュニケーションを大切にし、折に触れて感謝の気持ちを伝えるように、心がけています。

毎年行っている市長懇談会でも、私たちの考えや要望をはっきり伝えますし、市長も気さくに話してくださいます。キャッチボールのように意見交換ができることは、とてもありがたいですね。

これまでの具体的な事例を挙げますと、富士市には難病の専門医が少ないので、富士中央病院への神経内科設置を17年間訴え続けて、やっと実現しました。現在は膠原病科の開設を要望していますが、あきらめず粘り強く働きかけることが大切だと思っています。

今まで育んできたネットワークを活かして、今後、取り組みたい課題などはありますか
東海地震に備えた難病患者の防災マニュアル作成にむけて、会員のアンケート調査を行い、これからまとめていくところです。また、患者一人ひとりの声を吸い上げて、市長や行政に伝えることも私たちの役割ですから、気軽に話せる交流会の活動を増やそうと考えています。

所属する患者団体や県難連の活動と並行して、市難連の活動を続けることは大変ですが、市難連を通じて視野が広がり、人との出会いが増え、地域でのつながりが強まりました。行政や医療関係者と密に結びつくことの重要さや、さまざまな交流の大切さなどを、市民にはもちろん、これからはもっと広く大勢の人たちに伝えていきたいと考えています。

行政の視点

「当事者のニーズに応える行政サービス」の実現に必要な“提携”
富士市保健部保健医療課 課 長 大村 雅人 さん
鈴木 克敏 さん

まず、市難連との連携について具体的に教えてください
保健医療課を窓口に市難連運営のお手伝いや財政支援を行っています。

相談会には保健医療課のほか、障害福祉課、介護保険課などの担当職員が出席し、各種行政サービスや制度の紹介を行っています。私たちにとっても当事者のみなさんの生の声を聞くことのできる良い機会となっています。

講演会や相談会などの開催情報は、市の広報誌へ掲載し、報道機関に対しても必要に応じて各種事業の報道提供を行います。電話相談や面談相談の中で医療や行政サービスについての相談があれば、適切な関係機関を紹介するといった対応をしてもらっています。

行政として、市難連の存在をどのようにとらえていますか
市難連の長年にわたる活動は難病患者やその家族にとって、大きな希望や心の支えになっており、功績は非常に顕著であるとして、2010年(平成22年)に富士市地域社会貢献者褒賞制度による表彰を行いました。これからも市難連と積極的に連携して、行政サービスの向上に取り組んでいきたいと考えています。

日常的に接している私たちとしては、市難連のみなさんは温和で、何でもよく話してくださるし、考え方が明確なので、協力しやすいと感じています。同様に、市長や医療関係者にもみなさんの人柄や熱い思いが伝わりやすく、その結果、多くの人や組織を動かす力となっているのではないでしょうか。

行政が患者団体と連携することの意義とは、どのようなことでしょうか
富士市では難病患者向けに『特定疾患ガイド』を作成し、医療費助成等の各種制度の周知に努めていますが、市難連から「もっと情報をコンパクトにまとめた使い勝手のよい冊子を作成してほしい」との要望を受け、『難病患者・特定疾患患者のための支援制度ハンドブック』を作成しました。ハンドブックは相談会で配布するなど活用されており、たいへん好評です。防災対策に関しても、難病や慢性疾患の患者さんの防災マニュアルを作るために、市難連と協働でアンケート調査を実施したところです。

このように、当事者のニーズに応える行政サービスを形にするために、市難連との連携は有意義だと考えています。

市難連と連携していくうえで心がけていることや、課題などはありますか
市職員には異動がありますから、担当者が交替した時はできるだけ市難連とかかわる機会をつくり、早く人間的なつながりができるようにと心がけています。引き継ぎも事務的な面だけでなく、相談会のある「6月の第2日曜にデートはダメだよ」というように、みなさんとオープンな雰囲気の引き継ぎを心がけています。

今のような活動を継続してもらえれば、私たちも連携を続けていくことができると思いますので、市難連には早く後継者を育成してほしいです。東海地震に備えての防災対策は、富士市としても重要な施策ですから、“当事者の視点”で協力してもらい、ぜひ、ともに取り組んでいきたいですね。

富士市難病団体連絡協議会の活動 富士市難病患者総合相談会概要
■難病患者医療・生活総合相談会 ■主催 富士市難病団体連絡協議会
■単独疾病相談会(富士市共催で富士中央病院にて開催) ■後援 富士保健所、富士市・富士市社会福祉協議会
■交流会(年3回) ■協賛 富士市医師会、富士市歯科医師会
■富士市長懇談会 ■各協力医師の所属病院<br>富士市立中央病院、静岡市立静岡病院、静岡県立総合病院、静岡県立こども病院、順天堂静岡病院、松田病院(静岡県浜松市)、静岡てんかん神経医療センター、東静脳神経センター
■会報誌『市難連ふじ』(年4回発行) ■その他の協力団体<br>静岡県MSW協会、静岡県栄養士協会
■電話・面談相談(毎月第1・3水曜日実施)
取材を終えて〜まねきねこの視点

行政や医療関係者、支援者に対して、市難連のみなさんが細やかにコミュニケーションをとり、努力を積み重ねて信頼関係を構築してきたことが、充実した今日につながっているようです。会報誌の発行も、市難連への理解や信頼性を高めるために、大いに役立っていると感じました。 取材の際には、市職員の方を交えて楽しい雰囲気の中でお話をお聞きすることができ、行政と患者団体の連携も、基本は人と人とのつながりであるということを改めて実感しました。そして「感謝する気持ち」「コツコツと続けること」「前向きに」という言葉が、つながっていくためのキーワードではないかと思いました。