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PADM(Patients Association for Distal Myopathies)
遠位型ミオパチー患者会

PADM(Patients Association for Distal Myopathies)
遠位型ミオパチー患者会

遠位型ミオパチー患者会は、超希少疾病と言われる非常に稀な病気の患者団体です。研究推進や新薬開発を求めて、研究機関や大学、製薬企業、立法・行政関係者を招いたシンポジウムを開催するなど積極的な活動を行い、現在、治験が進行しています。患者団体が中心となって政・官・学・民をつなぎ、治療薬の開発を推進させてきた興味深い取り組みについてご紹介します。

患者団体の視点

希少疾病の創薬のために、患者団体にできることを模索
遠位型ミオパチー 患者会 代表代行 織田 友理子 さん

患者団体としての活動を始めてまもなく、縁取り空胞型の遠位型ミオパチーの治療に有効な物質が発見されたのですが、私たちのような超希少疾病の創薬のための資金や制度、仕組みはありませんでした。このため患者団体としては創薬の必要性を訴えることしかできず、しかも誰にどのように働きかければよいのかもわからないまま、模索しながら活動してきました。幸い、多くの方の協力や支援を得て、やっと治験の実現までこぎつけたところです。
最も大変だったのは協力企業を見つけることで、多くの製薬企業に断られました。現在の協力企業にも当初は断られたのですが、シンポジウムに招いて交流するうちに経済産業省のNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の助成金が得られることになり、第Ⅰ相試験が実現しました。話を聞きたい方や味方になってほしい方に声をかけ、PADMシンポジウムに参加してもらったことは、私たちの団体や活動の理解を進める上で役立ったと思います。
ウルトラ・オーファンドラッグ(超希少疾病の治療薬)開発促進などへの公的な取り組みも始まり、希少疾病全体に対する政治家や行政関係者などの意識も変わり、理解が深まってきたと感じています。しかし、専門家や患者団体にかかわる人の中にも希少疾病の創薬に積極的でない人がいることも確かですし、一般的には、まだオーファンドラッグ(希少疾病の治療薬)という言葉すら認知されていません。だからこそ、私たちはもっと活動を続けなければならないし、自分たちの団体や病気だけではなく、希少疾病全体の創薬の道づくりに取り組まなければならないと考えています。患者団体にできることは何かを考えながら、今後は、具体的にどのような制度や仕組みを作ったらよいのか、さまざまな立場の人の知恵や意見を集約していきたいと思います。
昨年の厚労省への要望書提出の際は、180万筆の署名が集まりました。
これからも各方面の支援と協力をいただきながら、力を合わせて頑張っていきたいと思います。

遠位型ミオパチー患者会について
ミオパチーとは、筋肉そのものに原因があって筋力が低下する筋疾患の総称で、遠位型ミオパチーとは手足の先など体幹部より遠い部分から徐々に筋力が低下していく進行性の難病です。縁取り空胞型、三好型、眼咽頭遠位型などの型があり、おおむね20歳代以降に発症します。徐々に進行して歩行困難となり、多くは車椅子が必要となって、日常生活全般に介助を要します。いずれの型も治療法は現在なく、患者数は全国に数十名〜数百名と推測される非常に稀な病気です。
同会は、遠位型ミオパチーの難病指定および特定疾患の認定や、希少疾病の新薬開発を促進・支援する新たな制度を確立して治療薬開発を早期に実現することを目的として活動を続けています。

研究者・企業・行政それぞれの視点

2012年4月8日に開催された第4回シンポジウムでの発表から
研究者・企業・行政の、創薬への取り組みや考え方をまとめました

大学発・日本発の、希少疾病の創薬に結びつけたい
東北大学医学部神経内科 教授 青木 正志 さん

希少疾病の治療薬の研究開発は、患者数が少ないために、採算面から製薬企業は取り組みにくいので、大学の臨床試験推進センターがリードして、大学発の創薬を目指すべき。医師主導治験や国際共同治験には困難もあるが、その必要性も明らかである。遠位型ミオパチーにかかわる研究の成果は、大学で発見された貴重なシーズ(発展が期待できる新技術)でもあるので、創薬に結びつけて日本におけるモデルケースとしたい。東北大学としても、ぜひ創薬に成功し、東日本大震災からの復興の旗印として掲げたい。

患者さんの熱意と、研究成果、国の助成が揃った好例
製薬企業 代表取締役 塩村 仁 さん

治療薬開発の経緯として、遠位型ミオパチー患者会の熱意と、西野一三氏の研究成果、公的助成金という条件や環境が揃い、ここまで進めて来られたと認識。今後は、2015年の医薬品承認申請を目指して、国際的な開発の推進や、次の公的助成金の獲得などが課題。難病治療薬の開発の実現には、関係者の協力と、国民の理解が重要だと考える。

日本発のオーファンドラッグ開発の体制整備に尽力したい
厚生労働省医政局研究開発振興課 田宮 憲一 さん

厚労省としてもオーファンドラッグ開発、ドラッグラグ解消に向けて尽力している。患者数が極めて少ないいわゆるウルトラ・オーファンドラッグについては、エビデンスの集積が困難な実情に応じた柔軟な対応や研究開発助成の重点化などで開発を推進していきたい。また、「臨床研究・治験活性化5か年計画2012」に基づき、日本発の開発シーズを迅速な実用化につなげるための取り組みや、国際水準の臨床研究や医師主導治験を積極的に実施する「臨床研究中核病院」などの整備に努めたい。

基礎研究の成果を、医療に結びつけるための支援体制を推進
文部科学省研究振興局ライフサイエンス課 彦惣 俊吾 さん

医療分野での実用が見込まれる有望な基礎研究に取り組む研究機関をサポートする「橋渡し研究支援推進プログラム」や、「研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)」やiPS細胞を活用した難病研究を推進したい。また、東北大学など7大学を拠点として臨床研究・臨床試験の基盤を整備し、シーズ育成、ネットワークづくり、ノウハウやリソースの共有を進め、オールジャパン体制での新薬開発プログラムを進めたい。

創薬に向けた取り組みの経緯
2008年 4月 PADM患者会発足
2009年 4月 厚労省「遠位型ミオパチーの実態調査研究班」の発足
2009年 5月 DMRV(縁取り空胞型遠位型ミオパチー)シアル酸補充療法の可能性を示す
研究論文の発表(著者:国立精神・神経センター西野研究グループ)
2009年 6月 第1回PADMシンポジウム「治療への道」
2009年 8月 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)へ助成を申請し、採択
2010年 1月 第2回PADMシンポジウム「難治性疾患、克服に向けて」
2010年11月 DMRV治験(第Ⅰ相試験)を東北大学にて開始
2011年 3月 第3回PADMシンポジウム「長期臨床試験実現のために」開催
2011年 5月 科学技術振興機構(JST)A-STEP申請
2012年 4月 第4回PADMシンポジウム「希少疾病における創薬のモデルケースとなるために」開催。基調講演は国立精神・神経医療研究センター神経研究所疾病研究第一部 部長 西野一三さんによる「縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチーの治療効果最大化のための研究」

取材を終えて〜まねきねこの視点

患者団体のリードで「政・官・学・民」の関係者が同じテーブルについて意見を交わし、お互いに理解を深め、問題意識を共有するシンポジウムの開催が、創薬の取り組みに大きな役割を果たしていると感じました。また遠位型ミオパチー患者会の皆さんの、創薬への切実な思いや、モデルケースとなって希少疾病の創薬への道を切り開いていきたいという真摯な姿勢が多くの関係者を動かし、治験の実現につながったことが伺えました。厚労省が主催する希少疾病に関する検討会の前などタイミングを考えてシンポジウムを開催する点や、大学での研究を促進するために文部科学省にも働きかけているところなども注目されます。 後に続く多くの患者団体のためにも、早期に創薬が実現するように、まねきねこも今後の展開を見守りたいと思います。