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“TOGETHER” 〜ちからを合わせてご一緒に

最終回 “TOGETHER” 〜ちからを合わせてご一緒に

特定非営利活動法人ひょうごセルフヘルプ支援センター
代表  中田智恵海(佛教大学 教員)

いよいよ、最終回。皆さんからのご意見とこれまでに書き残したいくつかのことに触れておきたいと思います

まず、ご意見から

「世話人が苦労してSHG(セルフヘルプグループ)のために頑張ることはグループにとって強みとなるが、世話人自身は大変だ」「援助を求めてくる人に世話人がいつでも対応できる『接近容易性』は大切だが、世話人は時と場所を選ばず追いかけられて疲労感がつのる」また、「世話人はメンバーのモデルとなって自尊心を持てる、というが、モデルになれば自分自身の弱みを吐露する機会がなく、世話人は楽にはなれない」

以上のような見方があるかと思えば他方では、「自分たちは病気を抱えて明日の命がどうなるかわからない。だからこそ、生きている間に為すべきことを為すのだ、という命がけの活動をしているのに、世話人は疲れる前に役割交代を、などという浅薄な発想は慎むべきだ」という見方もある。

なるほど、現実は難しいもの。いずれにせよ、ひと休みが大切です。世話人同士の癒しや楽しみの機会を設けることも活動を継続していくためには必要です。例えばそれが年に1度のヘルスケア関連団体ネットワーキングの会主催「ワークショップ」の役割の一つでもあるのでしょう。夜遅くまでの語らいや懇親会のダンスショーは元気をもらう機会となっています。

次いで書き残したことを少しだけ

1つ 知識について
しろうとのグループには、問題を直接体験して蓄積した専門知識があります。そして一方で専門職にも仕事を通じて積み重ねた体験による知識があります。稀少難病などを正しく診断するにはやはり、その領域で体験を積まねば困難です。ですから、専門職にも独自の専門的体験知識がある点を認識する必要があります。

2つ つながりについて
解決困難な生きづらさを抱えた時、人とのつながりが多いと、そこから困難と積極的に向き合っていくちからを得られますが、つながりの少ない人は問題を抱えた時、いっそう引きこもってしまい、孤立してしまう傾向があります。SHGはつながりをなくさないように予防し、サポートの輪の中にいられることを可能にします。

最後の最後に、私の個人的な思いを一言

私は当事者でもあり、専門職でもあります。それは私の強みでもあり、弱みでもあり、難しい立場です。いわば、こうもりですから、どちらからも仲間に入れてもらえない、という経験もしてきました。それでもその一方で多くの方々にセルフヘルプの実践と研究を支えられてきたことは、私の幸せでした。その中でも、当事者で研究者という点で共通している先生お二人が、「私の戦友です」と私を他者に紹介してくださいましたことは大変印象に残っています。

「戦友?!」と自分自身でも驚いたものですが、1980年代当時、セルフヘルプに対して専門職者や市民からの社会的な承認を得ることは茨の道でしたし、確かに戦いでした。この先生はお二人とも道半ばで早くにお亡くなりになってしまいましたが、セルフヘルプがようやく花開こうとしている今、私たちはこの芽を摘んではならないでしょう。

ヘルスケア関連団体ネットワークキングの会のモットー「TOGETHER」を基に、皆さん、ちからを合わせてご一緒に。

筆者紹介

口唇口蓋形成不全の子どもの親の会の元代表、世話人を経て2000年より、佛教大学 教員、特定非営利活動法人 ひょうごセルフヘルプ支援センター代表
情報誌を発行したり、毎年セルフヘルプセミナーを開催して、さまざまなセルフヘルプグループを市民、行政職者、専門職者などに広報し、生活課題を抱えて孤立する人をセルフヘルプグループにつないだり、リーダー支援のための研修会を開催している。