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インターネットから、顔の見える交流会へ
症状の違いを超えてつながる「CMT友の会」

インターネットから、顔の見える交流会へ 症状の違いを超えてつながる「CMT友の会」

CMT友の会
2000年〜2005年にかけて、CMT患者たちの立ち上げたホームページをきっかけに、掲示板を通しての交流がスタート。やがて、実際に会って話し合う交流会へと発展。2008年にはCMT友の会が設立され、世代や症状を超えてのピアサポート活動を行っています。代表の石井雅子さん、副代表の山田隆司さんにお話を伺いました。

代 表 石井 雅子 さん/副代表 山田 隆司 さん

インターネットから始まった交流の経緯を教えてください

CMTは遺伝子研究の分野では有名ですが、臨床分野では認知度の低い疾患です。遺伝子検査での早期診断が可能になったのがこの20年ほどで、かつては子どもだと小児麻痺や筋ジストロフィー、大人では単なる捻挫と診断される場合もあったようです。昔と比べて現在でもなお、医療に対する不信感や、情報が少ないという不安や孤独感を募らせている患者が多いのが現状です。

そんな中、2000年〜2005年にかけてCMT当事者3人が各地でホームページを立ち上げました。ちょうどインターネットが一気に普及し始めた時期です。声を発信するツールを得て、交流のなかった当事者どうしが知り合い、情報を交換できる「居場所」を見つけたという大きな喜びを感じました。ところが、掲示板への書き込みが増えるにつれ、意見の対立や管理人側への不満などから掲示板閉鎖の事態を招くなど、だんだん個人では対応しきれなくなってきました。 そのような動きと同時に、インターネット上の交流にとどまらず、実際に会いたいという気持ちがみなの中に高まってきました。「よし、会おう!」ということで2005年、岐阜県で初めての交流会を開催しました。その時に現代表が、車椅子で介助者もなく、ひとりで神戸から長距離バスで参加したのです。みなが「すごい!」と驚きました。それまで持っていたCMTのイメージを良い意味で破壊してくれた。その行動力や勇気はまさにピアサポートでした。これは今や当会の伝説となっています(笑)。

実際に会うことによってどんな変化がありましたか

インターネットは当事者どうしがつながる良いきっかけになりました。しかし文字だけではやはり伝わりにくい部分もあって、フェイス・トゥー・フェイスだと情報の確認がとれたり、いろんな意見を聞いたりすることができます。「やっぱり会った方が良いよね」という方向性が見えてきました。以来、各地で交流会を重ねて掲示板も一本化し、3年後の2008年6月、CMT友の会を設立しました。

そのような経緯から今も交流会に重点を置き、定期的に横浜(年2回)、神戸(年1回)で開催するだけでなく、他の地域でも行っています。会員でなくても参加申し込みができます。CMTは軽度から重度まで症状に個人差がありますから、自分より重度の人に会うのが不安という人もいます。参加には非常に勇気がいることですが、ひとまず雰囲気だけでも見に来ていただければと思っています。

参加者は毎回20〜30名、多い時で50名になることもあり医師や専門家の方々にも参加いただいています。役員が司会進行役をつとめ、グループワークを行っています。発症時期や症状、現在どんな生活をしているかなど、参加者のニーズを自己紹介の中から拾い上げ、その日のテーマを決めていきます。テーマは大きく、医療、福祉、生活、生き方などに分かれます。たとえば診断がついてすぐの頃は医療情報がほしいという要望が強く、少し経つと補装具や福祉制度の話題に興味が移っていきますし、先日の岡山県での交流会では主婦の方が多く、家事をどうこなしているかがテーマになりました。

最初の頃はもっぱら役員がピアサポーター側にまわっていましたが、その内にリピーターが生まれ、自分の問題が解決し始めることで新規参加者のサポートにまわるようになってきました。役割意識を持ってくれれば参加意欲もわいてくると思います。

また、さまざまな経験を若い世代に伝えるのは年長者にしかできないこと。患者の年齢が幅広いという疾患特性が逆にピアサポートの厚みにもつながっています。

海外のCMT患者団体の視察も行っていますね

2011年、イギリスでの「CMT-UK」、アメリカの「CMTA」に参加する機会に恵まれました。CMT-UKは25年を越える歴史を持ち、1500人の会員がいる大規模な患者団体です。その運営手法や、子どもから高齢者までさまざまなメンバーが集まってのピアサポート活動の実際を視察することができました。20歳以下の集い「CMT-Kids」では、子どもたち自身に何をやりたいかを決めさせ、その主体性を大人たちがサポートしていくという手法が取られていました。私たちもイベントを企画していきたいのでとても参考になりました。

当会には親子でCMTという会員もいるので、親と子、親どうし、当事者の子どもどうし、病気ではない兄弟姉妹となど、いろいろなピアサポートができるのではないかというアイデアも浮かび、患者団体を運営していく次世代を育てる意味でも、子供を対象としたイベントはとても有意義な活動だと思っています。CMT-UKの創設者から、「日本はまだ会が誕生して4歳だろ。子どもなんだからゆっくり歩いていけばいいんだよ」という言葉をもらったのがとても印象的でした。

CMT-UK主催の「International Convention 2011」
講演内容
●イギリスにおける現況
●アメリカにおけるCMT臨床研究
●シャルコーとマリーとトゥースはどんな人だったのか?

ワークショップ内容
●医学的なもの〜運動と理学療法、遺伝について、手術について、痛みについて、リハビリについて、義肢装具について、小児神経科医より
●自己啓発やメンタルヘルス〜若者たちの週末(CMT-Kids)、当事者どうしの語らい、心理学、太極拳

これからの抱負を聞かせてください

CMT友の会はこれまで寄付金だけで運営してきましたが、ようやく会費をいただこうと役員会で決まり、会報も準備号を出したところです。会費を会員に還元していける活動が果たしてできるのか。また、交流会に来られない人をどうサポートしていくかなど課題はたくさんあります。これからも地方での交流会を増やしていきたいですね。インターネットから始まった会なので、全国各地に会員がいます。そこで元気のある人を見つけ、困ったことがあればその人を中心に集まれるような、地域ごとの主体性を強化していきたいと思っています。

とにかく患者の症状や年齢も幅が広いので、同じ病気でもお互いの違いを認められるようになりたい。同じCMTという旗のもとにみなが集まることに、ピアサポートの意味があると思っています。

シャルコー・マリー・トゥース病(CMT)
シャルコー・マリー・トゥース病(CMT)は、末梢神経が損傷することで、主に四肢の感覚と運動が不自由になっていく遺伝性の進行性神経疾患です。アメリカでは2500人に1人の発症と言われていますが、日本では患者数の把握もされていません(推定約2万人)。発症は思春期から青年期に多く見られますが、それ以前や高齢になってから症状が現れる人もいるなどさまざま。進行の程度も人それぞれで、非常に幅広い臨床像が見られます。現在、原因とされる遺伝子も次々と発見され、研究も進められていますが、根治治療や進行を遅らせる治療法はありません。