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患者同士の支え合いを原点に、より間口の広い
ピアサポートを目指す「全国膠原病友の会」

患者同士の支え合いを原点に、より間口の広いピアサポートを目指す「全国膠原病友の会」

1971年に設立された全国膠原病友の会は、現在、全国に34支部、約5000名の会員を擁しています。40年以上に及ぶ活動の原点であり、根幹にあるのは、患者同士が支え合うというピアサポートです。各支部を窓口とする電話相談や交流会、保健所や難病相談・支援センターと連携した医療講演会など、さまざまな形で展開しているピアサポートについて、代表理事の森幸子さんにお話を伺いました。

一般社団法人 全国膠原病友の会 代表理事 森 幸子 さん

膠原病患者を取り巻く現在の状況について教えてください

膠原病は20種類以上の病名を持つ疾患の総称です。同じ膠原病の仲間でありながら、特定疾患に指定されていない疾患も多数あります。また、専門医が少なく、その数も地域格差が大きいため、確定診断が遅れる場合もあります。罹患期間が長く、寛解と増悪を繰り返し、症状に変動があるため生活に支障をきたし、必要な時に対応できる国や行政の支援も少ないというのが現状です。

全国膠原病友の会(以下、友の会)は、自分が発病した時の不安や病気を受容し、制度改正やQOL向上に取り組んできた患者当事者によって支えられています。全国に34支部あり、本部(東京)には事務局員が常駐し、相談員を毎日2名配置。電話や面談での相談を会員以外の人からも受け付けています。支部の形態はさまざまで、専属の職員がいるところもあれば、自宅の電話だけで対応している支部もあります。

今年9月には、全支部対象にピアサポートの状況に関するアンケート調査を実施しました。相談はどのような形で行っているか、それぞれの相談スタイルのメリットやデメリット、交流会や医療講演会の手法や回数、どのような機関と連携しているか、ピアサポーターの人材育成についてなどがアンケートの主な項目です。

アンケート調査の結果からみえてきたことはどんなことですか

当会は、本部が事業を企画し支部が一丸となってそれを実施していくというスタイルではなく、地域の特性もあり、活動は各支部の裁量に任せています。電話相談はすべての支部で行っており、メールやファックスでも受け付けています。交流会もほぼ全支部が実施していますが、実施回数となると、年1回のところもあれば3〜4回、中には10回以上、20回以上と盛んな支部もあり、かなり幅があります。

また、難病相談・支援センター(以下、センター)や保健所との連携によるピアサポートも多く行われています。センターでのピアサポートにかかわっている支部は現在18支部です。センター運営を地域の難病連絡協議会が受託している場合、難病連絡協議会の加盟会員として相談業務に出向いたり、交流会でピアカウンセリングを行ったり、医療講演会を共催したりしています。また、ピアサポート研修会や養成講座にも積極的に参加しています。

膠原病は、診断がついてもその中で病名がいくつもあり、症状も薬も違うという複雑な疾患です。診察時の医師の説明だけではなかなか理解できず、受容にも時間がかかります。だからこそ経験を積んだ患者力のあるピアサポーターが必要です。医師や専門職、そしてピアサポーターが集まる医療講演会や交流会を地域で増やしていくことが大切です。センターや保健所とつながることで、間口の広いピアサポートができ、友の会への信頼も生まれてくると思います。

個別相談やグループ交流会それぞれのメリットやデメリットについてはどうですか

個別相談のような、1対1での相談となると少し敷居が高くなるようで、「どんな相談ができるのですか?」という質問から始まる人もいます。その時に「どんなことでもどうぞ」と返してしまうと、そこで止まってしまうので、「こんな相談をされる人がいますよ」と、いくつか事例を挙げると入って来やすいようです。特に女性患者が多く、結婚、離婚、妊娠、出産などについては個別相談の範疇になります。中には30分、40分話しても迷っているようで、そろそろお時間ですと言うと「実は、今日来たのは…」と、ようやく核心について話し始める方もいます。信頼関係を築いていくことが個別相談では大切ですね。

また、病気なのは分かっているが納得できない、こんな病気になる自分が嫌だ、身体の不具合はたくさんあるけれど嘘であってほしい。そんな病気を受容できていない状況が何年も続く人もいます。このような人には、グループでのピアサポートが有効なようです。自己紹介を聞いているだけでも豊富な情報が得られ、知らず知らずに自分の困っていることを話せるようになる人もいます。病気の受容は個別相談では難しいですね。

私のいる滋賀支部では「ミニ集会」を毎月1回開いています。申し込みも不要です。グループでの話し合いを行っている途中で私は抜けて、別室にいる時間をつくるようにしています。すると「ちょっといいですか?」とやって来る人もいて、しばらく2人で話し、また、グループに戻っていく。そのような柔軟なピアサポートのスタイルをとっています。

各支部で特徴のあるピアサポートを行っている事例はありますか

男性会員だけの交流会「男子会!」がある支部があります。飲み会も兼ねていろいろな話題で盛り上がっているようです。この会からの企画で、就労支援にもつながるパソコン教室も開催予定です。「おひとり様交流会」では、今後、高齢化で一人暮らしが多くなることから、一人で自立して生きていくために、さまざまな問題にみんなで前向きに取り組んでいこうと活動しています。支部のホームページをブログにすることで、若い患者さんも相談しやすくなり、それを機会に交流会に参加し入会者が増えたというケースもあります。ある支部の医療講演会では医師とピアサポーターへの2つの質問用紙を用意し、休憩時間に回収して、質疑応答の時間にそれぞれの質問に答えています。匿名性も保たれますし、ピアサポーターからいろいろな経験談、生活の工夫などが紹介され、好評のようです。

各支部の情報共有の仕方とそれを活かしたこれからのピアサポートへの抱負を教えてください

本部での電話相談記録は件数と内容はまとめていますが、内容の分析まではできていません。さまざまな情報は、年4回発行している機関誌『膠原』で紹介しています。また、年1回開催している支部長会議での活動報告で意見交換や議論を行っています。特にピアサポートでは、センターや保健所とかかわれていない支部から、どうすれば連携していけるのかという話が上がっています。患者団体の活動は黙々と内向きにやっている時代ではないという意識が浸透してきているのだと思います。地域の特性も考慮しながら、連携するきっかけやシステムづくり、より幅広いピアサポートのあり方を探っていきたいと思っています。

膠原病手帳(緊急医療支援手帳)

2011年3月の東日本大震災で被災された方々の声を集め、1年後に初版を発行。約7000人が利用しています。2013年度版には4月に施行された「障害者総合支援法」の概要も掲載。今後も毎年発行し、命を守る備えを忘れないよう、より多くの人々に活用してもらうことを目指しています。