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日本リウマチ友の会の歩みから考えるピアサポートの原点、
患者どうしが支え合う患者団体の活動

日本リウマチ友の会の歩みから考えるピアサポートの原点、患者どうしが支え合う患者団体の活動

同じ病気の患者どうしが悩みやつらさを共有し、支え合うことを目的とした患者団体は、その活動そのものがピアサポートだと言われます。 そこで、今回のピアサポートNOWでは、日本の患者団体の草分け的な存在である公益社団法人「日本リウマチ友の会」会長・長谷川三枝子さんに、患者団体としての歩みの中でのピアサポート活動について、お話を伺いました。

公益社団法人 日本リウマチ友の会 会長 長谷川 三枝子 さん

日本リウマチ友の会(以下、友の会)は50年以上の歴史をもつ代表的な患者団体です。患者さんどうしの支え合い、つまり患者団体の“活動そのもの”がピアサポートとも言えますね

友の会設立当初は、まだ有効な治療法がなく、専門医も少ない時代でした。幸い医療者の協力が得られ、医療情報を提供されたので、私たちは「患者どうしで病気の勉強をしながら支え合う」という形で、活動を始めました。機関誌『流』も早くから発行し、患者たちの貴重な情報源になったと思います。
患者どうしの支え合いは、患者団体の原点です。「痛い時にはトイレにも行けない」「うまく食べられなくて恥ずかしい」「歩く姿を見られたくない」など、医療者や家族にも話せないことが、同じ病気の患者どうしだと安心して打ち明けられ、共有できます。痛みやつらさを理解し合える患者間の交流は、大切なことだと思いますね。その結果、友の会には、日常生活や自助具のことなど、医療側には把握しきれない情報が集まり、それらを『リウマチ白書』として医療者や社会に発表してきたことも、患者どうしの助け合いの大きな意義ではないでしょうか。

具体的なピアサポート活動としては、相談事業や交流会が挙げられると思いますが、まず、相談事業について教えてください

相談事業はおもに電話によるもので、友の会本部で理事や事務局員が年間7000件以上の電話相談を受けています。あくまでも患者の立場から、経験に基づいた対応と位置づけて、薬や治療法など医療については答えず、主治医に相談することを勧めます。相談者が会員の場合は、『流』の掲載記事や友の会の専門医による医療相談、支部の講演会や相談会を案内しています。どうしても病院を変わりたいという場合には、複数の医療施設を紹介しています。
電話による医療相談は、毎月実施しています。相談内容はさまざまですが、リウマチは専門医が主に内科と整形外科という背景があるので、立場の異なる複数医師にセカンドオピニオンを求めたいとの相談も多いですね。他の患者にも参考になるような相談内容は、個人情報を除いて文章化し、『流』に掲載しています。

時代に応じて相談内容は変わってきましたかまた、相談を受ける側として工夫していることはありますか

以前は、「痛くてつらくて…」と電話口で泣かれることがよくあったのですが、この頃は少ないですね。医療が進み、治療法も進展してきたので、患者のありようも変わってきたと感じます。一方、医療者との関係に悩む相談は今も多くあります。主治医と信頼関係が構築できないことは、患者にとって大変不幸なことですし、病院や医師に遠慮している人も多いので、主治医ときちんと向き合うようにと助言することも、私たちの役割だと考えています。
最近、増えている相談は、生物学的製剤と関連して高額医療費にかかわること、そして、症状が安定して就労できる人がリウマチへの理解がないため職場で健康な人と同じような働きを要求されるといった内容です。医療が進み、症状が安定している人が増え、患者の姿が変わってきたゆえに、悩みも変わってきているわけですね。
電話相談に対応するために、相談事業資料としてマニュアルを作成しています。また、相談内容に応じて福祉などの適切な窓口を案内するリストや、『流』で取り上げた治療や福祉にかかわる記事一覧を作成し、問い合わせには速やかに答えられるよう、工夫しています。傾聴の仕方も、電話相談の受け方として留意する点をまとめています。そのほか、電話相談を受けるメンバーそれぞれに相談記録を用意。相談内容や案内した内容などを分類して記録し、相談事業全体の把握に努めています。

支部での交流会など本部はどのようにかかわり、支援していますか

医療講演会や相談会は本部が協力しますが、地域での会員どうしの交流会や親睦会については、支部に任せています。最近では、妊娠や出産・子育てなどに悩む若い世代が集まる会や、東京には男性患者さんの「龍馬の会」という集まりもあり、これらはまさにピアサポート的な活動です。活発に活動しているところも多いのですが、中心になる人たちの体調に左右されるのが、患者自身が運営する組織の課題です。そこで、会員外の相談電話はすべて本部で受けるなど、支部長の負担が重くならないように配慮しています。 支部長研修は毎年行い、支部活動や個人情報の取り扱いといった、活動の仕方や約束事については、全国で統一するようにしています。

最後に、患者団体に求められるピアサポートとは、どのようなことだと思われますか

患者が10人いれば、10通りの体験があります。特にリウマチの場合、治療方法もずいぶん変わってきているので、ピアサポートであっても患者の体験だけに頼るのは科学的ではないと考え、相談には客観的な情報を背景とする対応を心掛けています。自らは患者でない事務局員も電話相談に対応しますが、よく勉強して情報を共有していますので、果たす役割は同じだと考えています。
私たちの願いは、この医療の進んだ時代に、患者自身もリウマチという病気とその治療法を理解して根気よく付き合い、かしこい患者になること。そのために、的確な情報を提供し、制度や医療機関を上手に活用できるように助言することが、私たちにできるピアサポートではないでしょうか。そして、患者中心の医療をさらに進めて、患者が参画する医療を目指すうえで、『リウマチ白書』のように患者の情報を医療者や社会に向けて発信し、医療や福祉の向上に役立てることも、広い意味のピアサポートではないかと思います。

~日本リウマチ友の会とリウマチ治療について~
日本リウマチ友の会は、1960年、長期療養生活の中で精神的、経済的、社会的に多くの問題を抱えたリウマチの患者どうしが、病気に関する正しい知識を得て、リウマチ対策の確立と推進を図り、リウマチ患者の福祉の向上に努めるという目的をもって設立された団体です。

リウマチ治療に関しては、近年、薬の選択肢が増えたことや、人工関節置換術などの手術療法の進歩により、症状が改善する患者が多くなりました。特に、関節リウマチの炎症や痛み、腫れ、関節破壊を引き起こす原因となる物質を抑える「生物学的製剤」が登場し、治療は大きく進展し、治療の目標は「寛解」を目指せるようになりました。現在では、患者が医師と共に目標をもって治療を進める「T2T」(treat to target)の時代となりました。