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生きづらさを解消するために仲間と出会い交流する
「発達障害をもつ大人の会(DDAC)」

生きづらさを解消するために仲間と出会い交流する「発達障害をもつ大人の会(DDAC)」

子どもの頃からみんなと同じ事ができない、コミュニケーションが上手に取れない、衝動的な行動をする…。発達障害は、診断基準もあいまいで、幼少期にも、そして大人になってからも社会適応が難しいという現状があります。どうすれば発達障害とうまく付き合っていけるのか。一番の力になるのは、まさに当事者同士のピアサポートです。そんな思いで活動を続ける「発達障害をもつ大人の会」代表の広野ゆいさんにお話を伺いました。

NPO法人 発達障害をもつ大人の会(DDAC) 代表 広野 ゆい さん

団体の立ち上げの背景や経緯について教えてください

近年まで発達障害は青年期までの疾患であり、大人の問題ではないとされてきました。しかし、子どもの頃に「発達凸凹」※を見過ごされて大人になった人たちは、成育環境において特性に合った理解や対処を得られず、失敗を積み重ねて現在に至っています。結果として、多くの当事者が、大人になってからも自尊心の低下や、うつ病といった二次障害など、さまざまな問題を抱え、社会の中で生きづらさを感じているのが現状です。 この団体は、もともと2002年に私が兵庫県芦屋市で立ち上げた「関西ほっとサロン」という自助グループがスタートでした。月に一度集まり、自由におしゃべりをするという、居場所のような意味合いもある当事者サロンでした。ところが、2005年の発達障害者支援法施行を機に、電話相談が増え、メディアの取材や講演依頼も来るようになり、今までのグループ体制では対応が難しくなってきたのです。そこで、今までの体制は残しつつ、さらに幅広い活動が展開できるように、2008年に現在の「発達障害をもつ大人の会」を設立し、2010年にNPO法人化しました。

そもそも「関西ほっとサロン」を立ち上げたきっかけはなんですか?

私はADHDの当事者ですが、幼少期には発達障害という言葉も浸透していませんでした。けれども、自分は人と違うという自覚はありました。授業中に先生の話や指示が聞けなかったり、忘れ物が多いと毎年通知表に書かれたり、片付けが全くできないと両親が先生に呼び出されたりすることもありました。ADHDという病名を知ったのは20代後半です。その後、精神科医、司馬理英子さんの『のび太・ジャイアン症候群』や、アメリカのカウンセラー、サリ・ソルデンの『片づけられない女たち』といった著書を読んだ時、本当に心から安堵しました。私は怠け者でもやる気のない人間でもない、発達障害なのだと。でも、その気持ちを分かってくれる人は周りに誰もいませんでした。それでも、私と同じような心境で過ごしている人は他にもきっといるはず、という思いから当事者サロンを発足しました。

サロンはどのように運営しているのですか?

基本的にはまず、自己紹介を行いますが、その際に自己診断名も言ってもらいます。たとえ両親や医療者が参加していても、同じように行ってもらいます。あとはテーマも決めず、自然に複数のグループに分かれておしゃべりが始まりますが、批判をしてはいけないなど、いくつかのグラウンドルールを設定しています。毎回、40名近く参加され、年代は20代前半〜50代までと幅広く、中には60代の方もいます。遠方からですと、埼玉県や広島県から来られる方もいます。最近は、大人になってからうつ状態となり、勤務先の産業カウンセラーに発達障害ではないかと指摘された人、リストラなどで症状が出現し、発達障害と診断される人も増えています。 サロンは10年以上続けているので、常連さんも増え、その方たちがリーダーのような役割を果たしてくれています。初めて参加した人のフォローをしたり、議論が白熱するグループをセーブしたりしてくれています。また、本人にそのつもりはなくても攻撃的な意見を言ってしまうケースも多々あります。そんな時は「それは良くないよね」と言葉をかけてくれています。これは当事者同士だからこそ言えることであり、指摘されても納得できるのです。 発達障害をもつ大人が生きづらさを解消したいと思った時、仲間と出会うことが一番の方法であると活動を通して実感しています。一人で頑張るのはとてもつらく、頑張り方がわからないのです。いろいろな当事者と会うことで、真似をしたり、失敗例を聞きノウハウを吸収したりしながら効率良く前進していけます。

これからの抱負をお聞かせください

これまで、サロンの運営や電話相談以外には主に、助成金事業や委託事業を行ってきました。助成金事業については、1年ごとに公募されるものに応募し、継続して受けられるように行政担当者と密に連絡を取り合い、受注までのノウハウも学んできました。しかし、大阪府の緊急雇用創出基金事業では、当事者と企業をつなぐコンサルティング事業などを行っていますが、マンパワーが足りていません。そのため、発達障害の人が難しいとされる、片付けや金銭管理の問題を解決するための「片付けセミナー」や「金銭管理講座」などのプログラムが開催できなくなっているのが現状です。 今後は、当事者が自立し、自分たちの力で活動し、その動きが全国に広がり、みんなでスキルアップできるようなネットワークをつくりたいと思っています。当事者サロンは人材育成の場ではありませんが、継続して参加している人から、自分の地域でもサロンを開いてみたいという声も少なくありません。実際に立ち上げれば、当然問題も出てくるでしょう。そのような時は、VHO-netのワークショップのように、みんなで集まって話し合い、解決策を探っていく。そんな中からもピアサポーターの人材が育っていくような団体に、これからも成長していきたいと思っています。

※発達凸凹(はったつでこぼこ)
認知(知覚・理解・記憶・推理・問題解決などの知的活動)の高い部分と低い部分の差が大きい人のこと。
特性に合う環境があれば上手く適応し、能力を発揮することができる。