CLOSE

このサイトは、ファイザー株式会社が社会貢献活動として発行しております『まねきねこ』の情報誌のウェブ版であり、個別の疾患の相談は受け付けておりません。
該当する患者団体などをご紹介することは可能です。

お問い合わせはこちら

※メーラーが起動します。

ピア・サポートのためのこころのレッスン

ピア・サポートのためのこころのレッスン

前回、ピア・サポートに取り組むために必要な概念として、「自己理解」という言葉を紹介しました。その中のひとつが「転移感情」でした。
今回は、ストレス・マネジメントについて話していきたいと思います。

ストレス・マネジメント

人は、人生の中で、さまざまなストレッサー(=ストレスの原因)に出会います。その時、これは自分にとってたいしたことではないと思えたら、ストレスにはなりませんが、自分は、解決するのが無理だと思えば思うほどストレスは大きくなります。その人の置かれている状況や体力、経済力、取り巻く人間関係などによってもストレッサーの影響は変わってきますが、その人の性格(=物事のとらえ方)によっても影響の大きさは変わってきます。
その人の物事のとらえ方(=認知の傾向)に視点を当ててストレスを少なくしていく方法を、認知療法といい、心理療法の中で活用されています。             
そこで、今回は、ピア・サポートの研修でのエピソードも交えながら、ストレス・マネジメントについて考えていきます。

体が緊張すること

人は、ストレスを感じると、自律神経の中の交感神経が活性化し、脅威から身を守ろうとして緊張を高め、身体に力を入れ、心拍数を上げます。また、外傷に備え、唾液の量を抑えて濃度を高め、そして、脅威が去ったら副交感神経を優位にして、緊張を緩めます。
しかし、人によっては、その緊張が残ってしまい、肩凝りや腰痛などの慢性的な緊張となる人もいます。
研修会で、腕の力を抜いてみましょうと伝え、やってもらうと、すぐに力が抜ける人もいれば、なかなか力が抜けない人もいます。
50代の男性のAさんは、腕の重みを預けることができず、力が入ったままだったので、話を聞くと、「疲れがたまりやすく、ぐったりとなることが多いです。」と言われ、力を入れたままで生活をしていることに気づかれました。いつも笑顔でたくさんお話をしてくださるAさんが、そんなに力が入ったままで生活しておられるとは私は想像もしていなかったのですが、人工肛門の手術をされたことを聞き、長年の緊張が体に与えた影響を改めて考えさせられました。
Aさんには、動作法の肩上げ課題を実施し、肩の力の抜き方を通して、力の抜けた感覚を味わってもらうことで、今まで自分では気づいていなかった体の力みに目を向け、余計な緊張を減らしていくことを学んでもらいました。
自己理解のためにも、ストレスがかかった時に、どうやって対処するかを学んでおくことは大切です。問題そのものがすぐには解決しない時でも、人に相談する。スポーツをする。ドライブや散歩をする。音楽などの趣味で気分転換をする。入浴する。寝るなどのいろいろな対処法があります。また、好きなものを食べる、飲酒や喫煙やゲームをするなども選択肢のひとつであるものの、それだけの対処法では依存症になっていく危険もあります。お金の自由が利く大人の場合はいろいろな選択肢がありますが、子どもの場合は限られてきます。そういう意味では、『いつでも、どこでも、お金をかけずに』できる方法を教えることは大切です。
どんなストレス対処法を選択するかで、人の人生は左右されるとも言えましょう。皆さんのストレス対処法(=コーピング)はいかがでしょうか。
そこで、次回は、呼吸法や漸進性筋弛緩法などのリラックス法という対処法についてお伝えしたいと思います。

黒岩 淑子さん プロフィール
佐賀大学保健管理センター非常勤カウンセラー、佐賀県スクールカウンセラーを精励したのち、現在は東京都スクールカウンセラーと佐賀県難病相談支援センターピアサポート研修講師に勤しむ。

*1856~1939年、オーストリアの精神科医。「無意識」を扱った精神分析学の創始者。