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第5回ヘルスケア関連団体ワークショップ
開催報告

第5回ヘルスケア関連団体ワークショップ
開催報告

つなぐ 医療関係者とのより良い関係

10月29・30日の両日、第5回ヘルスケア関連団体ワークショップが、東京都大田区のアポロ・ラーニングセンターにおいて開催されました。

2001年から開催されてきたワークショップでは、疾病や障がい、立場を越えて、ヘルスケア関連団体のリーダーが集まり、それぞれの課題・解決策を共有するネットワーキングを目指してきました。今回の第5回目は、ワークショップをきっかけに結成された東北・関西・九州地区の学習会に共通する課題から「つなぐ~医療関係者とのより良い関係~」がテーマとなりました。

まず、患者と医師のコミュニケーションについて聖マリアンナ医科大学教授・箕輪良行先生による基調講演が行われました。その後、分科会ではコミュニケーションの改善を必要とする対象として、参加者が「医療関係者」「医療関係職をめざす学生」「当事者(患者、障がい者、家族、支援者)」というグループに分かれ、医療関係者とのより良い関係の構築を目的とし、議論と発表が行われました。

全体を通じて「当事者自身が変わっていこう」「団体が連携して共有する課題に取り組み、社会に対して働きかけていこう」という参加者の積極的な姿勢が目立ちました。また最後に、北海道、北陸、東海の各地域でも学習会を立ち上げようという声が上がり、ネットワーキングのさらなる広がりを感じさせながら、2日間のワークショップは終了しました。。

基調講演:医療関係者とのより良い関係について

マリアンナ医科大学救急医学教室教授 箕輪良行

患者さんと医療関係者には、コミュニケーション・ギャップが生じていますが、医療者側は、コミュニケーション能力の重要性を実感できません。しかし、技量のある医師でも患者と良好な関係が築けないと能力を発揮できないことも事実です。医師が患者さんを尊重し、誠実に医療に従事し、患者満足度を高めていくと、医療と経営の質を高めることにもなります。 そこで私たちは、臨床経験のあるプライマリケア医がコミュニケーション技法と患者満足度を学ぶ訓練コースの研究に取り組んでいます。まだ課題は山積していますが、ロールプレイとワークショップ形式のプログラムにより、ある程度、医師の行動は改善できることがわかりました。今後も患者と医師のより良いコミュニケーションの構築に向けて努力していきたいと考えています。

地域学習会報告:それぞれの地域で独自の活動を展開
「立場の違いを越えて、共通課題に取り組む」:九州地区学習会

第1回学習会は自己紹介を中心に情報交換を行い、第2回目では医療機関とのよりよい関係や、専門医の探し方、インフォームドコンセントや医療過誤、セカンドオピニオンなど共通課題の解決に向けて取り組み始めました。

「私たちが無理なく暮らせる地域社会を目指したい」:東北ヘルスケアネット(東北地域学習会)

疾病理解・障がい理解促進の活動のひとつの試みとして、会員が大学で講義を行うなどの活動にも取り組んでいます。東北の隅々の地域社会で、私たちが無理なく元気に暮らすことのできる社会環境や社会システムを目指したいと考えています。

「患者の医学教育への参加には意義がある」:関西地区学習会

私たちは、受け身ではなく主体的に働きかけていこうと、当事者が教壇に立つ活動を続けてきました。医療側と患者側の相互努力で信頼関係を構築することが良い医療を育むと考え、患者会は社会的な訓練を行うことが必要だと考えています。教育機関の要請に応えられる患者講師の育成や、医療者に理解してもらうための効果的な講演をめざす研修会を開催していきたいと考えています。

分科会の発表:ひとりひとりが主役となり、問題解決に取り組む

分科会では、コミュニケーションの改善を必要とする「立場」で検討していく必要があるとの考えから、「医療関係者」「医療関係者を目指す学生」「当事者」の3つのグループに分かれて話し合いと発表が行われました。それぞれの立場から考えた結果、浮かび上がった問題は共通する部分が多く、今日の医療が抱える課題やヘルスケア関連団体が取り組むべき活動の方向性が明らかになったといえそうです。

医療関係者のグループ発表

医療関係者グループからは、まず「患者会力を向上させよう」という発表がありました。医療関係者とよりよい関係をつなぐために、一方的な上下関係ではなく、双方向の信頼関係、対等な関係の構築を目指して「患者会力」を向上させること、知識や情報を蓄積し、数の力や連携により、患者会の強みを増し、医療の中心は患者であるとの社会的背景を醸成していこうという提案でした。

次に「患者側も勉強して情報発信を」という発表がありました。医療従事者との信頼関係をどう確立していくか、医学教育に患者中心の医療の必要性をどう組み込むかという課題があること、多様化する患者の要望や悩みの伝え方を患者側も学ぶことが必要であること、患者会が中心となり、これからの医療を「患者の声をきく」体制に変えていきたいという発表でした。

「医療を評価していくシステムを作ろう」という発表では、当事者は病気や障害は別でも思いや悩みは一緒であること、医療関係者も患者もよい医療を求めているが、両者にはへだたりがあることなどが語られました。そして、医療を医療ユーザーの立場で評価するシステムを作り、データベース化して社会的な認知が得られるように、VHO内にプロジェクトチームを立ち上げようという提案がありました。

「患者会の意義、有効性を社会に発信しよう」という発表では、医療関係者のコミュニケーションスキルの向上、非専門医のレベルアップ、患者の声を聞いてもらう公開講座などが必要であること、患者会の意義や有効性を社会に発信すること、医師免許更新と再教育制度、市民による医療機関・医療関係者の評価制度、患者・医師の情報交換ツールの作成に取り組んでいくことなどが提案されました。

医療関係者を目指す学生グループ

学生の立場で考えるグループは、学生にさまざまな症状に対する共感や、心情・心理の理解、希望につながる説明の仕方などを学んでもらい、患者会の意義を考える講義を行いたいと発表しました。また、患者会として講義メニューや講師リストを作成し、体験的知識に基づいた情報提供を行うことや、実体験や生活に基づいた知識の蓄積、研修医教育や教育学部生の教育、小中高の総合学習へ積極的に参加することなどが提案されました。

当事者グループ

当事者グループからはまず「かしこい患者になろう」という発表がありました。 医療関係者とのコミュニケーション能力不足、疾患への理解不足、患者団体における本部と支部の関係などの問題をふまえ、医療関係者と患者の円滑なコミュニケーションを実現するために、医療に関する情報を収集し、自分自身を守るためのテクニックを身につけ、かしこい患者になろうという提案でした。

「プロの患者として学び、行動しよう」という発表では、当事者として病気や障がいを知り、当事者同士のネットワーク(ピアカウンセリングなど)により共通課題の解決や知識の共有を図り、医療関係者や行政とのネットワーク作りに取り組むことや、プロの患者として学び合い、行動することでより良く住みやすい街をつくることなどが提案されました。また患者は自分の思いで先走りしやすいので、幅広く物事をみようという意見もありました。

最後に「立場を越えて知り、学び、行動しよう」との発表がありました。当事者として疾病や障がいを受容し、エンパワーメントすることが必要であり、当事者の立場に立った医療を実現するために、病診連携やピアカウンセリングについて知識や情報が提供できるように、勉強会や自己啓発講習会を開催すること、ネットワークを作り、立場を越えて知り、学び、行動し、地域で支える社会になるように啓発していこうとの提案でした。