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対談 第3回 PPI(患者・市民参画)パネルも始動
今後のヘルスケア関連団体に期待される役割としてのPPI

対談 第3回今後のヘルスケア関連団体に期待される役割としてのPPI

ヘルスケア関連団体の皆さんに広く知ってほしい取り組みや伝えていきたいテーマについて話し合っていただく対談企画。今回は当事者との協働を目指す「R&D Head Club(以下、R&Dヘッドクラブ)」のメンバーに、医薬品開発における課題やヘルスケア関連団体への期待を語っていただきました。

日本初のPPIパネルを作成
2025年4月、R&DヘッドクラブとVHO-net ※1 はPPI ※2(患者・市民参画)促進に関するパートナーシップ契約を締結し、今後、日本初のPPIパネル(当事者登録制)の作成を予定しています。まず、R&Dヘッドクラブについて教えてください。

北村さん
2005年に日本の製薬企業の研究開発部門長を中心に構成された任意団体です。新薬開発・承認にかかわる問題点を討議し、日本の規制当局、政策決定者、医療従事者、アカデミア、患者団体などとの議論を通じて、製薬企業の開発プロフェッショナルとしての大胆な提言を行い、グローバルな革新的医薬品の開発に寄与することを目指しています。

最近では「治験のさらなる効率化(エコシステム)」にR&Dヘッドクラブの提案が多く採用され、治験の同意説明文書(ICF ※3)を共通化する「ICF共通テンプレート」の提案や推進にもかかわるなど、日本の医薬品開発について重要な役割を果たしています。

※1 VHO-net:(一社)ヘルスケア関連団体ネットワーキングの会
※2 PPI:Patient & Public Involvement
※3 ICF:Informed Consent Form

PPIパネルの作成の背景として、どのような課題があるのでしょうか。

北村さん
まず、患者さんや市民の方には、治験自体があまり知られていないこと、PPIに参加する方が限られているという課題があります。また、海外、特に欧米で開発・承認された薬剤に対して、日本での承認に時差が生じるドラッグラグ、日本で承認されないドラッグロスの問題があります。
その理由としては、近年、開発される薬剤の過半数がバイオベンチャー企業によって生み出されていることがあります。最も大きな市場である米国で承認される薬剤が圧倒的に多く、ヨーロッパも米国とデータの相互利用が進んでいることから、米国とヨーロッパではドラッグロスはあまり生じていません。
ところが、小規模なバイオベンチャー企業は、これまで特有の規制があり、英語圏ではない日本での治験などの対応が遅れがちなのです。

奥田さん
小児での治験が特に進めにくいというのも課題だと思います。また、特定の細胞やがん種をターゲットにするような薬剤が増えたことで、小規模のバイオベンチャー企業の方が研究者などと連携しやすく、スピーディに医薬品開発ができるという背景もあると思います。
ただし、保険の仕組みが日本とは異なるため、米国だけでなく、欧州各国でも承認されていても薬剤が使えない場合があることは認識しておく必要があると思います。

PPIが広がることへの期待
欧米ではPPIが進んでいるようですが、そもそも、なぜ、医薬品開発にPPIが重要なのでしょうか。

北村さん
最終的な医薬品のユーザーである患者さんの声を聞き、要望に応えていくことは当然の流れです。医薬品開発に患者さんの声を取り入れるということに関しては米国よりヨーロッパの方が進んでおり、患者団体、大学、非営利団体、製薬企業が参加した「全欧州革新的医薬品イニシアティブ(IMI ※4)プロジェクト」の一つに、欧州患者アカデミー(EUPATI ※5)という医薬品の研究開発に関する患者さんの知識向上を目指した教育機関があります。ヨーロッパでは文化的にダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I ※6)という考え方が浸透しており、医薬品や医療の受益者である患者さんの声が重要であると認識されているようです。

※4 IMI: Innovative Medicines Initiative
※5 EUPATI:European Patients’ Academy on Therapeutic Innovation
※6 DE&I:Diversity(多様性)、 Equity(公平性)、 Inclusion(包括性)

R&D Head Club 2005年設立。日本の製薬企業の研究開発部門長を中心に23社により構成される(2025年9月現在)。

R&D Head Club 2005年設立。日本の製薬企業の研究開発部門長を中心に23社により構成される(2025年9月現在)。

奥田さん
規制当局である欧州医薬品庁(EMA ※7)の場合も、患者さんで構成される委員会が設けられており、製薬企業が規制当局に薬剤の開発を相談する段階や、開発後の承認申請時、販売後の安全性のレビュー期間などの各段階で、当局の審査官と同じタイミングで患者さんの視点でチェックする仕組みが整っています。

※7 EMA: European Medicines Agency

VHO-netでもPPIに参加するための研修を計画していますが、当事者の皆さんにとっては、PPIに取り組むことで、どのようなメリットがあるのでしょうか。

北村さん
長期的には、PPIが推進されることによって臨床試験や治験の課題が解決されることで開発がスムーズに進み、新薬を日本の患者さんも速やかに使用できるようになると考えられます。患者さん個人にとっては医薬品開発について理解を深めることでヘルスリテラシーが高まり、ご自分のQOLが改善されるケースもあるのではないかと思います。

奥田さん
PPIに参加することで視野が広がり、海外の患者団体などとつながることもでき、より早く情報収集ができるという面もあると思います。PPIを通じて、医薬品開発のパートナーとして協働している、医療の発展に貢献しているという思いを、少しでも感じていただけることができれば、私たちとしてもうれしく思います。

AIによる翻訳などを活用すれば海外との言葉の障壁は解消されていくと思いますし、患者さんにとっても、PPIに参加する意義はあるということですね。最後に、VHO-netやPPIパネルへの期待を聞かせてください。

北村さん
VHO-netには多様な団体のリーダーの方が参加されているので、R&Dヘッドクラブとしては、PPIパネルを通じてPPIに協力される方が増えることで、お互いにとってウィンウィンの状況がつくれるのではないかと期待しています。その一方で、製薬企業のアンケートに答えたり、治験や臨床試験について理解したりすることもPPIの一つです。「トレーニングを受けていないからPPIに参加できない」と諦めずにできるところから取り組んでいただき、より多くの方に新しい医療のための一歩を踏み出していただきたいと思います。

奥田さん
VHO-netは以前からPPIに積極的に取り組まれているので、PPIパネルによって患者さんとの協働をよりスムーズに行えるのではないかと期待しています。より多くの方にPPIに参加していただいて、医薬品開発のパートナーとして、未来の患者さんに有用な医薬品を一緒に届けていきたいと願っています。

当事者の声を医薬品開発に活かし、日本での課題解決に役立てたいという製薬企業や研究者のニーズに応えて、ヘルスケア関連団体はその活動の一つとしてPPIに取り組むことが求められる時代になってきたのだと感じます。PPIパネルへの積極的な参加も期待したいですね。