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このサイトは、ファイザー株式会社が社会貢献活動として発行しております『まねきねこ』の情報誌のウェブ版であり、個別の疾患の相談は受け付けておりません。
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日本ハンチントン病ネットワーク(JHDN)

日本ハンチントン病ネットワーク(JHDN)

理事・事務局次長 三浦秀昭/理事 古山惠子

ハンチントン病(HD)とは、脳内の線条体と呼ばれる部分にある細胞が失われることによって、症状が引き起こされる疾患で、日本人には100万人に5、6人未満という稀少難病です。遺伝子によって次世代に伝わっていくため、「at-risk(発症する可能性がある)」の子どもへの病気の説明、結婚、出産などのライフイベントの選択など、難問が立ちはだかっています。医療講演、電話相談にと奮闘する「日本ハンチントン病ネットワーク(JHDN)」代表の中井伴子さんにお話を伺いました。

活動の状況
100万人に5、6人未満の稀少難病

ハンチントン病(HD)患者は今、全国で800名前後いるといわれています。35〜50歳くらいの働き盛りの年齢で発症するため、生活に直結します。特定疾患に認定されていますが、生活保護を受けている家庭は難病申請をしないため正確な人数は把握できていません。

主な症状は、物事を認識する力(思考・判断・記憶)の喪失、動作をコントロールする力の喪失(不随意運動・飲み込み困難)、感情をコントロールする力の困難(抑鬱・感情の爆発・いらだち)などです。症状の出方には個人差がありますが、進行するにつれ一部要介助や全介助となり、ほとんど家族が家で介護しているのが現状です。

「日本ハンチントン病ネットワーク(JHDN)」は2000年に、現在、東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センターに在籍されている武藤香織先生の声かけによって発足しました。武藤先生が国際神経学会でのHD会議に参加されたとき、アジア系の関係者が一人もいなかったことがきっかけです。HDは海外では特に白人に多く、10万人に4〜10人の割合で存在していることもあり、研究も情報交換も盛んです。そこで武藤先生が日本のHD患者に呼びかけたところ、私のいとこである由紀(故人・前代表)が、自分は「at-risk」でありHDの家族がいる、と連絡をとったのがこの患者会のスタートでした。会員は患者、家族、介護者を中心に現在80名。なかに若年性HDの家族が4家族います。

ハンチントン病は以前「ハンチントン舞踏病」と呼ばれていました。「舞踏」は症状のなかの不随意運動を意味しています。しかし、それは特徴の一部に過ぎないため、JHDNが厚生労働省に陳情を行い、2002年に「ハンチントン病」と病名が変わりました。

医療者や医学生への医療講演での手応え

HDは遺伝子によって次の世代に伝わる病気です。優性遺伝で両親のどちらかが発症した場合、子どもに伝わる確率は2分の1です。子どもたちにこの病気をいつ、どう伝えるかはとても難しい問題です。発症前遺伝子診断を受けることもできますが、ここでも葛藤があります。陽性だった場合、根治療法がないからです。それなら調べるメリットがあるのかということになります。陽性だったために自殺してしまう人もいます。結婚や出産も大きな決断が迫られます。会で行っている電話相談にはこれらの問題に関することが寄せられます。そして介護の大変さです。精神症状がひどく出た場合は人に危害を与えることもあり、『自分の家族だけがこうなのか? 他の患者はどうなの?』といった相談も多いですね。

会の活動はこの電話相談、会報誌の発行、ホームページでの情報公開、医療者・医大生に向けた講演などが主です。大学での医療講演は毎年、定期的に行っていますが、昨年初めて生命科学の基礎研究者に向けての講演を行いました。そこで「HDの研究をしてほしいとは言いませんが、研究過程でHD治療に少しでも関わるものを見つけたら、ぜひ私たちのことを思い出してほしい」と訴えました。後日、参加してくれた方がインターネット上で「自分がしている基礎研究の向こう側が見えていなかった。講演を聞いて、自分のしていることが何かにつながるのだとわかり、非常にモチベーションが上がった」と書いてくれていました。とても嬉しく医療講演の意義が再確認できました。

2006年には日本神経学会総会の会場内に、患者会の情報コーナーを設置することができました。JHDNが幹事団体となり9つの神経難病の患者会が、患者向けの解説書や活動報告書を展示・配布。研究者と難病患者との交流、橋渡しの手応えを感じることができました。

遺伝病への偏見を活動を通してなくしていきたい

武藤先生から多発性硬化症の患者会「MSキャビン」代表の中田郷子さんを紹介していただき、ヘルスケア関連団体ワークショップに初めて参加したのが2003年。2004年から代表を務めることになったのですが、会の運営ノウハウなどはまったく知りませんでした。ワークショップで知り合った他の患者会の方々がていねいに教えてくださり、とても役に立ち助けられました。どの会も大変なのに私の話をとても熱心に聞いてくれました。そのうちに関西学習会ができ、困ったときに身近に相談できる、心強い存在となりました。ときには厳しい意見も言われますが、育てようとしてくれているのがわかります。こうして他の患者会との協働も会の活動の一環となりました。 今年の秋には人類遺伝学会で発表する機会を得ました。遺伝カウセリングのトップの方々に集まっていただき、厚生労働省にも協力してもらってHDにはまだなかった「療養の手引き」も作成中です。 ただ、まだまだ会全体としての団結が弱いのが実情です。「at-risk」で家族にHD患者がいなければHDのことは忘れたいのです。患者がいる人は介護に忙しくて関われません。もっと社会にアピールしようと提案しても、やめてほしい、世間から何を言われるかわからないという声が上がります。遺伝病への偏見・差別があるのは事実ですし、遺伝のイメージが悪すぎます。それを変えていく必要がある。そのために会の活動がどんなメリットをもたらすのか、会員一人一人を説得し意識を高めていくのが今後の課題です。

主な活動

■会報誌「プチ・ニューズレター」の発行
■ホームページでの情報公開
■電話相談
■医療者・学生への医療講演
■他の患者会との協働

組織の概要

日本ハンチントン病ネットワーク(JHDN)
■設立 / 2000年3月
■会員数 / 80名