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社団法人 日本オストミー協会

社団法人 日本オストミー協会

副会長 和田 透

日本オストミー協会は、オストメイト(人工肛門・人工膀胱保有者)が共に助け合いながら、安心して暮らせる社会の実現を目指して活動する団体です。着実な歩みを続けながら、医療・装具企業などとの連携や、国際支援にも積極的に取り組み、幅広い視点での活動を展開する日本オストミー協会について、副会長の和田透さんにお話をうかがいました。

活動の状況
オストメイトと共に歩んできた日本オストミー協会

オストミーとはストーマ(人工肛門・人工膀胱)造設手術を意味し、大腸がんや膀胱がん、潰瘍性大腸炎、クローン病、先天性疾患などの手術によってストーマを持つ人のことをオストメイトと呼びます。全国で15万人以上と言われるオストメイトは常にストーマ装具を装着し、排泄に関わる問題やストーマ周囲の皮膚トラブル、骨盤内手術に起因する性機能障害・排尿障害、術後の合併症、がんの転移・再発などの不安に直面しています。

日本オストミー協会が「互療会」として設立された当時は、まだストーマ造設手術例は数少なく、海外の情報を集め、ストーマケアの知識や技術を学ぶことが活動の中心でした。1980年頃からストーマ造設手術が多数行われるようになり、会員数も激増しました。当協会では各都道府県に支部を設立し、講習会を開催してストーマケアを広めるとともに、国や行政へ働きかけて福祉施策の改善を要望し、都道府県から「オストメイト社会適応訓練事業」の委託を受けて事業を展開してきました。

近年、ストーマ装具の改良やストーマ造設手術の進歩、ストーマケアに習熟した看護師(皮膚・排泄ケア認定看護師)の増加により、術後の状態は著しく改善され、オストメイトの社会復帰を支える福祉制度も進展しつつあります。そこで、私たちは、特に「外出時」「災害時」「老後」の不安解消に重点的に取り組んでいます。たとえば、外出時の不安解消のために公共的施設への「オストメイト対応トイレ」の設置拡大を図り、災害時の不安解消のためには、ストーマ装具の緊急支給などの避難支援を行政に要望し、被災地におけるオストメイトの安心・安全の確保を目指しています。また、老後の不安解消のために、ストーマ装具の交換を身体介護の範疇とすることを国に要望し、看護職と介護職との連携によるオストメイトの介護体制の整備を目指しています。

会員の高齢化問題や団体としての体質改善に積極的に取り組む

現在、当協会が直面している最も大きな問題は高齢化と会員の減少傾向です。現在、70年代・80年代にオストメイトとなった人が高齢化し、会員の平均年齢が70歳を超え、組織としての機動力や行動力の低下を危惧しています。若い世代のオストメイトは、医療や福祉が改善されてきたことによって団体としての活動の必要性をあまり感じていないようです。しかし、現実には就学や就労、結婚、妊娠・出産などの問題に悩む人も多いので、20代から50代のオストメイトの交流を図る「20/40フォーカスグループ」を立ち上げました。若い世代の活動を活性化させ、会員増加にも結びつけていきたいと考えています。

また、公益法人制度改革に伴う、新しい公益社団法人への移行も、大きな課題です。事務的な作業は大変ですが、この機会にいっそう公益性の高い活動に取り組み、会員の意識改革や協会としての体質改善に努めようと考えています。その一環として、すでに2007年から相談事業を立ち上げ、准看護師などの資格を持つオストメイトが電話、FAX、メール、訪問などの相談に対応しています。また、オストミービジターを養成し、手術後のオストメイトを訪問するという事業も手がけ、さらにがん治療拠点病院などにオストメイトサロンを設ける構想も温めています。

国際活動にも取り組んでおり、国際オストミー協会の「2カ国間友愛支援計画」の一環として、2006年よりモンゴルオストミー協会を支援してきました。私たちは欧米の知識と技術に助けられてきたので、今度は、それをオストメイト対策の遅れているアジア地域へ普及させるべきだと考えており、こうした活動は若い世代にもぜひ引き継いでほしいと期待しています。

より広い視野でオストメイトが安心して暮らせる社会を目指す

私は、オストミー協会が提供できる最も大きなメリットは、「絆」だと考えています。知識や情報が得られることや、福祉施策の充実ももちろん重要ですが、オストメイト同士、お互いに理解し合い、助け合って安心して生活ができることは何よりも大切ではないかと思うのです。

最近、障がい者を社会全体で支えていこうという発想が希薄になり、弱者を切り捨てていくような発想になってきていると感じています。だから障がい者団体も大きな声を出すべきだという風潮もありますが、私たちは、いかに社会の中で生かされているかという謙虚な気持ちを持ちながら、社会の理解を得て活動していくことが原点だと考えています。まず個人の自助努力、次に会員同士で助け合う共助、それを補うために国や行政による公助を求めるというのが私たちの基本的な考え方です。

2005年には、より広い視点から活動を充実させていくために、日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会、日本ストーマ用品協会と共に日本ストーマ連絡協議会を設立しました。今後は排泄障がい全般に関わる団体とも連携して、オストメイトだけでなく、さらに幅広い枠組みの中で活動を展開し、オストメイトや排泄障がいを持つ人が安心して暮らせる社会を目指していきたいと思います。

主な活動

■医療講演会、講習会、相談会、補装具展示会、全国大会などの開催
■電話相談、相談支援活動
■会報の発行、ホームページ公開、刊行物の発行
■関連情報の収集、各種調査研究、オストメイト生活実態調査
■国・地方自治体に対するオストメイト福祉施策の改善要望
■障がい者団体・関連団体との連携
■IOA(国際オストミー協会)、AOA(アジア オストミー協会)との交流
■国際的支援活動

組織の概要

社団法人 日本オストミー協会
■設立 
 1969年 患者団体として「互療会」設立
 1989年 社団法人日本オストミー協会として法人設立
■会員数:約11,000名