CLOSE

このサイトは、ファイザー株式会社が社会貢献活動として発行しております『まねきねこ』の情報誌のウェブ版であり、個別の疾患の相談は受け付けておりません。
該当する患者団体などをご紹介することは可能です。

お問い合わせはこちら

※メーラーが起動します。

日本マルファン協会

日本マルファン協会

代表理事 猪井佳子

日本マルファン協会は、稀少難病であるマルファン症候群の方々を支援する組織です。病状が多岐にわたり、命に関わる重い症状が出るまで気づかないというケースもあり、患者・家族はもちろん一般の人々にも幅広く啓発活動を行っています。「情報は命を救う」「情報は生きる支え」を基本理念に活動する日本マルファン協会の代表理事、猪井佳子さんにお話をうかがいました。

活動の状況
症状が出る場所や症状そのもの、発症年齢に個人差の大きい遺伝疾患

マルファン症候群とは、先天性の遺伝子疾患で、細胞をつなぐ結合組織に障がいを有し、骨格、目、心臓、血管、肺などに症状が出ます。どの部位に症状が出るか、またその出方や程度は個人差が大きく、発症する時期もさまざまです。私の場合も娘がマルファン症候群だと診断されたことで検査を受け、自分自身もこの病気であると知りました。それまで特に身体に異変もなく、病名も全く知りませんでした。自覚症状がないこともあるというのがこの病気の怖さで、心臓血管系に突然症状が現れ、大動脈瘤や大動脈解離など重篤な症状となり、緊急手術を受けることになったり命を落としたりすることもあります。日本では1万2千〜2万5千人程度の患者がいると言われ、そのうち75%は親からの遺伝、25%の人は突然変異としてどの家庭からも生まれる可能性があります。

患者・家族以外でも入会できる開かれた会を目指して設立

日本マルファン協会の設立は2007年。患者・家族の会から活動対象を広げ、より社会に開かれた活動を積極的に行うために独立し、NPO法人としました。会の目的に賛同する人なら当事者でなくても正会員として入会でき、会の運営や活動に参加できます。友の会会員は患者と家族のための会員区分で、相互に交流や情報交換をする友の会「マルファンフレンズ」に所属しています。

2009年には待望の事務局を愛知県難病団体連合会内に置くことができました。

病気について知ることで、守られる命と生活

活動内容では特に啓発活動に力を入れています。昨年は東京・大阪・名古屋・広島・仙台の5カ所で各2回、市民勉強会「寺子屋マルファン」を開催。会員だけでなく一般の人も参加できるようにしています。インターネットで調べたら心当たりがあるという人、家族に病歴があり不安を抱えている人、その他、勤務する施設に患者がいるからと参加される医療関係者もいます。私たちは、さまざまな人に門戸を広げておくことが大切だと思い活動しています。

私たちが言うのも不思議かもしれませんが、マルファン症候群という病気を説明するのはとても難しいのです。症状は循環器科、整形外科、眼科、皮膚科などいろいろな診療科にわたって出てきます。今は症状のない人でも年齢を経ると発症する可能性もあります。勉強会では医師に監修していただいたテキスト『おしえて!マルファン入門編』を使い、どこにどんな症状が出るのか伝えます。発症のリスクがあることを知っていれば対処の仕方があります。定期検査を受けていれば、とりあえず命の危険は防げるはずだと。心臓弁や血管の手術も重篤な事態を引き起こす前に受けられるようになりました。会の理念にもあるように、マルファン症候群にとって「情報は命を救う」「情報は生きる支え」なのです。

『患者と作る医学の教科書』が認知度を高める力強いツールに

広報ツールはホームページと、月に1〜2回のメールマガジンがメインです。『おしえて!マルファン』は『入門編』に続いて、『生活編』を現在制作中です。そして、ヘルスケア関連団体ネットワーキングの会に参加して3年目ですが、2009年には『患者と作る医学の教科書』の執筆にも参加させていただきました。会員にアンケートを取り、これまで蓄積してきた声をもとにまとめていったのですが、私自身とてもいい勉強になりました。また、マルファン症候群という病気を認知してもらうための力強いツールになったと感謝しています。

ヘルスケア関連団体ネットワーキングの会にかかわって以来、年々、気持ちが軽くなっています。疾患は違っても同じ悩みがあることを知り、いろいろな解決方法があることもわかり、反省する点や、また私たちの協会が目指すところが間違っていないことを確認することもできました。

遺伝病へのイメージを変えていく活動を幅広く展開していきたい

協会としては今後、行政に働きかけていくことが大きな柱です。2009年には厚生労働省の難病対策が拡充され、研究奨励部門にマルファン症候群が選定されました。これまでマルファン症候群の診断基準は西洋人の身体基準をもとにしたものしかなく、日本人には必ずしも当てはまるとは限りませんでした。研究奨励部門に入ったことで、現在東京大学の研究班が日本人の診断基準の作成に取り組んでいます。この一歩は本当にうれしかったですね。また、関連団体や、症状のよく似た疾患団体と連携し、共同で要望書を提出する運動も行っています。

遺伝病に対する社会のイメージを変えていくことも今後の展望です。遺伝病だからと病名を隠すことで対処が遅れたり、親は自分のせいで子どもが病気になったと悲しく思い、子どもが親の態度に影響を受けたりしてしまうケースもあります。今、助成金をいただき『親が変われば子が変わる』という遺伝をテーマとした事業をしています。

遺伝性疾患の親子にアンケートを実施し、両方の立場の声を集めた冊子と、簡単なワークブックを作成し、『寺子屋でんでん』という勉強会を開催しています。 今後もマルファン症候群と遺伝病全体を取り巻く環境改善を目指して、幅広い活動を展開していきたいと考えています。

主な活動

■一般向けの勉強会・医療講演会・シンポジウムの開催
■情報の収集と提供、ホームページ公開、刊行物の発行
■地域交流会の開催
■医療機関や行政への働きかけ、類似疾患団体との協働

組織の概要

NPO法人 日本マルファン協会
■設立 
 2007年 NPO法人 日本マルファン協会として法人設立
 2009年 愛知県難病団体連合会内に事務局開設
■会員数:約105名