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このサイトは、ファイザー株式会社が社会貢献活動として発行しております『まねきねこ』の情報誌のウェブ版であり、個別の疾患の相談は受け付けておりません。
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姫路しらさぎアイアイ会

姫路しらさぎアイアイ会

会長 高瀬 静嗣 氏

兵庫県西部の姫路市を中心に活動する姫路しらさぎアイアイ会は、網膜色素変性症などの視覚障がいの患者団体として2001年に発足しました。毎月の交流会や各種教室を開催し、医療やQOL(生活の質)を高めるさまざまな情報を発信。見えない・見えにくい人が毎日を安全に、安心・充実の生活が送れることを目指して、活動を行っています。会長の高瀬静嗣さんにお話をうかがいました。

活動の状況
見えない・見えにくいからこそ地域密着の活動が大切

網膜色素変性症は、網膜の機能が徐々に退化していき、夜盲症・視野狭窄などの視覚障がいを引き起こす進行性の難病で、失明に至ることもあります。特定疾患治療研究事業対象に認定されており、現在、患者数は国内に約3万人以上といわれます。予防、治療法はありません。一般的には高校生くらいの年齢で、暗い場所で見えづらくなる夜盲症が現れ、視力や色覚の低下、視野狭窄の症状が進んでいきます。病気の進行速度も症状も非常に個人差があり、視野狭窄でも外側/内側から見えにくくなる、ドーナツ状にものが欠けて見えるなど、千差万別です。

姫路しらさぎアイアイ会(以下、しらさぎアイアイ会)は、全国組織の日本網膜色素変性症協会兵庫県支部とは別のグループとして、姫路で設立されました。支部のある神戸市まで、姫路市からは電車で1時間近くかかり、視力障がい者にとっては会議や催しに参加する苦労がありました。そこで姫路市を中心とする兵庫県西部地域で交流会や情報交換を行っていこうと団体を結成。網膜色素変性症以外に緑内障や糖尿病性網膜症などの患者とその家族を会員にむかえ、見えない・見えにくいことで悩んでいる人の交流支援を行っています。団体名にある「しらさぎ」は世界遺産でもある国宝、姫路城の別名“白鷺城”にちなんでいます。

QOLの向上によって人生を楽しむ交流会や教室を企画

毎月1回、定期交流会を行い、おしゃべり会や情報交換の場、講座や講演会を開催しています。携帯電話活用説明会、視覚障がい老人ホームの訪問、防災センター見学や施設内での体験、一泊旅行と、内容も盛りだくさんです。昨年、女性会員の提案から実現した「化粧講座」も盛況でした。化粧品メーカーの美容部員を講師に招き、眉の描き方や口紅の塗り方などの工夫やコツを教わるというもので、説明書もすべて点字で作成しました。私は見学していましたが、みなさん夢中でお化粧をなさっていました(笑)。パソコン、点字、ダンス、料理、スポーツの太極柔力球の各種教室も月1〜2回、定期開催しています。交流会も教室も、役員が視覚障がいのある人ならではの悩みやニーズに応える企画を立てて実施。会員自身が講師をしたり、行事ごとに運営担当者を決め、活発に活動しています。

ロービジョンケアの情報発信が患者団体の大きな役割

2006年に開発されたips細胞(人工多機能幹細胞)は、私たちの疾患にも一筋の光明をもたらしてくれました。2013年からは臨床研究も始まる予定です。その他にも、人工眼や電子眼鏡などの研究が進み、会員もモニターとして参加協力しています。しかしながら、医療面では実用化までにまだまだ長い年月がかかるでしょう。

患者が今、保持している視機能(視力・視野・色覚)を最大限に活用し、自立して快適な生活を送れるように支援する医療や福祉のことを、ロービジョンケアといいます。残念なことに、医療従事者も行政もこのロービジョンケアの情報を提供しきれていないのが実情です。 私は50歳で網膜色素変性症と診断され、医師からは効果的な薬はない、手術方法もない、いつ失明するのかもわからないと言われました。先天性ではなく中途で視覚障がい者になると非常に不安です。その時点で、生活を維持していくための情報や施設、同じ病気の患者団体などを紹介してもらえると、1歩前に進めるのです。54歳で仕事をやめた時にも、失業保険や障害者年金の手続きに大変苦労した経験があります。

患者団体の大きな役割は、そのようなロービジョンケアの情報を提供していくことです。遮光レンズや拡大読書機、音声対応パソコンや携帯電話などの補助機器、またインターネットの普及でメールのやりとりが可能になり、全国の点字図書館の書籍もパソコンで受信できたり、貸出し依頼をして、音声ソフトで読み上げてくれます。ここ10年でさまざまな機器やシステムが開発され、本当に便利になりました。たとえば歩行訓練ができる施設や行政サービスをはじめとする制度の活用法なども、大切な情報です。情報を知っていてまだ活用していないのと、知らなくて活用できないのとでは、大きな違いがあります。しらさぎアイアイ会では会員が常に情報を集めて精査し、交流会やメーリングリストで積極的に発信・共有しています。

ボランティア・ヘルパーの育成に取り組んでいきたい

2011年から健常者によるボランティア・ヘルパーの育成に取り組んでいます。まず歩行補助など、正しい知識を持っていなければ、視覚障がい者もヘルパーさんも不安です。3月には視覚障がい者訓練の指導員をボランティア講師として招き、歩行訓練などのサポート研修を行いました。現在、8名の方が参加・登録されています。最初の1年間は会の催しに参加していただいて徐々に慣れてもらい、その後は必要時個人的に会員が依頼できるようになればと思います。将来的には非会員の方も利用できるように発展させていきたいですね。

しらさぎアイアイ会として常にアピールしているのは、白杖を持っている人の中には、目の見えない人だけではなく、見えにくい人もいるということを知ってほしい。そういう人を見かけたら、「お手伝いしましょうか」と一声かけてほしいということです。これは非常に助かります。横断歩道で私たちは青か赤かの判断ができないのです。また「ここ・そこ・あそこ」「あっち・こっち・そっち」と言われてもわからないので、「時計の針で2時の方向」というように、具体的に示していただけるとうれしいです。これからも視力障がい者への支援と社会の理解が深まるよう、活動を続けていきたい思っています。

主な活動

■定期交流会の開催
■各種教室の開催
■兵庫県立「福祉のまちづくり 研究所」への研究・開発協力
■ボランティア・ヘルパーの育成

組織の概要

姫路しらさぎアイアイ会
■設立:2001年1月
■会員数:46名