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NPO法人 パンキャン ジャパン

NPO法人 パンキャン ジャパン

理事長 眞島 喜幸 氏

NPO法人 パンキャン ジャパン(以下、パンキャン ジャパン)は、アメリカのすい臓がん患者支援団体、PanCAN※の日本支部です。すい臓がんは、主要ながんの中で最も生存率の向上が望まれるがんで、日本では治療の選択肢が少ないことも問題となっています。こうした状況の中で、すい臓がんの患者・家族のサポートやがん撲滅のための研究支援を目的として設立されたのが、パンキャン ジャパンです。 日本国内にとどまらず国際的な視点を持ち、また医療関係者や、他の患者団体とも連携するなど、広がりのある活動を続けるパンキャン ジャパンについて、理事長の眞島喜幸さんにお話を伺いました。

※PanCAN:Pancreatic Cancer Action Network

活動の状況
アメリカのすい臓がん患者支援団体の日本支部として誕生

すい臓がんは、難治性のがんの中でも生存率が低く、予後が改善していないがんの一つで、日本国内では年間約3万人を超える方が発症し、約3万人近い患者さんが亡くなっています。早期発見が困難である上に進行が早く、研究や治療に取り組む専門家も、治療の選択肢も少ないのが実情です。

私は、2004年に妹がすい臓がんと告知され、海外のものを含めて役立つ情報を探したところ、全米有数のすい臓がん患者支援団体であるNPO、PanCANを知り、参考になる情報を集めることができました。PanCANは、すい臓がん撲滅のための積極的な研究活動の支援や、すい臓がん患者・医療従事者向けのシンポジウムの開催などを行い、その活動はアメリカのすい臓がんコミュニティにおいて高く評価されています。妹は闘病の末に亡くなりましたが、日本にもPanCANのような団体があるべきだと考え、PanCAN本部に相談し、2006年に日本支部としてパンキャン ジャパンを立ち上げました。

私たちは、日本のすい臓がん医療を少しでもより良い、より納得のいく、より満足度の高いものとしたいと考えています。そのために、PanCAN本部と連携しながら、国内外の医療関係者、行政関係者、関連企業、他の患者支援団体と協力して、早期発見のツールや根治療法を開発するための研究支援、安心して治療が受けられるようにするための患者・家族のサポート、患者・家族に希望を与えるためのすい臓がん啓発などの活動を行っています。

国際標準治療薬を日本でも使えるようにドラッグ・ラグ解消に取り組む

今までの代表的な活動としては、国際標準治療薬を日本でも使えるようにするための、抗がん剤のドラッグ・ラグ問題を解消する取り組みがあります。現在、がん患者を支える抗がん剤は欧米で開発されたものが多く、日本で承認を受けて使えるようになるまでに時差が生じ、ドラッグ・ラグと言われる問題が起こっています。すい臓がんの場合、アメリカでは10種類の抗がん剤が使われていますが、日本では保険適用された薬が僅か2種類という時期が長く続いてきたのです。抗がん剤治療では選択肢となり得る多種類の薬が必要で、使える薬が少ないと、適切な治療が受けられない“がん難民”になってしまうという切実な問題があります。そこで、抗がん剤の早期承認を求めて、他のがん患者団体の協力も得ながら署名運動を行い、厚生労働省に訴えた結果、2011年にようやく3つ目の抗がん剤が承認され、2013年には4つ目の抗がん剤が承認されました。現在は、アメリカで使用されている残りの薬剤の承認を要望しているところです。

また、すい臓がんの社会啓発にも取り組んでいます。全国各地で、医療関係者の協力を得ながら、早期診断・治療、疫学的予防法、標準治療、臨床研究などへの理解を深める医療セミナーやシンポジウムを開催しています。この取り組みでは、各地域の患者さんとすい臓がん専門医をつなぐことや、地域で患者さんや家族が孤立しないためのネットワークづくりも目指しています。またアメリカでの活動に連動して、2009年からすい臓がん撲滅を目指す「パープルリボン運動」をスタートさせました。パープルリボンはすい臓がん撲滅のシンボルで、乳がんのピンクリボン運動のように一般社会にも浸透させていきたいと考え、患者や家族が行進してすい臓がん撲滅をアピールする 「パープルリボンキャラバン」も行っています。

研究支援や他の患者団体との連携も行う

ところで、日本ではすい臓がんが増加傾向にあります。がんは遺伝子の異常から生まれ、加齢とともに罹患率が高くなる病気ですから、高齢化が進むにつれて増えてきているのです。また血糖値が高い人や、高脂血症で悩む人が増えてきていますが、どちらもすい臓に関連するので、潜在的なすい臓がん予備軍が増えていると言われています。しかし、欧米に比べて我が国では、研究者がすい臓がんに特化して研究に専念できるような環境の整備が遅れています。私たちは医療者や研究者に対する支援を行うとともに、がん研究に対する予算全体を増額することや、臨床試験の情報へのアクセスを改善して臨床試験への参加者数を増やし、研究を促進することを国に訴えています。

また、すい臓がんの一つに膵内分泌腫瘍(p-NET)というものがあります。スティーブ・ジョブズが罹ったことで一躍有名になりましたが、患者の極めて少ない希少がんの一つで、専門医も少なく、正しく診断されるまでに平均5年もかかると言われ、正しい治療が受けられないまま進行し、他の臓器へ転移するケースも多いがんです。こうした状況を打開するために、医療者によるp-NET研究会が形成され、主要都市では患者会も始まりましたので、パンキャン ジャパンとしても支援しています。 また同じように難治性がんである胆道がんについても、すい臓がんの専門医が胆道がんの患者さんを診ることも多いことから協力を依頼され、「日本胆道がん患者会」と医療セミナーを共催しました。胆道がんは「アジアンディジーズ(アジア特有の疾患)」と言われ、アジアでの発現が多い一方、欧米には少ないがんであり、日本の研究者がリーダーシップをとって抗がん剤の開発に取り組んでほしい疾患です。

日本はがん患者が多いにもかかわらず、抗がん剤のほとんどは欧米からの輸入品です。すい臓がんだけでなく、日本のがん研究全体を進めて患者を助けてほしいという思いから、他のがんの患者団体と連携した活動にも積極的に取り組んでいます。

今後は、サバイバーとともに患者さんに希望を与える活動に注力

ドラッグ・ラグの問題が社会的にも注目され、国も前向きに取り組むようになり、この3年ほどの間にすい臓がんを取り巻く環境は、少しずつ変わってきた印象があります。薬の承認にかかわるPMDA(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)の対応も迅速になり、少し希望が見えてきた気がしています。患者・家族の側でも、国や社会に働きかける意義を理解し、積極的に活動に参加する人が増えてきました。今後は、国のがん対策推進計画の次の5カ年計画に、すい臓がんを筆頭とする難治性がんとp-NETのような希少がんの対策として実効性のある計画を組み込んでもらうために活動していきたいと考えています。

世界では、希少がんの患者団体や研究会が次々と立ち上がっており、世界的な規模で治験を行う動きもあります。パンキャン ジャパンとしては、アメリカの団体の支部というメリットを活かし、海外のものを含めた最新情報を提供するとともに、国や、病気の垣根を越えた広がりのある活動を行っていきたいと考えています。 そして、私が特に力を入れたいのは、患者に希望を持ってもらうことです。諦めないで前向きな気持ちになることが、治療の上でも大切です。これについては情報提供のみならず、すい臓がんのサバイバーの方が少しずつ増えていますので、その体験談やストーリーを伝えることによって患者・家族の皆さんに希望を持ってほしいと考えています。医療セミナーなどのイベントの最後には、「サバイバーフォトセッション」として、患者さんを囲んでの記念撮影を行っています。サバイバーがもっと増えていくことを願いながら活動を続けていきたいと思います。

組織の概要

■PanCAN(Pancreatic Cancer Action Network)の日本支部
■設 立 2006年
■会員数 約380人

主な活動

■研究者・医療者に向けて、がん研究や家族性膵がん登録システムの支援、研究シンポジウム資料の提供
■患者・家族に向けて、ウェブサイト、ブックレット、電話相談、シンポジウム・セミナー、相談会・勉強会を通して最新情報を提供
■パープルリボン運動
■政策提言活動