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このサイトは、ファイザー株式会社が社会貢献活動として発行しております『まねきねこ』の情報誌のウェブ版であり、個別の疾患の相談は受け付けておりません。
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NPO法人 沖縄県脊髄損傷者協会

NPO法人 沖縄県脊髄損傷者協会

脊髄損傷とは疾病や事故などで脊椎を損壊し、脊髄に損傷を受けた病態です。下半身麻痺の車いすユーザーから首下麻痺の高位頸髄損傷の人など損傷の箇所と度合いにより症状はさまざまで、回復させる治療法はないそうです。沖縄県脊髄損傷者協会はそのような脊髄損傷者が地域で自立でき、誰もが安心して住める町づくりを目指して1984年に発足、2024年には40周年を迎えます。近年はITツールを使ったコミュニケーションやテレワークなどのデジタル活用推進事業に注力する団体の取り組みについて、理事長の仲根建作さんにお話を伺いました。

全国組織の支部と沖縄独自の組織を同時に設立

NPO法人 沖縄県脊髄損傷者協会<br>理事長 仲根 建作 さん NPO法人 沖縄県脊髄損傷者協会
理事長 仲根 建作 さん
沖縄県脊髄損傷者協会(以下、沖脊協)の始まりは1984年に全国組織である現在の公益社団法人全国脊髄損傷者連合会(以下、全脊連)の沖縄県支部を設置したいという動きからでした。ただ地元での活動を重視すると、全国組織の支部より、地元の自治体・関連機関との連携や財源の確保など、沖縄独自の団体が必要であるという見識から、結果的に全脊連の沖縄県支部と沖脊協の2つの組織が同時に発足することになりました。代表や役員は今も同一のメンバーです。

ご自宅を訪問してITピアサポート ご自宅を訪問してITピアサポート 特徴としては正会員の会費はすべて支部会費として全脊連の本部に納めていることです。沖脊協自体の運営は会費に頼らず、民間からの寄付金や赤い羽根共同募金などの各種助成金、賛助会員の会費収入、委託事業の収益などで賄い、行政の障害者社会活動推進事業にも毎年申請し、積極的な資金調達を行っています。

県からの委託を受け「沖縄県障がい者ITサポートセンター」を開設

沖脊協では2018年から沖縄県からの委託事業として「沖縄県障がい者ITサポートセンター」を受託しています。ICT(情報コミュニケーション技術)を通じて障がいのある人の社会参加や情報バリアフリーを推進するのが目的で、「ITに関する相談」「講習会・セミナー」「情報支援機器の体験・貸出」「テレワーク(在宅就労)」が主な事業です。相談や情報提供では、たとえば「手が不自由でもパソコンを使いたい」「スイッチや入力を補助する装置はどんなものがあるのか」「パソコンやソフトを購入する時の助成制度を教えてほしい」などのさまざまな質問に対応しています。情報支援機器の展示・体験コーナーを設置し、見て触れて、そして使ってみて自分に合った適切な支援機器の選択につながるように支援しています。

コロナ禍の前からデジタル活用推進事業を構想

『しゃりん』は隔月発行。<br>会員の活躍や、関連する情報を掲載している 『しゃりん』は隔月発行。
会員の活躍や、関連する情報を掲載している
広報誌『しゃりん』を隔月で発行していますが、紙媒体からデジタル配信にすることにより送料分の経費やスタッフの手間を軽減できると、コロナ禍になる前から構想していました。また、インターネットでのマイナンバーカードの申請方法の相談も増えており、それを説明するには電話やメールでは難しいのでマンツーマンで説明しようと判断し、2021年にデジタル活用推進事業を立ち上げました。本部の全脊連を通して日本損害保険協会の助成金に申請、1日4時間で6ヶ月間、有償で働くITのプロフェッショナルを1名、デジタル支援員として雇用することができました。支援員は短期集中で人口の多い沖縄県中部の沖縄市や浦添市、宜野湾市を担当して会員宅を訪問。同時に「沖縄県障がい者ITサポートセンター」のスタッフ7名も本島内での訪問活動を行い、パソコン環境の整備やメール、LINEの使い方、ZOOMなどのネットワーク化支援などの指導を行いました。

その結果、会員88名の中でメールでつながれるようになった会員が30名から62名に増え、グループLINEを使用する会員も39名となりました。
また、ZOOMを使ったオンラインでの意見交換会も増えました。

広報誌の郵送は関係機関も含め350件あったものを185件に減らすことで、協会としての情報発信が格段にしやすくなりました。それでもデジタルでつながれない会員には紙媒体で郵送しています。急速にデジタル化を進めることに拒否反応を示す人も出ていますので、そのような会員をフォローすることも大切だと考えています・

スポーツでの交流をスポーツクラブと連携しサポート

新年交流会(2018年)。ホテルで開催 新年交流会(2018年)。ホテルで開催 バスケット、マラソン、アーチェリーやテニスなど、さまざまなスポーツが車いすでも楽しめるようになりました。沖脊協にはスポーツをする会員が多く、県内のスポーツクラブとの連携が強いのが特徴です。たとえば、沖脊協のピアサポーターが会員を車いすバスケットの見学に連れて行ったり、どの競技のクラブがいつ、どんなことに取り組んでいるかなどをホームページの動画(YouTube)でもアップしています。障がい者スポーツとの連携を図っていくのは社会参画の大きな要素と考え、さまざまなサポートや情報提供を行っています。

抱負は介護サービスのホームヘルパー事業への参入

私は社会福祉協議会に長く勤務していたことで助成金などの申請事業にも精通していたため、どうしても理事長としての私の判断で団体運営をしてきたというのが正直なところです。役員は現在10名いますが、近々、理事長を辞任して役員全体で役割分担をする、後継者へのバトンタッチに取り組んでいるところです。事業規模が拡大しているのでチーム運営でのガバナンス体制を整えていこうと考えています。

新たな取り組みとしては介護サービスのホームヘルパー事業への参入があります。ニーズは車いすユーザーが中心ですが、さらに幅を広げて障がい者に特化したホームヘルパーを沖脊協で確保し派遣していくという事業です。介護ニーズの高まりやグループホームなどの居場所を求めるニーズも高まっています。褥瘡や排泄の悩みなど、脊髄損傷の当事者だからこそわかる介護サービスの提供を目指して、事業を展開していきたいと考えています。

NPO法人 沖縄県脊髄損傷者協会
組織の概要
■ 設立年 1984年(2013年2月NPO法人に改組)
■ 会員数 88名(2023年1月現在)

活動内容
■ 広報誌『しゃりん』発行(年6回)
■ 相談・援助活動
■ スポーツ・交流会情報の発信
■ 沖縄県の「沖縄県障がい者ITサポート事業」を受託
■ 社会参加を支援する冊子『脊損サポート情報』の発行
■ 就労継続支援A型事業所
「障がい者ITサポートおきなわ」の運営