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NPO法人 筋痛性脳脊髄炎の会(ME/CFSの会)

NPO法人 筋痛性脳脊髄炎の会(ME/CFSの会)

NPO法人 筋痛性脳脊髄炎の会<br>(ME/CFSの会)<br>理事長 篠原 三恵子 さん NPO法人 筋痛性脳脊髄炎の会
(ME/CFSの会)
理事長 篠原 三恵子 さん
筋痛性脳脊髄炎(ME※1)は、脳と中枢神経に影響を及ぼす神経免疫系の難病で、機能障害は全身に及び、患者の生活の質を著しく低下させる重篤な疾患です。WHOは神経系疾患と分類していますが、日本では慢性疲労症候群(CFS※2)と呼ばれてきました。最近では自己免疫疾患であることを示唆する論文が多く発表されており、間もなく治療薬の治験も始まろうとしています。多くの患者がウイルス感染後に発症することで知られ、新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(コロナ後遺症)との関連も注目されています。病気の正しい認知を広め、研究促進や社会保障の充実を目指して活動する「NPO法人 筋痛性脳脊髄炎の会」について、理事長の篠原三恵子さんにお話を伺いました。

※1 ME:Myalgic Encephalomyelitis
※2 CFS:Chronic Fatigue Syndrome

社会生活が困難になる神経免疫系の難病

筋痛性脳脊髄炎(ME)は、日本では慢性疲労症候群(CFS)と呼ばれてきましたが、『疲労』という言葉から、この病気の深刻さの理解が妨げられ偏見が助長される恐れがあり、近年では国内外でも筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(以下、ME/CFS)と両名併記することが一般的です。

ME/CFSは、脳と中枢神経に影響を及ぼす重篤な疾患で、軽い身体的・知的活動などによってさえ急激に体が衰弱し、回復に非常に時間がかかる労作後の消耗(PEM)と呼ばれる症状が特徴です。他に、睡眠障害、頭痛・筋肉痛、思考力・集中力低下、筋力低下、起立不耐性、体温調節障害、光・音・食物・化学物質等への過敏性などの症状が持続し、社会生活を送るのが困難になります。篠原さんは1990年、アメリカ留学中にME/CFSを発症しました。それまで健康であったのに、起き上がることもできない日々が続き、いっぺんにさまざまな症状があらわれ、生活が激変しました。

疾病啓発や情報提供に取り組む

筋痛性脳脊髄炎の<br>会製作のドキュメンタリー映画 <br>「この手に希望を<br>~ ME/CFSの真実~」 筋痛性脳脊髄炎の
会製作のドキュメンタリー映画
「この手に希望を
~ ME/CFSの真実~」
ME/CFSは専門家も少なく、詳しい病態は未だ不明な病気です。一般の検査では異常が検出できず、指定難病や障害者総合支援法の対象疾患にもなっていません。患者たちは社会の無理解と偏見に苦しみ、社会保障を受ける道も閉ざされてきました。この現状を打開し、安心して治療を受けられ、希望をもって生きていくことができる環境をつくっていきたいと考えて、2010年2月に任意団体「慢性疲労症候群をともに考える会」を立ち上げ、その後、活動の充実を目指して2012年6月に「NPO法人 筋痛性脳脊髄炎の会」になったそうです。活動としては、病気の実態を描いたドキュメンタリー映画の製作や上映会開催、医療講演会やシンポジウム、患者の交流会などを行ってきました。また世界的に信頼されている診断基準や最新の海外の情報を翻訳して小冊子を発行し、ホームページに掲載することを通じて、病気の啓発にも取り組んできました。医療制度や社会保障制度の確立と充実を求めて、国や地方自治体への働きかけも行ってきました。ネットワークを広げるために日本障害者協議会(JD)やME国際同盟(World ME Alliance)にも参加しています。

2016年10月<br>国際学術シンポジウム 2016年10月
国際学術シンポジウム
また、神経難病の専門家である神経内科医による研究開始を願い、医師や日本神経学会にも働きかけを続けた結果、2015年に国立精神・神経医療研究センター(NCNP)神経研究所において研究が始まりました。2016年10月には国内外のME/CFSの研究者を招いて、同法人主催で国際学術シンポジウムを開催しました。

コロナ後遺症との関連が注目される

小冊子『新型コロナ後遺症と<br>筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群』 小冊子『新型コロナ後遺症と
筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群』
ME/CFSは、歴史的にウイルス性疾患の流行後に集団発生が起きており、患者の大多数はウイルス感染が引き金となり発症していることから、海外では2020年春頃より多くの専門家が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を引き金にME/CFSが多発する可能性を警告してきました

同法人では、2020年5月に厚生労働省にCOVID-19とME/CFSの研究を要望するとともに、アンケート調査を行い、日本におけるCOVID-19を契機としたME/CFSの発症を確認しました。2022年12月に改正された感染症法の参議院の附帯決議には、衆参両院で採択された同法人の請願項目「COVID-19後にME/CFSを発症する可能性を調べる実態調査、並びにCOVID-19とME/CFSに焦点を絞った研究を神経免疫の専門家を中心に開始する体制整備」が盛り込まれましたが、未だに関連する研究費は認められていません。2014年に行われた厚生労働省による実態調査では、寝たきりに近い重症患者が約3割もいるという深刻な実態が明らかになっています。当時の推定患者数は約10万人でしたが、最近、長期に及ぶコロナ後遺症患者の約半数はME/CFSの診断基準を満たすとする論文や報道が海外で相次いでおり、かなり増えている可能性があります。ところが、日本では報道も少なく、理解や対策が進んでいないことを同法人は危惧しています。

治験が始まることを希望として

同法人は、患者が医療関係者や周囲の方から理解を得られ、必要な医療や福祉サービスを受け、希望をもって生きられる環境をつくることを目指してきました。患者さんの中には経管栄養だけでかろうじて命をつないでいる重症の方もおり、体が衰弱して病院以外どこも行かれない方も多く、とても孤独な闘病を続けています。篠原さん自身、何週間も電話やメールのやり取りすらできないこともあり、当事者として活動していくことに大きな困難を感じています。

しかし、間もなく日本においてME/CFSに対する治療薬の治験が開始されます。ME/CFSは世界的に治療法が確立されておらず、海外での治験が製薬業界の資金援助を受けられずに頓挫したこともあり、日本で製薬会社の協力のもとに治験が実現することは、世界中の患者たちにも大きな希望となるはずです。患者が何よりも望んでいるのは、体調が改善して少しでも社会生活に戻れるようになることだからです。患者を取り巻く環境はまだまだ厳しい状況ですが、「ようやく治験が始まることを希望として、活動を続けていきたい」と篠原さんは語りました。

NPO法人 筋痛性脳脊髄炎の会(ME/CFSの会)
組織の概要
■ 設立年 2012年
■ 会員数 450名

活動内容
■ 患者の実態調査と、実態に基づいた医療と社会保障を求める事業
■ 国内外の資料収集と調査研究
■ 認知を広める広報、啓発教材の開発と普及
■ 患者相互の交流・支援、国内外の個人・団体との交流とネットワークの構築
■ 機関紙発行とホームページの運営