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このサイトは、ファイザー株式会社が社会貢献活動として発行しております『まねきねこ』の情報誌のウェブ版であり、個別の疾患の相談は受け付けておりません。
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難病サポーターズクラブ JAPAN

難病サポーターズクラブ JAPAN

難病患者の就労支援にいち早く取り組み、実績を上げてきたNPO法人 佐賀県難病支援ネットワーク。行政、市民ボランティアとの協働の中から2013年5月、新たに「難病サポーターズクラブ JAPAN」が発足しました。難病の普及啓発、就労支援を地域ぐるみで支援するネットワークづくりに取り組んでいます。

ヘルスケア関連団体の視点

病名を明かしても地域で働ける環境づくりを目指して
NPO法人 佐賀県難病支援ネットワーク
理事長 三原 睦子 さん

NPO法人 佐賀県難病支援ネットワーク(以下、佐賀ネットワーク)は、2004年から佐賀県の委託事業として佐賀県難病相談・支援センターを運営しています。設立当初、1割程度だった就労相談が、2011年には年間相談件数の約3割(全体5000件中1500件)を占めるようになってきました。これまでも労働局やハローワーク、障害者職業センターなど多数の機関と連携・協力し就労支援を行ってきたのですが、その中で雇用する側からの「難病患者さんにどのような配慮が必要かわかりにくい」という声が多くありました。それらを解決するために、企業訪問の際に就労支援をアピールするツールを作りたいと思いました。私たちはそういった製作物を作るのは得意ではないので、プロボノ(下記参照)派遣に応募したところ採択されました。それが下田さんや福田さんたち、プロボノワーカー5名との出会いです。

彼らは熱心に難病、難病患者・家族の声、制度や就労支援の現状などについてのヒアリングを受け、パソコンを使ってツールを製作してくれました。普通ならそこでプロボノの仕事は終了なのですが、彼らは私たちが立ち上げようとしていた、難病患者の就労、難病の普及啓発およびネットワークづくりを行う団体の立ち上げ・運営にもかかわってくれることになり、2013年5月に「難病サポーターズクラブ JAPAN」(以下、サポーターズクラブ)が発足しました。約半年の活動で、趣旨に賛同し就労を受け入れてくれる事業所を含む53の団体会員、約90名の個人会員の加入がありました。

難病患者さんの中には病気を隠して就労している人もいて、病状が悪化して途中退職する人や、復職を希望する人からの相談もあります。病名を明かしても地域で働ける環境を整備していきたいというのが大きな目標です。難病相談・支援センターでは企業開拓まで手が回らなかったので、サポーターズクラブ、そして佐賀県の難病患者就労支援事業所の登録制度と並行して、活動を広げていきたいと考えています。

プロボノ(Pro bono)とは?
社会人が自分の持っている専門知識や技能を活かして社会貢献に参加する、アメリカ発祥のボランティア活動。ラテン語の「公共善のために(Pro bono publico)」に由来する。佐賀県では2011年から県民協働事業の一環としてプロボノ登録を呼びかけ、プロボノワーカーの派遣を行っている。

行政の視点

佐賀ネットワークと協働で事業を推進
佐賀県健康福祉本部 健康増進課
副課長 南里 玲子 さん

佐賀ネットワークがサポーターズクラブを立ち上げようと準備をしていた頃、県でも難病患者の就労支援に理解を示している事業所の登録制度を構想していました。そこで、佐賀ネットワーク、プロボノワーカー、健康増進課の方向性がマッチングし、協力していきましょうということになりました。そして、2013年の3月に難病患者就労支援事業所の登録制度がスタートしました。この企業開拓事業を佐賀ネットワークへの委託事業とし、専任の就労支援員を設置。企業訪問時に県への登録とサポーターズクラブへの入会を同時にお願いするような方法を取っています。就労支援事業に登録することは企業のPRにもなるので、佐賀県のホームページで公開しています。また、今後はハローワークとの連携も強めていきたいと思っています。さらに、サポーターズクラブが開催する、難病について当事者や一般市民が語り合うワールドカフェ※形式での集い(以下、ワールドカフェ)やシンポジウムへの参加を呼びかけたり、チラシを窓口に置いたりといったサポートもしています。県としてはサポーターズクラブを含め、佐賀ネットワークと一緒に、難病のある人にもやさしい職場、地域づくりを目指していきたいと思っています。

サポーターズクラブ ボランティアの視点

地域に根づいた活動を続けていきたい
リーダー 下田 寛 さん(鳥栖市議会議員)
サブリーダー 福田 亮一郎 さん

下田さん プロボノで佐賀ネットワークに派遣された時は、難病についての知識はほとんどありませんでした。しかし、ツールを製作していく中で難病患者さんを取り巻く状況や就労の困難さなどがわかってきました。ツールが完成した時点で、これで終わるのでは納得がいかないとメンバー5人が話し合い、三原さんが構想していたサポーターズクラブの結成に参加することになりました。活動の3本柱は難病の普及啓発・ネットワーク構築・就労支援です。

福田さん 私たちがそうであったように、難病について知らない一般市民に普及啓発していこうと、3ヶ月に1回のペースで、ワールドカフェを開催しています。フェイスブック上で、またチラシを作って呼びかけたところ、約30人の参加があり、難病患者さんも含めて「職場で困ったことは?」「働きやすい職場とは?」などのテーマで話し合っています。

下田さん 私は鳥栖市議会議員でもあるのですが、県議会での一般質問で佐賀県知事に「サポーターズクラブをどう思いますか?」と先輩の県会議員に質問してもらったところ、「大いに賛同する。全国に広めていこう」と言っていただきました。活動を始めて難病患者さんからの個別質問がとても増え、それをきっかけにワールドカフェやシンポジウムに参加してくれる人もいます。佐賀県内の多くの地域でワールドカフェを開いていきたいです。地域に根づいた活動が広がっていけば、難病患者の方がもっと住みやすい環境になっていくと思っています。

福田さん 発足して半年たらずですが、ワールドカフェに参加してくれた福岡の人が、福岡市でもサポーターズクラブをと準備会を立ち上げています。難病患者を支援するネットワークの一つしてサポーターズクラブが機能していく。そのモデルケースになることを目標に活動していきたいと思っています。

サポーターズクラブ 会員の視点

ネットワークの広がりに期待
マックスバリュ三日月店 店長 岡 直 さん

現在、難病患者さんを雇用していますが、今後、サポーターズクラブが患者さんと企業をつなぐライフライン、つまり患者さんへの配慮について、いつでも相談できるネットワークになっていってほしいと期待しています。

取材を終えて〜まねきねこの視点

佐賀ネットワークの難病患者就労支援への積極的な取り組みは、これまでにもまねきねこで紹介してきました。就労シンポジウムの開催や就労相談など、行政とも連携しながらの粘り強い活動は取材を通しても実感することができます。今回、熱い思いを持ったボランティアの方々も加わったサポーターズクラブの発足でさらに活動に弾みがつくよう、今後も期待したいと思います。