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斉藤 幸枝さん 一般社団法人 日本難病・疾病団体 協議会(JPA) 常務理事 一般社団法人 全国心臓病の子ども を守る会

斉藤 幸枝さん 一般社団法人 日本難病・疾病団体 協議会(JPA) 常務理事一般社団法人 全国心臓病の子ども を守る会

子どもの心臓病は、その70~80%が先天性心疾患で、その他、川崎病、不整脈や心筋症などがある。重症の場合は生死にかかわるため新生児期に手術が行われる。近年、医療の進展で子どもの心臓手術の成功率は高まり、多くの患児が成人期を迎えるようになったが、子どもから成人への移行期医療が確立されておらず、体調管理や加齢に伴う体調の変化、再手術など医療的な問題のほか、就労や妊娠・出産などさまざまな課題がある。

資料は見やすく。話す時は簡潔・明瞭に

私は、子どもが心臓病であったため「全国心臓病の子どもを守る会」の活動に参加しました。会長や副会長も務めてきたので総会や大会、地域の講演会などで語ることや、団体を代表して製薬企業の研修会での講演、日本小児循環器学会や臓器移植に関するシンポジウムへの参加なども経験してきました。

私はもともと臨床検査技師で、保健所や福祉事務所、教育委員会などにも勤務していたので人前で話す機会は多く、ある程度慣れています。しかし、良い講演や発表をするためには、やはり十分な準備が必要だと思っています。準備ができていると、それほど緊張せず余裕をもって本番に臨めますし、スライド(プレゼンテーション用ソフトウェアの原稿)を使うと流れに沿って語ることができます。時には5分間話すより写真をパッと見せた方が理解されることもあるので、スライドは重宝しています。

心がけているのは、資料はきれいに見やすく作ること、簡潔・明瞭に話すことです。ゆっくり、はっきり発音し、語尾をしっかり話すこと、〝あの〞〝その〞〝えー〞などの口癖を使わないようにすることも気をつけています。

いわゆる患者講師は、患者や家族としての〝思い〞を強調される方が多いようです。しかし私の場合、子どもがそれほど重症ではなく無事に成長したこともあり、親としての思いを語るより、みなの思いや意見をまとめ、現状や課題、求めたい対応などを筋道立てて語ることが多いですね。自分の経験だけでなく、医療全体をどうとらえるかという客観的な視点や、医療や福祉などの知識、話題の〝引き出し〞もある程度必要だと思っています。

委員会では雰囲気や流れを把握し、相手に向き合う

最近、患者団体の代表として、国や自治体の委員会や検討会に参加する機会も増えてきました。現在、厚労省の「社会保障審議会障害者部会」や「人生の最終段階における医療の普及・啓発の在り方に関する検討会」の委員を務めています。こうした会議では、何が求められているか、場の雰囲気を把握しながら発言することが重要です。原稿をそのまま読む方もいますが、会議の流れもありますし、私は厚労省の担当者など、相手にしっかり向き合って意見を述べたいと思っているので、用意したメモも見ずに話すことが多いのです。その結果、後日、議事録では意図した内容ではない言い回しとなっていて、内容訂正をしなければならないこともあり、考えや思いをその場で〝言葉化〞する力がまだ足りないなと反省しているところです。また事前に想定していなかった意見を求められた場合、多様な患者や家族を代表する立場として判断しにくい場面もあります。そうした時は、「自分の今までの経験に寄って立ち、判断するしかない」と思いながら、発言しています。

患者団体の活動の中で伝える力を磨いてほしい

患者の声を行政や医療者にきちんと伝えるために、当事者の語る力をスキルアップするには、患者団体の果たす役割が大きいと思います。団体の活動の中で知識も身につき、会員や医療者、行政など、さまざまな人とかかわるので、自然に語る経験を積むことができるからです。小さい団体などでそうした機会が少ない場合は、JPAのリーダー研修なども利用して、語る力、伝える力をつけ成長していただけたらと思います。

私は行政の中で働いた経験もあり、行政と当事者双方を知っているので、〝つなぎ役〞になれればと思って語ってきましたが、それでは社会を変える突破口にはなりにくいことも感じています。強い思いに駆られた患者さんやお母さんたちの言葉や語りだからこそ、人の心を動かし、突破口となることもあるでしょう。患者や家族一人ひとりにそれぞれの背景や個性があるのですから、患者講師にもいろいろな語りがあって良いのではないかなと思います。