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ピア・サポートのためのこころのレッスン

ピア・サポートのためのこころのレッスン

ピア・サポートに取り組む団体も増えてきて、「ピア・ サポート」という言葉は、すでに市民権を得た感があります。「VHO-netが考えるピアサポート5か条」には、心得もまとめられているので、ここでは、ピア・サポート活動に取り組む中で出てくる問題に焦点を当て、心理士の視点から書き進めていこうと思います。
同じ悩みをもつ人の心の支えになれたらと、意欲をもってピア・サポート活動を始めたものの、うまくいかないことも出てきます。そんな時に必要な知識として「自己理解」というものがあります。

臨床心理士・臨床動作士 黒岩 淑子 さん
ヘルスケア関連団体の有意義な活動として 注目されるピア・サポート。しかし、ピア・ サポートを円滑に進めていくためには、相談を受ける側のスキルアップや、心のケアも必要です。そこで、ヘルスケア関連団体リーダーのカウンセリング講習も行う臨床心理士・黒岩淑子さんの、ピア・サポート活動に役立つコラムを6回にわたって掲載します。
ご期待ください。

自己理解

相談に来る人(相談者)は、一人ひとり、考え方も人生経験も違います。相談に乗る人(ピア・サポート活動ではピア・サポーターと称する)も同じ悩みを経験したとは言え、価値観や人生経験までが同じとは言えません。
このような2人が面談を行う中で、心の中にはいろいろな思いが湧き上がってきます。その思いの中で特に悩むのが、相手を受け入れたくないなという感情です。共感・受容が必要と頭ではわかっていても、怒りや不安を感じることもあり、その感情は、相談者の中にも生じ、 面接が中断となることもあります。ピア・サポーターのこころの中に、このような感情が生まれた時は、放置せず、カウンセリングの専門家にアドバイスを受けることが必要です。
精神分析家のジグモント・フロイト*1は、こういう感情を「転移」という言葉で解説しています。相手の中に自分に似ている部分があり、それが、自分の持っているコンプレックスと似ている部分だったり すると、見たくないとか、あなたも努力したらなどさまざまな感情が湧いてきます。コンプレックスは自分の人生経験の中で生まれてくるものですが、相手にも「あの人もきっとこうに違いない」と自分の思いを重ねてしまうことがあります。そして、その思い込みが面談の方向性に関する判断を誤ることになってしまうこともあり、ピ ア・サポーターとしては避けなければなりません。
そうならないためにも、自分のことをよく理解しておく必要があります。それが、自己理解といわれるもので、そこに向き合うことで、自分のこころの中のコンプレックスに気づき、ピア・サポーター自身も成長していくことができます。
このコラムでは、シリーズを通して自己理解のための話題を提供していきたいと思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします。
次回は、ストレスマネジメントを通して、自己理解を深めていきたいと思います。

黒岩 淑子さん プロフィール
佐賀大学保健管理センター非常勤カウンセラー、佐賀県スクールカウンセラーを精励したのち、現在は東京都スクールカウンセラーと佐賀県難病相談支援センターピアサポート研修講師に勤しむ。

*1856~1939年、オーストリアの精神科医。「無意識」を扱った精神分析学の創始者。