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ピア・サポートのためのこころのレッスン

ピア・サポートのためのこころのレッスン

今回は、前号に引き続き、ストレスマネジメントにおけるコーピング(ストレス対処法)についてお伝えしたいと思います。人に相談することも含め、さまざまなコーピングがある中で、リラクセーションという方法があります。その中のひとつである、「漸進性筋弛緩法」について紹介したいと思います。

漸進性筋弛緩法

①伸ばした右手の手首を曲げて指先を立てた状態で10秒間待ち、その後、力を抜いて指先を倒し、しばらく右手の力が抜けた感じを味わいます。
②次は、右手・左手の順で手首を曲げて指先を同様に立て、10秒後に倒します。両手の力が抜けた感じを味わいます。
③以下、右手首、左手首、右足首に力を入れ、つま先を立て、10秒後に倒します。
④その後、右手首、左手首、右足首、左足首、腰、顔面に力を入れ、10秒後に力を抜きます。全身の力が抜けた感じをゆったり味わいながら、そのまま眠ることもできます。
⑤次の活動に移らねばならない時は、両手で拳をつくり、ひじの曲げ伸ばしを上下に10回以上繰り返し、体を覚醒してからゆっくり起き上がります。

漸進性筋弛緩法は、ジェイコブソン※1により開発された方法で、体の部位の緊張を少しずつほぐし、全身をリラックス状態へと導いていきます。
手法としては、各部位にあえて力を入れ、その後力を抜いていくので、より脱力感が出てきます。

力を入れる「緊張」と、力を抜く「弛緩」を繰り返すことにより、不要な力を抜き、副交感神経の働きを強めます。心拍が落ち着き、血圧も下がり、手足が温まり、深い眠りに入りやすくなります。さらに、免疫力も高まり、病気も回復しやすくなります。

また、「行動療法」という心理療法では、リラクセーションを取り入れながら、不安や恐怖に立ち向かう練習をしていくのですが、その場合は、椅子に座りながらできる、簡便な弛緩法を用いることが多いようです。まず、リラクセーションのやり方を練習した後で、不安が少ない現場やイメージに挑戦し、緊張が生じたらリラクセーションを行い、少しずつレベルを上げて不安場面に挑戦していきます。その際は、シュルツ※2の自律訓練法や呼吸法も使われています。
呼吸法は、どこでも手軽にできるリラックス法ですので、以下のやり方で、試してみてください。

リラックスした感じは、人によってさまざまで、その感じに最初は違和感を覚える人もいるかもしれませんが、心拍が落ち着いてくることは測定して確認もされていますので、毎日繰り返してその感覚に慣れていきましょう。
次号でも、他のリラックス法についてご紹介しますので、どうぞお楽しみに。

※1:エドモンド・ジェイコブソンはアメリカの精神科医。身体のリラックスを導く「漸進的筋弛緩法」を考案。
※2:ヨハネス・ハインリヒ・シュルツはドイツの精神科医。1932 年に自己暗示による自律訓練法を体系化した。

呼吸法

①自分のおなかの上に、軽く両手を乗せましょう。
②3~4秒で息を吸い、2 秒息を止めます。
③その後、6~8秒(吸う時の2 倍)かけてゆっくり息を吐き出します。その時おなかがへこんでいくことを手で確認します。
④すぐに息を吸い、②から③を5~6 回繰り返すと、リラックス効果が得られます。

臨床心理士・臨床動作士
黒岩 淑子さん プロフィール

佐賀大学保健管理センター非常勤カウンセラー、佐賀県スクールカウンセラーを精励したのち、現在は東京都スクールカウンセラーと佐賀県難病相談支援センターピアサポート研修講師に勤しむ。