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治験業務や当事者支援
多様な経験を活かし、PPIの浸透に取り組む

治験業務や当事者支援
多様な経験を活かし、PPIの浸透に取り組む

医学研究・臨床試験を身近に捉え、医療への関心を高める取り組みとして注目される患者・市民参画「PPI(Patient and Public Involvement)」。今回は、治験コーディネーター(CRC)や治験施設支援機関(SMO)で治験業務に取り組む一方、当事者団体や家族会の運営支援にも携わり、多方面にわたる活動を行う後藤美穂さんに、PPIを取り巻く状況やPPIを学ぶ人への期待をお聞きました。

治験業務に携わりながら支援団体の活動にも取り組む

私は、精神科領域の看護に携わる中で薬剤の重要性に気づき、治験コーディネーター(CRC)となり治験業務に携わってきました。一方で、当事者団体や家族会を支援する活動にも取り組んでいます。その中で、医療への患者・市民参画(PPI)にもかかわるようになり、(一社)医療開発基盤研究所(Ji4pe)では、患者さんや市民の方を対象に、組織活動を担う人材を育成するコースの講師を担当しています。これは、患者・市民参画を進めるには、組織として行政や製薬企業に働きかけることも重要という観点から、患者団体などの組織運営や活動の持続化を学ぶものです。

PPIは、何か特別な活動のようなイメージが先行して浸透していかない面があるようです。しかし、一般の商品やサービスに消費者の視点や意見が取り入れられるのは当然であるように、薬の開発にも患者や市民の視点は必要不可欠です。

本来は、改めてPPIを学ぶというより、子どもの頃から一つのリテラシーとして健康や医療について学び、自分の考えや意見を伝えられるようになるのが望ましい形ではないかと感じています。またSNSなどで容易に多様な情報が得られるようになった分、情報の信頼性を見極める力も必要ですから、その意味でも子どもの頃からPPIを学ぶべきだと思っています。

学びを活かしてできることから一歩踏み出してほしい

治験業務に携わる中で、製薬企業がホームページで治験情報を発表したり、同意説明文書を患者視点でチェックしたり、治験に患者や市民が参加しやすくなった面は増えたと感じています。しかし、たとえば精神疾患の患者さんに対する対応は遅れているなど、まだ課題は多いのが現状です。

患者や市民の皆さんに、必要なことを伝える力、発信すべきところで発信していく力を身につけてほしいのです。そして、学ぶだけでなく、目の前のできることから、小さなことからでもアクションを起こしてほしい。一歩踏み出すことはなかなか難しいかもしれませんが、活動し始めると、誰かが声をかけてくれたり、仲間ができたりします。歩き始めれば、何かが変わるし、何かが動くし、何かがついてきます。その一歩ずつの成功体験を積み重ねて、さらに学んで先に進んでほしいのです。

そして、失敗してもめげずに進むことが大切だと思っています。私も、NPO法人としての活動の中では、多くの失敗を経験して学んで、次に活かしてきました。患者や市民、団体の皆さんには、自分たちのビジョンやミッションをしっかり見据えたうえで、求められている方向に向かえているのかを、時に失敗しながら学んでほしいのです。そして、医療者と、患者・市民がお互いに垣根を越えて発信し合い、必要なことを決めていくことが、患者・市民参画、PPIの最終形ではないかと思っています。

PPIの学びの場

(一社)医療開発基盤研究所(Ji4pe.tokyo)
https://ji4pe.tokyo/

後藤 美穂さん プロフィール

治験施設支援機関(SMO)<br>後藤 美穂 さん 治験施設支援機関(SMO)
後藤 美穂 さん
精神科領域の看護師を経て、治験施設支援機関(SMO)にて(一社)日本臨床薬理学会認定CRCとして勤務。2014年NPO法人CNSネットワーク協議会を設立して心の悩みを抱えた人の居場所づくりにも取り組む。現在、トライアドジャパン(株)代表取締役副社長、(一社)医療開発基盤研究所(Ji4pe)理事、(一財)臨床試験支援財団評議員、日本SMO協会会長など。

※CNS:Central Nurvas Systems(中枢神経)