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活動レポート第12回(2007)

活動レポート第12回(2007)

新しい学習会が誕生し、地域に根ざしたネットワークづくりや地域特有の問題に取り組む活動を始めています。沖縄学習会はそのうちの一つです。秋には東海学習会も発足予定です。一方、ひと足早く活動をスタートした東北、関東、関西、九州の各学習会では、医療関係者との意見交換や、プロジェクトチームの結成など、より具体的で実践的な活動を展開しています。今回は、そんな活動の中から5~7月に行われた九州、関東、東北、沖縄の各学習会の様子をご紹介します。

第5回 九州学習会 in 熊本(5月13日)
社会福祉士、薬剤師、医療ソーシャルワーカーを招いて パネルディスカッションを開催

医療関係者とのより良い関係作りのために、まず医療関係者と当事者の相互理解が必要という考えから、今回は「社会福祉士、薬剤師、医療ソーシャルワーカーのことを知ろう」をテーマにパネルディスカッションが行われました。

グループワークでは、「医療に対し文句ばかり言っていたが、学習会に参加してはじめて知ったことが多かった。横のつながりを広げていく必要があることを痛感している」

「社会福祉士、医療ソーシャルワーカーなどは関係ないと思っていた」などの発言が出ました。医療ソーシャルワーカーの松原さんから、「患者さんの生の声が聴けていい刺激になった。医療ソーシャルワーカーの病院配置への確立につなげていきたい」との感想が述べられ、医療関係者、当事者が双方を知るという有意義な学習会となりました。

パネルディスカッション

●社会福祉士事務所所長  紫藤千子さんから
社会福祉士は全国に約2万人おり、社会福祉事務所の他、病院、地域包括支援センター、介護施設(支援相談員)、障害者の福祉施設や在宅サービス、行政職員、児童施設など、多くの場所で活躍しています。専門分野もさまざまで、利用する場合は得意分野を確認することが重要です。

●薬剤師 藤井淳子さんから
薬剤師は病院や調剤薬局だけでなく、製薬企業の情報提供を担当するMR、製薬企業の研究所、学校薬剤師、行政機関などで働いています。薬学部が6年制になり社会のニーズは高まってきており、最近では病棟の巡回や在宅支援にも仕事の幅を広げています。

●医療ソーシャルワーカー(MSW) 松原陽子さんから
医療ソーシャルワーカーは、保健・医療機関に所属し、通所、在宅、訪問看護、地域連携室などで働いています。患者さんたちの生活への支援、医療費の支払いが困難な人への援助、退院後の介護相談、社会復帰の支援、各制度の手続きの代行、施設への訪問の同行などを行い、さまざまな関係機関と病院をつなぎ、患者・家族が安心して生活できるよう支援を行います。

第6回 関東学習会 in 東京(5月27日)
共通の受診ノート作成に向けて、「参考項目一覧」の検討を始める

関東学習会は、医療者とのより良い関係の構築をめざして、共通の受診ノートの作成に取り組んでいます。今回は、既存の受診ノートをもとに参加者の1人が作った受診ノートの「たたき台」を検討しながら活発な意見が交わされました。討論の中で、すべてのヘルスケア関連団体に共通する受診ノートを作ることは難しいので、「新しく受診ノートを作るときの参考項目一覧」を作成し、各団体が必要なものを選択していくことが確認されました。また、参加者の1人から、所属団体の総会で制作中の受診ノートについて紹介したいという打診があり、外部への発表方法についても話し合われました。群馬大学医学部の酒巻教授からは学習会以外の場で発表する場合は、出典を明らかにすることと、経緯や反応をきめ細かくフィードバックしていけばよい結果を生むのではないかという助言がありました。

その他「長年使うのであれば、1年のまとめを作った方がよい」「緊急時の対応の項目も必要」「社会参加の様子を入れた方がいい」「医療やケアを提供してくれる人の項目が必要」「各団体がどういう考えで項目を選択するか」などさまざまな意見や提案が出されました。次回は、引き続き「新しく受診ノートを作るときの参考項目一覧」の検討と、各団体への提供方法を話し合うことになりました。また、受診ノートに対する基本的な考え方を整理するために、次回の学習会までに、全員が巻頭に掲載する「言葉」を考えてくることになりました。

関東学習会は会を重ねるごとに医療関係者の参加も増え、さまざまな立場からの多角的な意見交換が行われるようになりました。メンバー同士の交流も深まり、活気の感じられる学習会となっています。

参加団体
NPO法人 MSキャビン/あすなろ会/ あけぼの会/腎性尿崩症友の会/ 社会福祉法人/小茂根の郷 竹の子の会/ 中枢性尿崩症の会/天使のつばさ/ (社)日本オストミー協会/ポリオの会/ 日本コンチネンス協会/板橋サンソ友の会/ NPO法人 楽患ねっと/アルビノの会/ ポプラの会/全国CIDPサポートグループ/ 群馬大学医学部附属病院医療情報部 酒巻哲夫教授/ 慶應医大病院 荒尾みつ子看護師/ 埼玉県立大学保健医療福祉学部社会福祉学 高畑隆教授

第11回 東北学習会 in 仙台(6月30日)
行政や社会への提案を視野に入れ、より具体的な討論を実施

東北学習会(VHO東北ヘルスケアネット主催)ではこれまで「要援護者の視点での災害時対応」という問題に取り組んできました。政府による「災害時要援護者の避難支援ガイドライン」を受け、今後予想される県や市町村でのガイドライン策定に、東北学習会として意見・提案することをめざし、今回はより具体的な討議が進められました。

具体的なテーマは、「避難所のニーズ」「医療の確保」。「避難所のニーズ」は、要援護者を民生委員などが把握するための工夫や、緊急時の手帳を作るなどの提案が出ました。また「バリアフリーの施設の一部などを活用する」「薬剤、ボンベなどは個人で最低1週間分はストックする」「必要な薬が手に入る基幹病院の把握」「避難所ごとの受け入れ体制の情報を把握しよう」という意見もでました。

「医療の獲得」については、「行政と製薬企業で協定を」「事前の登録が大事」「個人情報保護法にとらわれすぎないことが重要」「開業医、施設、訪問看護ステーションなどを拠点にできないか」などの具体的な提案が発表されました。

グループ発表では、平成15年の宮城県沖地震を経験した宮城県美里町(現・南郷町)の保健師佐々木早苗さんが震災時の要援護者対応の体験を語りました。リストや計画書は用意してあったが、パソコンが使えなくなり書類を探し出すことができず、記憶を頼りに要援護者の家を1軒1軒訪ね歩いたことや、職員や民生委員など支援者自身も被災者であるため十分に活動することができず、「被害者の要望の強さと自らのふがいなさを実感した」との生々しい体験談に参加者一同、熱心に聞き入りました。最後に、佐々木さんは「マニュアルよりも友達100人作ること」と災害時のネットワークの重要性を強く訴えました。

東北学習会で情報を共有し、実際に行政機関や広く社会に提案していくためにプロジェクトチームを作って検討を進め、より具体的な活動に結びつけていくことが話し合われました。

第2回 沖縄学習会 in 沖縄(7月2日)
県民性とあきらめずに、患者力をつけていく方向性を探る

今年2月に発足した沖縄学習会の第2回目が、6団体13名の参加で開催されました。テーマは「”患者力“医療関係者とのパートナーシップ」。2つのグループに分かれワークショップ形式で意見交換を行いました。まとめの報告からは、各疾患に対する専門の病院や医師が少なくセカンドオピニオンが得にくいという島ならではの事情、また「なんくるないさぁ(なんとかなるさ)」に代表される沖縄の県民性が浮かび上がってきました。医師へのお任せ医療が多い、不満がありながらもそれを言わない、患者会への入会率が少ないなどの現状を、県民性と片づけてしまっていいのか。患者力をつけるための方策として、まずこの学習会を通してリーダーが勉強し情報交換をしていく、たとえば九州学習会を沖縄で開催してもらい意識や情報量の格差を知る、スカイパーフェクトTV医療福祉チャンネルのVTRを見て他県・他団体の活動状況を参考にするなど、具体的なアイデアが出されました。また、パーキンソン病友の会沖縄支部では、全国大会を誘致し会員を増やす、沖縄県難病相談・支援センターでは、全国難病センター研究会の沖縄への開催誘致など、県全体で意識の底上げをしていく方向性も出ました。「なんくるないさ」を良い視点でとらえ、「ゆいまある(相互扶助)」などの沖縄ならではの良さも交えて、「できることから今日からでも変わっていこう」と会を結びました。沖縄の患者力向上への歩みが始まっています。