CLOSE

このサイトは、ファイザー株式会社が社会貢献活動として発行しております『まねきねこ』の情報誌のウェブ版であり、個別の疾患の相談は受け付けておりません。
該当する患者団体などをご紹介することは可能です。

お問い合わせはこちら

※メーラーが起動します。

活動レポート第23回(2010)

活動レポート第23回(2010)

地域でのネットワークを広げ、情報やノウハウを共有し活動を充実させていこうとする、各地での取り組みをレポート

第16回関西学習会 in 大阪(2010年3月28日)
精神障がい者のセルフヘルプグループによる模擬発表と、情報交換を行う

3月28日、大阪市立総合生涯学習センターにおいて第16回関西学習会が開催されました。関西学習会が取り組む「患者の声を医学教育に組み込む」というテーマに沿って、精神障がい者のセルフヘルプグループ(SHG)「ドリームファクトリー」代表の渡口泰子さんが、一般の方を対象とした模擬発表を行いました。

当事者である渡口さんが、精神疾患への偏見から病院に行くまで6年間を要したが、入院中にできた仲間の紹介で作業所に通所するようになり、やがて全国精神障害者家族会連合会主催の「全国SHG研修会」に参加し、支援される側から支援する側としてSHGグループを立ち上げていくという自身の過程を発表しました。心の葛藤、自分が必要とされることの喜び、病気を隠すのではなく広く社会に認められる人間になろう……。うつ病、統合失調症などの精神疾患の特徴や治療法、日本の精神医療と福祉の歴史、精神障がい者に関する法律などの情報を織り交ぜながら、ひとりの人間が前向きに変わっていく様子が明快な語り口から伝わってきました。

質疑応答では「わかりやすく、引きつけられるような講演だった」「家族がどう支えたのかについて、もう少し時間を割いてはどうか」などの意見が出て、討議がなされました。その後、参加団体での情報交換、ファイザー株式会社の喜島さんから全国各地の学習会の活動紹介があり、それを参考に次回以降のテーマなども話し合われ、充実した学習会となりました。

参加団体
ひょうごセルフヘルプ支援センター/ 日本ハンチントン病ネットワーク(JHDN)/ 腎性尿崩症友の会/ 全国膠原病友の会滋賀支部・大阪支部/ 関西ほっとサロン/ ドリームファクトリー/ あけぼの兵庫/ しらさぎあいあい会/ 近畿SCD・MSA友の会

第16回東北学習会 in 仙台(2010年5月22日)
「心をつなぐ」「心の支え」をテーマに、講演とグループワークを実施

第16回東北学習会が仙台市シルバーセンターにおいて開催されました。前回までの「医療を考える」をテーマとした話し合いをふまえ、今回は「支える・心の支え」をサブテーマとして、講演とワークショップ形式のグループ討議が行われました。

講演では、東北福祉大学総合福祉学部教授の渡部純夫さんが「心をつなぐために」と題して、臨床心理学の立場から、障がいや病気のある人と接する時の心構えや、面接や相談の際に心がけたいことを語りました。

続いて2グループに分かれての討議が行われました。討議後、一方のグループからは「今までは団体のリーダーとして役に立たなければならない、問題を解決しなければならないと考えていた。しかし講演を聞いて、当事者同士ならではの心の支え合いが重要であり、共に生きていく支えとなることが重要だと話し合った」と発表がありました。

もう一方のグループは「講演内容を受けて、心をつなぐツールとして『インターネット』と『直接会うこと』の長所・短所を検証し、会って話すことの大切さを再認識した。また、当事者のライフステージによって、家族や仲間、専門家など必要な支えが変わっていくことなどを話し合った」と発表しました。

最後に、渡部さんが「何をしなければならないかより、相手とどうつながるかを考えることが支えることに結びつく。私もこの出会いを大切に、皆さんとつながっていきたい」と述べ、「テーマを知ってぜひ参加したいと思った」という初めての参加者も共に、一同が今後のつながりを約束して学習会が終了しました。

参加団体
NPO法人タートル/ ピンクのリボン/ NPO法人のぞみ会(変形性股関節症の会)/ (財)仙台市身体障害者福祉協会/ 宮城コンチネンス勉強会

第12回九州学習会 in 佐賀(2010年4月10・11日)
「つづける」〜チャンス・チャレンジ・チェンジ〜をテーマに、宿泊研修を実施

第12回九州学習会が1泊2日で開催されました。初日の午前中には九州学習会が立ち上げたプロジェクト「難病相談支援センター相談員研修」が行われていたこともあり、その参加者も出席し、22団体35名が集いました。テーマは昨年の第9回ヘルスケア関連団体ワークショップを踏襲した、「つづける」〜チャンス・チャレンジ・チェンジ〜。まず2団体が事例発表を行いました。

熊本SCD・MSA友の会の手島明さんは、会の発足から現在までの4年間の推移で、会の業務を分担しやすくするため、会長・副会長職を置かず役員が同等の役割を持つ世話人方式に変更したことや、保健センターの職員などが積極的に賛助会員になってくれ会員会費を値下げできたこと、今後は会を続けていくために学生を対象にボランティア会員を募集していくなどの抱負を述べました。また膠原病友の会の成清恭子さんの発表では、大好きなダンスのサークル「きらめき会」を結成したことを報告。練習時での疾患の違いを超えた交流や、イベントに出演しメディアにも取り上げられることが、難病啓発や自分たちのパワーの充電にもつながっていると述べました。

その後、3つのグループに分かれ活発な討論が行われました。そして宿泊先の佐賀市郊外の温泉旅館に移動。賑やかな交流会はもちろん、きらめき会によるダンスも披露されました。

翌日のグループ発表では、Aグループ(難病相談員のみのメンバー構成)は「相談解決にはいろいろな職種との連携が必要で、そのために経験を積み、研修会などに参加しチャレンジを続けている。それは相談者や家族の笑顔が見たいから」「続けるために大切なことは、情熱、出会い、感動、感謝、そしてクレームもまたスキルアップのための大きなチャンス」「経験や仲間の支えによって、挫折の度合いもだんだんと浅くなる。それを繰り返しながら相談員として徐々に向上していく。社会のために役立っているという実感も大きな力になる」とまとめました。

Bグループは活動を植物のサイクルに例え、「チャンスは種。たくさん蒔いても成長しない木もある。大木になるためには栄養=仲間、連携、若い力、勉強会などが必要。ときには不要な枝を剪定する勇気も持たなければならない。もし枯れてしまったらもう一度、チャンスの種をつかみ取って植えていく。それを続けることで花が咲き、種=成果物をたくさん落とせ、その木の子孫が残っていく」と発表しました。

Cグループは、まず会の運営上での問題点を抽出し、続けていくための方策を検討。特に役員同士の「腹を割った交流」が大事で、何でも気軽に話せる関係づくり、場づくりが必要。役割分担を進める上では、「入会時のアンケートなどで得意なことを記入してもらってはどうか」「県を越えての結束は、会員数が少ない団体などでは役員負担も減らせ、広報活動も充実する」などの意見が挙げられました。最後に「大切なのは明るく楽しく会を続けていくこと。楽しさは感染する。そうしてみんなが寄ってくると運営側も楽になる。それをモットーに活動していきたい」と結びました。

参加団体
NPO法人日本IDDMネットワーク/ ベーチェット病友の会 福岡県支部/ 佐賀IBD縁笑会/ NPO法人ともしび/ (社)日本リウマチ友の会 鹿児島支部/ (社)日本リウマチ友の会 熊本県支部/ ほねほねクラブ/ リウマチ友の会 熊本県/ きらめき会/ 熊本SCD・MSA友の会/ 全国パーキンソン病友の会 佐賀県支部/ 九州IBDフォーラム 熊本IBD/ 全国精神障害者ネットワーク協議会/ NPO法人線維筋痛症友の会 九州支部/ 佐賀失語症友の会/ 福岡県難病相談支援センター/ 大分県難病相談支援センター/ 長崎県難病相談支援センター/ 鹿児島県難病相談支援センター/ 宮崎県難病相談支援センター/ 熊本県難病相談支援センター/ 佐賀県難病相談支援センター

第17回関東学習会 in 東京(2010年6月19・20日)
ピアサポートをテーマにワークショップ形式で、宿泊研修を開催

6月19日・20日の2日間にわたって、第17回関東学習会がワークショップ形式で開催されました。

まず、関東学習会の運営委員でもある高畑隆さんが「ピアサポートとは」と題して講義し、その後、4つの団体がピアサポートに関する事例発表を行いました。講義と事例発表を受けての分科会では、「ピアサポートの成功例、失敗例、今後の課題」をテーマに、4つのグループに分かれて討議が行われました。

最後に、グループ発表と全体討論会が行われ、今後、どのようにピアサポートに取り組んでいくかが話し合われました。関東学習会では、ピアサポートに関する事例集の作成も視野に入れているので、今回集まった事例の扱いや、ピアサポーターの研修としてロールプレイングなどへの取り組みを検討していくことになりました。

今回は関東学習会として初めての宿泊研修でしたが、ピアサポートという関心の高いテーマを取り上げたため参加団体も多く、また遠方からの参加者もあり、活発な意見交換や情報交換が行われて有意義な学習会となりました。

講義や発表の中から、ピアサポート活動の参考になりそうな点を抜粋してご紹介します。

ピアサポートの意義を学ぶ:講義「ピアサポートとは」

公立大学法人埼玉県立大学社会福祉学科 教授 高畑隆さん

高畑さんは、真の仲間同士の支援としてのピアサポートの意義を述べ、セルフヘルプグループとしてのヘルスケア関連団体の機能を整理し、ピアサポートの役割、段階などを話されました。特に「痛みや悲しみなどの感情(心の痛み)は、当事者で実感(リアリティ)がないとわからない」「話すことによって整理する。聞くことによって荷を降ろす。人は人を支えることによって、自分も支えられる」「一人ひとりの体験をまとめることは、ヘルスケア関連団体でしかできない。例会や学習会でグループピアサポートができる。自分や仲間の体験を整理し、蓄積することが重要」「蓄積したものを役立てていけば、社会変革につながる」などの点を強調されました。

講演資料より〜ピアサポート5つの段階
1. 個人としての体験
2. 仲間と出会い自分の体験を仲間に話す
3. 例会・交流会で十分に話を聞いてもらい、仲間の体験も十分に聞いて、つき合わせる
4. 会のリーダーとして、仲間の体験を蓄積・精査、一定の共通認識となる体験を仲間に提供
5.リーダー・相談員として、「見えない会員」の個別相談、社会への活動を行う。患者講師や障がい者講師として市民や関係者に講義、医療系・福祉系・教育系の学生の育成に努める。他の疾患団体と協働する

団体としての経験を発表:ピアサポート活動紹介

これから、ピアサポートに取り組むために
NPO法人線維筋痛症友の会 遠藤 修さん

線維筋痛症友の会は、「推定患者数200万人」という患者数の多さに危機感を感じ、活動の中心が社会への発信になってしまい、個々の会員にピアサポートをする余裕がないのが課題。団体運営に必要な人材が確保できず、活動が難しいなどの課題もある。友の会を創立した当初の思いや願い、ミッションを再共有して、今後、ピアサポートにもっと取り組んでいきたい。

意識せずに、ピアサポートになっていた事例
CMT友の会 栗原久雄さん

自分たちは意識してはなかったが、患者との結婚を考えている人や、診断確定直後の人が交流会に参加し、結果的にピアサポートとなった事例があった。交流会は、会員の相談の場であると同時に、参加者の笑顔や言葉に役員も癒されることが多い。ピアサポートの場として交流会を大切にしていきたい。また意識して、事例を蓄積していくことを心がけたい。

医療施設と連携してピアサポートを実施
(社)全国脊髄損傷者連合会 千葉均さん

ピアサポートとケアマネジャーを組み合わせたピアマネジャー養成研修を全国で展開し、千葉リハビリテーションセンターなどでピアサポートを行っている。今後は、医療施設に積極的にアプローチし、各地域においてピアサポート活動の場を拡げていきたい。そして、広く社会に向けてピアサポートの有効性を訴え、また、活動を担える人材の育成に力を入れたい。

ネットワークにつなぐコーディネート力を育む
(社)日本オストミー協会常務理事 渡 喜美代さん

オストメイト相談室として電話やメール、面談での相談を受けているが、相談内容が複雑化し、相談を受ける側の負担が大きい。そこで、人と人をつなぐコーディネーター力と専門家を含めたネットワークが必要だと感じ、その構築に努めている。ピアサポートの基本として、ピアサポート養成研修にも取り組んでいる。

ピアサポートの課題
・電話相談を1日24時間受けている人がいる。病気や体力がなくて中止したケースもある。受け手の精神的・時間的・肉体的負担が大きい。記録が困難。
・モンスター化した会員への対応。
・相談内容が心の中に残って引きずってしまう。
・同じ病気だからこそ、話してもらえないことがある。病気のステージや回復に差があり、劣等感を感じてしまう人がいる。
・医者のプライドや、院内の派閥で専門医につながらない場合や、稀少難病のため患者を診たことのない専門医がいる場合などもあり、セカンドオピニオンなどの相談に答えにくい。
・難病連などの地域格差があり、相談できない。
・治療の説明など、病院が担うべき部分が団体にまわってくる。

今後の活動に向けての解決策
・電話相談の際、最初に時間などの枠組みを決めて対応する。
・ピアサポートや傾聴の研修を受け、負担を回避する方法を学ぶ。
・サマーキャンプや交流会など、気兼ねなく話せる環境をつくると、自然とピアグループが生まれ、ピアサポートが育つ。
・専門的な問題は専門職へつなぐ。他科の医師や地域の支援者に理解や協力を求める。
相談情報や体験を蓄積し、情報を整理する。
・意識して活動すれば、患者団体の活動そのものがピアサポートになるのではないか。
・他の団体と連携して、協働・連絡・活用する。助言をもらったり、悩みを語り合うことも必要。
・サポートする側の連携や、サポーターに対するサポートも必要。
・ピアサポート事業は、助成金などで資金を確保して続けることが重要。

医療関係者からのアドバイス
・活動の様子や成果を記録しておくと、助成金などを申請するときにも役立つ。
・ピアサポートの会話記録をつけ、持ち寄って、検討する。アドバイスできる専門家などが同席するとさらによい。
・気になった点について、自分と相手の会話、自分の気持ちなどをプロセスレコードとして記録すると、問題点や反省点が明確になる。

参加団体
遠位型ミオパチー患者会/ CAPS患者・家族の会/再生つばさの会/ NPO法人線維筋痛症友の会/ 腎性尿崩症友の会/全国膠原病友の会/ (社)全国脊髄損傷者連合会/ 全国CIDPサポートグループ/ 全国HAM患者友の会/CMT友の会/ 全国慢性頭痛友の会/ポリオの会/ NPO法人睡眠時無呼吸症候群ネットワーク/ 竹の子の会/中枢性尿崩症の会/ つくしの会・全国軟骨無形成症患者・家族の会/ NPO法人東京難病団体連絡協議会/ (社)日本オストミー協会/ 日本プラダー・ウィリー症候群協会/ NPO法人日本せきずい基金/ NPO法人肺高血圧症研究会