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活動紹介 第31回(2012)

活動紹介 第31回(2012)

地域でのネットワークを広げ、情報やノウハウを共有し活動を充実させていこうとする、各地での取り組みをレポート

第19回 東北学習会 in 福島(2012年6月2日)
「より良いピアサポートのために」をテーマに、事例発表や講演を実施

6月2日、福島市のコラッセ福島で開催された第19回東北学習会。「より良いピアサポートのために」をテーマに、事例発表や講演、グループ討論など多彩な内容の学習会となりました。 まず、乳がんの患者団体「ピンクのリボン」の高橋厚子さんが、事例発表を行いました。高橋さんは、電話相談などを受けるうえで感じた問題点として、「傾聴とは黙って相手の話を聞くことか、言葉のキャッチボールする方がよいのか」「結論を求められたらどうするか」「相談者にどこまで関与するか」の3点を挙げました。 事例発表を受けた形で、東北福祉大学総合福祉学部教授の渡部純夫さんによる、ピアカウンセリングの目的や方法についての講演がありました。渡部さんは「例えば溺れる人を助ける場合、状況を確かめずにいきなり水に飛び込むと、ともに溺れてしまうことも。ピアカウンセリングも同様で、状況をよく見極めてから救うことが必要」と、ピアカウンセリングを行う際の心構えなどをわかりやすく説明し、参加者は熱心に聞き入っていました。 その後、グループ討論へ。グループ発表では、「ピアカウンセラーは完璧を目指さず、ほどほどでよいのではないか。相談者本人が自分で答えを見つけ出せるように誘導することが重要」「新しい障害者総合支援法には、ピアサポート事業の活用が組み込まれている。東北学習会でピアサポートについての事例や課題を整理し、VHO-netとしても参画できるように、自治体などにアピールしていこう」などの意見があがりました。 最後に、総括として渡部さんがピアサポートを行う際のアドバイスや事例集作成の意義を述べ、「理想は社会全体がピアになること。私たちからピアサポートを広めて、より良い社会にしていこう」とまとめました。 なお、東北学習会は宮城県と福島県を中心に活動してきましたが、次回は岩手県盛岡市での開催を予定し、東北各県へのネットワークの拡がりが待ち望まれます。

第23・24回 関東学習会 in 東京(2012年3月25日・6月10日)
ピアサポート・エピソードを中心に事例発表を行い、さまざまな課題や思いを共有する

関東学習会では、互いの経験を学び合う目的で、積極的に事例発表を行い、それに基づいた意見交換や討論を展開しています。 3月25日の学習会では、まず、ぜんそく患者団体「アリスプレイス」の矢内純子さんが、自らのピアサポート・エピソードを発表。矢内さんは、情報の提供と心に寄り添う支援は“宝物”であり、自分も病気に苦しむ人に宝物を手渡したいと思い、活動を続けていると述べました。次に、「のどかの会」山根則子さんが、本部役員や本部事務局の経験、相談を受ける側の思い、患者団体の意義などを語りました。事例発表を受けたグループ討論では、それぞれのピアサポートに関する経験や、「サービス機関とのネットワークも必要」「医学教育にかかわっていきたい」と意見が活発に交換されました。 6月10日の学習会では、5人の事例発表が行われました。最初に、ピアサポート・エピソードとして「NPO法人 肺高血圧症研究会」重藤啓子さん、「NPO法人 ALDの未来を考える会」本間りえさん、「CMT友の会」岸紀子さんが、活動状況やピアサポートにかかわる経験などを述べました。リーダーとして患者団体の活動をリードしていく立場にある3人の発表に、参加者から「自分も同じような経験をしてきた」「共感できる」といった感想が寄せられ、思いが共有されました。次に、団体の活動紹介として「NPO法人 睡眠時無呼吸症候群ネットワーク(SASネット)」楠宣夫さん、「NPO法人 楽患ねっと」岩本貴さんが発表しました。 できるだけ多くの人に事例発表の経験を、という関東学習会の試みを通して、団体の課題やリーダーとしての悩みも浮き彫りに。また発表者の思いや人となりが伝わる有意義な場となりました。初参加者もすぐにうち解けて討論に加わり、次回の事例発表を引き受けるなど、積極的な姿勢が目立ち、新しい団体の参加による関東学習会の活性化が期待されます。

第7回 東海学習会 in 静岡(2012年5月19日)
障害者権利条約、障害者総合支援法案について学習・議論を行う

第7回東海学習会が静岡県総合社会福祉会館で開催されました。テーマは「見えてきた難病・障害者制度改革の行方と課題」。障害者自立支援法の廃止に伴い、障害者総合支援法案が審議されている中、難病患者を取り巻く制度はどう変わるのかを学習、議論しようというものです。まず、ポリオ友の会東海の近藤新二さんが「ポリオと障害者権利条約」と題し、予防接種(生ワクチン投与)によって40~50代で発症するポストポリオ症候群(PPS)問題と、障害者権利条約の理念、日本が条約を批准した場合の現行での施策の矛盾点などを示しました。続いて、NPO法人静岡県難病団体連絡協議会相談役の野原正平さんが、「障害者新法案と難病患者の立場」として問題を提起。厚生労働省の総合福祉部会委員として作成に関わった障害者総合支援法案の骨格提言に基づいて、 ①障がいのない市民との平等と公平 ②谷間や空白の解消 ③格差の是正 ④放置できない社会問題の解決  ⑤本人ニーズに合った支援サービス  ⑥安定した予算の確保 という6つのポイントを紹介。しかしながら、新法の方向性では、難病が障がいの範囲に入ったものの、病名や障がい名を指定する仕組みや、応益負担を法律ではなく政令で定めるなど、問題点も数多いことを指摘。骨格提言を生かした新法を実現していくために、患者団体の力量がますます問われていると述べました。生活、医療、就労、教育などさまざまな課題を左右する新法の行方について、熱心な質疑応答が行われ、有意義な学習会となりました。

第18回 北陸学習会 in 石川(2012年7月7・8日)
「医療者とのより良い関係づくり」をテーマに、北村聖 東大教授を迎えて宿泊研修を実施

「医療関係者とのより良い関係づくりのために」というテーマのもと、石川県加賀市「かんぽの宿 山代」で宿泊研修として行われた第18回北陸学習会。東京大学医学教育国際協力研究センター教授・北村聖さんを講師に招き、北村さんの出身地でもある山代温泉での開催となりました。 1日目のグループワークでは、医療関係者と当事者のより良い関係づくりのため、医療関係者側と当事者側それぞれに、どのような課題があるのかを話し合いました。 2日目は北村さんの講演からスタート。北村さんは、当事者との信頼関係を構築できる医師を育てるために、医学教育の現場で行われている試みについて述べ、患者団体が医学教育へ参加することの期待を語りました。続くグループ発表では、当事者側の課題を話し合ったグループが、「患者も病気や制度のことを学び、医療関係者に十分な情報を提供できるようになるべき。そのために患者団体が役立つのではないか」と発表。医療関係者側の課題を話し合ったグループからは、「医師は病気だけでなく、患者を診てほしい。チーム医療やネットワークの充実を求めたい」などの意見がありました。北村さんの講演を聴き、医学教育や若い医師に期待をもてるようになったとの声も多く聞かれました。 社会学の立場から参加する、富山大学人文学部准教授・伊藤智樹さんからは、「自分の訴えや相談内容を整理し、もっと積極的に医師とのコミュニケーションを試みてはどうか」とアドバイスがあり、今後、団体の活動や自らの闘病生活について発表する機会を設けていくことになりました。最後に北村さんが「病気というストレスを分かち合うために、患者団体があると思う。患者さんのQOL改善の役割を果たす患者団体に、これからも期待したい」と講評を述べました。 これまで富山県を中心に活動してきた北陸学習会ですが、今回、石川県での開催が実現したことから、石川県・福井県のネットワークも拡がりました。北陸学習会を通じて、北陸3県の連携を深めて活動していこうという提案もあり、大変有意義な学習会となりました。

第23回 関西学習会 in 大阪(2012年1月22日)
医療関係者を対象にした若年性関節リウマチの子どもを持つ親の会「あすなろ会」による模擬発表

第23回関西学習会が大阪市の弁天町市民学習センターで開催されました。今回は、関西学習会が取り組む「患者の声を医学教育に組み込む」ための模擬講演として、若年性関節リウマチの子どもを持つ親の会「あすなろ会」の三宅好子さんが、講演対象を医療関係者に設定し、体験談を発表しました。疾患の説明に始まり、13歳で若年性特発性関節炎を発症した長女の闘病生活、本人も家族も病気をどう受け止めればよいかわからないまま次々と直面する学校生活での問題、リウマチ専門医や眼科など4つの科への通院や家庭での全介助の苦労、医師の一言で味わった絶望感。そして、「あすなろ会」への入会をきっかけに会の賛助医師と出会い、新たに線維筋痛症と診断されたこと、複数科の医師が連携姿勢をとってくれたことへの信頼感、さまざまな経験を通して精神的にも成長していく長女の姿が語られました。 発表後の検討会では、「医療関係者の対応で苦労した点をもう少し入れた方がよい」「親子の葛藤を医師に知ってもらう効果があった」「医療機関の実名を出さない方がよいのでは」「あすなろ会の具体的な活動内容をもっと盛り込んではどうか」など、示唆に富む意見が出され、検討されました。その後、患者団体によるイベントなどの情報交換、今年度の年間予定やテーマ、講師候補についても話し合い、学習会終了後は恒例の新年会で交流を深めました。

第3回 四国学習会 in 高知(2012年4月1日)
医師による講演を受けて、「医師に求めるもの」「患者がすべきこと」について意見を出し合う

第3回四国学習会が高知市文化プラザにて開催されました。初参加者が多く、まずVHO-netの趣旨や活動紹介のDVD鑑賞、続いて聖マリアンナ医科大学救急医学教室教授・臨床研修センター長の箕輪良行氏による、今回の学習会テーマ「つなぐ~医療関係者とのよりよい関係」についての講演となりました。医師になって4年目に赴任した三宅島での住民とのふれあいや、乳がんの患者団体「あけぼの会」に依頼しての模擬患者を組み込んだ教育の実践、コミュニケーションスキル習得におけるアメリカの先進的な取り組みなどを通して、医師の立場から患者とのコミュニケーションの重要性が語られました。この講演を受け、3グループでのワークショップへ。「医師に求めるもの」「患者がすべきこと」について、議論を行いました。まとめの発表では、医療行為の前に患者の気持ちを汲んで優しい言葉かけなどがほしい。医師はわからないことがあればそれを認め、他の機関へつなぐネットワークを持っていてほしい。患者としては、診察時に伝えたいことを的確にまとめて話す。医師との上下関係を患者自身が決めていないか、患者目線を望むと同時に患者も医師に寄り添っていく気持ちが大切。病気や制度について学び患者のプロになろう、などの意見が出されました。最後に箕輪先生が「医学教育の世界も進んでいる。患者の意識が高まることは医師の意識向上にもつながり、よりよい関係が生まれていく」と結びました。

第17回 九州学習会 in 大分(2012年6月16・17日)
横につながり支え合っていこう患者団体の運営手法を観光地の町づくりから学ぶ

第17回九州学習会が九州を代表する観光地・大分県湯布院温泉の健康温泉館にて開催されました。今回のテーマは、「町づくり人づくり~町おこしの事例から学ぶ」。講師の湯布院町商工会会長、溝口薫平さんは静かな温泉地だった湯布院を全国ブランドに育て上げたリーダーの一人。“子孫の代に誇れる町を”と、1960年代に町づくりがスタートしました。自然保護か開発かの意見の相違、施設づくりよりも手作りイベントの優先、旅館同士の情報開示や海外視察、行政との連携やメディアの活用などの事例と、成功に至った道程を紹介。企画力・調整力・伝達力をもった3人のリーダーの必要性、年齢や立場の垣根を越えた横軸での支え合い、そしてまず自ら行動を起こし仲間を巻き込んでいくことの大切さが、語られました。参加者からは、「悪戦苦闘する町づくりの過程が、まさに患者団体の活動や運営と重なって、大いに参考になり、刺激を受けた」との感想が聞かれました。その後、5グループに分かれてワークショップが行われました。翌日のまとめでは、「将来を見据えたぶれない目的をもつ」「活動の継続は活動の誇りになる」「湯布院を見習い、小さなことをこつこつと積み上げていこう」「団体の枠を超えた横のつながりが大切」「ひとり一人の持ち味を大切にした人づくりを」「常に歩み続けること。そして楽しく!」といった、話し合いの成果が発表されました。山々に囲まれた温泉地で、仲間との交流により、心身ともにリフレッシュできた宿泊研修となりました。

第18回 沖縄学習会 in 沖縄(2012年3月27日)
「ピアサポートの成功・失敗事例から効果や課題、可能性を学ぶ

第18回沖縄学習会が那覇市NPO支援センターにて開催されました。今回は沖縄国際大学教授で臨床心理士の上田幸彦氏を講師に招き、3つの患者団体のリーダーがピアサポートの事例発表を行い、その成功例・失敗例に学びました。全国パーキンソン病友の会の又吉朝子さんは、仕事を継続する自信のない相談者に、障がい者認定などの制度や手続きの情報を提供。親身なサポートを続け、生活が安定していった相談者が交流会にも参加するようになった成功例を共有。全国膠原病友の会の阿波連のり子さんは、孤独に陥っている人に対し、頻繁に話を聞く・メールで交流を続けることで、攻撃的な発言やいらだちが徐々に減少。本人がピアサポートに取り組むまでになったと発表。課題点に、友だちになり過ぎないよう一線を引く、重要な話はメールではなく会って交わすなどを挙げました。認定NPO法人アンビシャスの照喜名通さんは、クローン病の手術経験者の立場から、相談者が手術を受ける決意をして前向きになった、役に立てたことで自分自身にもプラスになったと報告。失敗例としては、自分に効果のあった食材を勧めたところ体調と合わず、同じ病気でも個人差があることを学んだこと。またサポーターにもメンタルケアが必要であり、専門家につなぐ環境づくりが必要と語りました。それぞれの事例に講師がアドバイスし、参加者が質問するという、全員によるディスカッション形式で学習会は進行。ピアカウンセリングの構造や注意点などの再認識を得る場となりました。