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コロナ禍やIT技術の進展などをふまえ
難病相談支援センターの
これからのあり方を話し合う
厚生労働省令和3年度難病患者サポート事業補助金
全国難病センター研究会 第35回研究大会(Web)開催

コロナ禍やIT技術の進展などをふまえ難病相談支援センターのこれからのあり方を話し合う
厚生労働省令和3年度難病患者サポート事業補助金 
全国難病センター研究会 第35回研究大会(Web)開催

2021年10月16〜17日、「全国難病センター研究会第35回研究大会(Web)」〔共催:全国難病センター研究会、(一社)日本難病・疾病団体協議会(JPA)、厚生労働省難病患者サポート事業補助金〕が、オンラインで開催されました。同研究会は2003年の設立から18年目を迎え、難病相談支援センターの方向性の確立、運営や相談に従事する者の知識や技術等の資質の向上、ネットワークの構築を図るために全国各地で開かれてきました。コロナ禍が続く中、そしてIT技術が日進月歩で進む今、さまざまなテーマでの活動が発表されました。研究大会は、まず北村聖さんによる特別講演から始まりました。

全国難病センターネットワークの現状と課題
〜全国のセンターをひとつに〜

難病情報センター運営委員/<br>(公社)地域医療振興協会<br>シニアアドバイザー<br>北村 聖さん 難病情報センター運営委員/
(公社)地域医療振興協会
シニアアドバイザー
北村 聖さん
現在、47都道府県に難病相談支援センターが設置されていますが、その運営母体は都道府県の直営や、患者団体や大学病院への委託事業などに分かれており、保健師やピアサポーターの人員配置の比率もさまざまです。全国どこの地域で難病になっても、また障がいがあっても、同等で、満足できる支援が受けられるよう、難病相談支援センターの質の向上、標準化を目標に掲げています。
その一環として、(公財)難病医学研究財団が運営する難病情報センターが実施主体となり、12年に運用を開始したのが、「難病相談支援センターネットワークシステム」です。このシステムを使い、相談内容や対応について記録し保存するとともに、他のセンターとの連携強化、相互支援が可能となりました。
相談票システムはフォーマットがあり、入力はプルダウンメニューで簡略化され、受付日、疾患名などでも検索が可能です。集計プログラムも備わり、報告書の作成など業務の効率化が図れます。また、掲示板システムでは、センター間での情報共有の促進に役立っています。

このネットワークの運用状況は、全国で37施設(55%・2021年9月現在)。未運用の主な理由は、「相談員がITに弱い」「安全性に不安がある」などです。安全性については、入力したデータはすべて暗号化され、専用回線を通りクラウド(データの保存場所)に送られ、登録したセンターのみで使用や閲覧が可能です。用紙に記入しロッカーなどに保管する紙管理よりも盗難、紛失などの人為的ミスが少なく、デジタル管理による高度なセキュリティ対策が整っています。人材不足の解消や、今後も増えるであろうリモートワークにも有効です。ネットワークシステムのさらなる運用を促し、全国の難病相談支援センターの質の向上、ひとつにつながった運営体制を目指していきたいと考えています。

第1日目:パネル発表Ⅰ〜Ⅱ
若い世代が、IT技術を使った支援ツールなどを発表

パネルⅡ パネルⅡ パネルⅠの発表は、センター研究会に発足した2つの専門部会についての報告でした。以下の専門部会は「通年活動できる部会を設置してほしい」という要望により、21年3月に設置されました。

①就労部会
患者自身の目線で「自分たちの欲しい」を明確にするために、多様な難病患者の就労支援ニーズと有益な支援事例を集めて発信。情報共有のためのSNSを立ち上げ、勉強会を開催。ホームページや研究大会で成果を発表する。

②支援機器部会
難病患者はその障がいによって多様な機器が必要である。患者から体験してみたい機器の要望を募集し、企業にも呼びかけ、対面での研究会で展示。同時にホームページでの紹介、情報交換を行うSNSを検討している。
発表後には、早速チャットで「詳しく聞きたい」「参加したい」という声が寄せられました。
パネルⅡでは、 IT技術を使った、難病患者のQOL向上のための多彩な提案がありました。大学生・院生2名からは、スイッチ入力訓練ゲームや、視線操作で遊べるゲームソフトなどを、プレイ動画も使ってわかりやすく紹介。また、企業やNPO法人による、スイッチでの家電操作のアプリケーションや、意志伝達装置の体験、機器の貸し出しなどについての発表がありました。

第2日目:パネル発表 Ⅲ〜Ⅴ
アンケートから得た実態・課題・考察などを報告

パネルIII パネルIII パネルⅢでは、就労支援をテーマに2名が発表。「疾病について就職時に開示した、しなかった」に特化したアンケートの結果からの考察が述べられ、次に、難病患者を雇用する企業へのアンケートによって見えてきた実態、課題について報告がありました。
パネルⅣは、パーキンソン病に関連する2つの演題で、富山県で14年からパーキンソン病を中心としたデイサービス施設を運営する事例と、患者の運動継続の重要性に着目し、専門ジムの開設やオンラインでのトレーニングプログラムなどの事例を紹介。地域密着とインターネットを駆使した取り組みについて、双方の特徴が発表されました。

パネルIV パネルIV パネルⅤでは、全国膠原病友の会の協力を得て実施しているアンケートの報告があり、コロナ禍での膠原病患者の実態や友の会の活動状況などを報告。また、臨床心理士(公認心理師)を中心に群馬県難病相談支援センターが作成した、難病告知直後の人の心理支援を目的とした絵本作成の発表がありました。
2日間で110名の参加があり、特別講演、14名の演者による多彩な発表とディスカッションが行われ、充実した研究大会となりました。コロナ禍での対応、情報のデジタル管理や進化するテクノロジーによる新たな機器やシステムの導入、そして難病患者や家族に寄り添う心のケアや制度など、今後の難病相談支援センターの役割や可能性を探り、手応えを得た場となったようです。

主なプログラム

特別講演

■「全国難病センターネットワークの現状と課題」
 北村 聖(難病情報センター運営委員/地域医療振興協会シニアアドバイザー)

パネル発表
<パネルⅠ>
■「全国難病センター研究会の専門部会の設置について」
 永森 志織(全国難病センター研究会事務局長補佐/難病支援ネット・ジャパン)
■「全国難病センター研究会の就労部会の設置について」
 川尻 洋美(群馬県難病相談支援センター)
■「全国難病センター研究会の支援機器部会の設置について」
 松尾 光晴(アクセスエール株式会社)

<パネルⅡ>
■「スイッチ入力訓練ゲームの開発」
 市川 誉(島根大学)
■「視線入力訓練ゲームの活用と支援者のモチベーション維持向上について」
  奥井 大貴(島根大学大学院自然科学研究科)
■「身体のわずかな動きを使ってスイッチで家電を操作する」
 高橋 宜盟(有限会社オフィス結アジア)
■「コミュニケーション支援ネットワークの構築」
 仁科 恵美子(NPO法人ICT 救助隊)

<パネルⅢ>
■「難病患者・難治性な疾患患者の病気の開示・非開示、オンラインアンケートによる考察」
 中金 竜次(就労支援ネットワークONE)
■「『難病の治療と仕事の両立に関する実態調査』報告」
 金子 麻理(福岡県難病相談支援センター/福岡市難病相談支援センター)

<パネルⅣ>
■「富山発パーキンソン病大好き!デイサービスを創りました」
 中川 美佐子(株式会社オフィスG)
■「ヤール1-2のパーキンソン病の方のためのオンラインでの運動指導の可能性」
  小川 順也(株式会社Smile Space PD Café)

<パネルⅤ>
■「感染症を含む大規模災害下でも継続可能な難病患者と家族の当事者同士のコミュニティ構築に関する研究」
 西田 大介(梅花女子大学)
■「難病療養者の心理支援を目的とした絵本の作成」
  鎌田 依里(群馬パース大学)