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障害者自立支援の見直しに向けて、
当事者や関係団体による活動が行われる

障害者自立支援の見直しに向けて、当事者や関係団体による活動が行われる

2006年4月に施行された障害者自立支援法は規定により、施行3年後にあたる2009年に見直しが予定されています。今回は、障害者自立支援法にかかわる当事者や関係団体が、法の見直しや改善を求めて2008年にどのような活動を行ったのかをまとめました。

障害者自立支援法の現状

障害者自立支援法は、身体、知的、精神の3障がいの支援サービスを一本化し、サービス料の原則1割を利用者が支払う応益負担を導入したことが大きな特徴でした。しかし、サービス利用者の多くに大きな負担が生じたため、利用の抑制や中止が相次ぎ、2度の負担軽減策がとられました。

厚生労働省は2009年の通常国会が見直し法案審議の時期に当たるため、2008年4月から社会保障審議会障害者部会を再開し、自立支援法についての討議を始めました。そして、当事者団体や関係団体もこの動きに合わせて、現行の問題解決を求める活動を盛んに行っていきました。

障害者自立支援法の見直しに向けた、2008年の活動

2008年10月31日に、全国の障がい者ら30人が、障害者自立支援法による応益負担は憲法が定める「法の下の平等」に反するなどとして全国8地裁に一斉提訴しました。原告は、障がい者が地域社会で働き、生活するために必要な支援や介護は、障がい者が受ける利益ではなく、人間らしい生活をするために社会が広く負担して支えるべきものであり、障害者自立支援法によってさらに生活が不自由になったことは生存権や幸福追求権の侵害にあたると訴えています。

また同日、日本障害者協議会、障がい者の地域生活確立の実現を求める全国大行動実行委員会、日本ろうあ連盟の主催で「もうやめようよ!障害者自立支援法10.31全国大フォーラム」が、東京日比谷野外音楽堂で開催され、全国から6,500人が集まりました。超党派の国会議員が自立支援法についての見解を訴え、集会後は国会議事堂、東京駅に向かって参加者がデモ行進し、道行く人たちに「自立支援法NO!」と訴えました。そしてまた、このフォーラムでは、「障害者自立支援法」の出直しを求め「障害者の権利条約にふさわしい障害者施策、真に障害者の自立・地域生活を権利として実現する制度の確立」をはじめ、「今後の障害者施策について当事者や現場の声に基づいて検討すること」「応益負担から、障害者本人の実態をふまえた負担への変更」「障害者一人ひとりのニーズに基づくサービスが得られる仕組み」「大きな地域間格差や後退が生じた移動支援事業やコミュニケーション支援への対応」「重度訪問介護の拡充」「安定した人材確保のために現行の日割制度や報酬単価・体系の見直し」などを求めるアピールが発表されました。また、各地でも自立支援法の出直しを求めてさまざまな集会が開催されました。

11月19日には、全国障害児・者支援団体協議会[(財)日本知的障害者福祉協会、(社)全国脊髄損傷者連合会、(社)日本精神科病院協会、(福)全国精神障害者社会復帰施設協会、全国知的障害者施設家族会連合会]主催で、「障害者自立支援法の抜本的見直しをさらに求める緊急集会」が東京で開催されました。集会では「障害者自立支援法は『自立と社会参加』の理念と政策の乖離が著しく、その結果、障がい間差別や、支援の質・量の低下を招いている。また、現行の障害程度区分は、適切な支援を決める方法ではなく、利用者の自己決定・自己選択権を奪い、緊密な連携を必要とする福祉現場に大きな混乱を招いている」として、自立支援法に関わる人々が安心できる抜本的な制度と仕組みの見直しを求めるアピールを発表しました。

障がい者が安心して暮らせる社会を実現するために活動する

当事者団体の立場から社会保障審議会・障害者部会の討議に参加し、緊急集会でも意見表明を行った(社)全国脊髄損傷者連合会の妻屋明理事長は、「障害者自立支援法は、法律としてまだ不備な点が多くあるため、身体、精神、知的の3障がいのサービスを一本化したゆえに発生している問題、支援や介護サービスを提供する側の問題などが起きており、これらを解決しなければなりません。また、地方自治体の財政難による地域格差の拡大もますます深刻になってきています。

このように、置かれている立場や取り巻く環境がさまざまなので、見直しについても当然、多様な意見がありますが、各団体ともすべての障がい者が安心して暮らしていけるような社会を作りたいという強い思いは共通しています。ですから、こうした集会やアピールを通して私たちもできるだけ連携して広く社会に訴え、政府にも速やかに障害者自立支援法の抜本的な見直しに取り組んでもらいたいと考えています」と語りました。

取材を終えて

2008年12月に、厚生労働省から社会保障審議会・障害者部会による議論のとりまとめが報告されましたが、1割負担の可否は明言せず、与党は「抜本的見直し」を検討中とのことでした。2009年は世界同時不況による経済状況の悪化や、政治の混乱も予想され、国会での審議が順調に進むのか予断を許さない状況です。しかし、現行にある問題が改善されるよう、障害者自立支援法の見直しに向けた活動は続いていきます。