CLOSE

このサイトは、ファイザー株式会社が社会貢献活動として発行しております『まねきねこ』の情報誌のウェブ版であり、個別の疾患の相談は受け付けておりません。
該当する患者団体などをご紹介することは可能です。

お問い合わせはこちら

※メーラーが起動します。

QOL向上に役立つ自助具やサポート機器の研究開発 当事者やヘルスケア関連団体の参加協力のあり方を探る

QOL向上に役立つ自助具やサポート機器の研究開発
当事者やヘルスケア関連団体の参加協力のあり方を探る

病気や障がいにより身体に不自由のある人のための自助具やサポート機器の研究開発は、バリアフリーやユニバーサルデザインの広まりとともに、盛んに行われるようになってきました。しかし、使う人のQOL(クオリティオブライフ:生活の質)を真に高め、快適な生活を実現する道具を開発するには、当事者の立場からの視点や、当事者の声を集約する団体の参加協力が不可欠です。そこで、長年、自助具の開発と普及に取り組んできた日本リウマチ友の会と、ロボットスーツの体験会を開催したCMT友の会の活動を取り上げ、研究開発と、当事者やヘルスケア関連団体のかかわり方を探りました

創立50周年を迎えたリウマチ友の会は
自助具の分野でもパイオニア的存在

2010年に創立50周年を迎えたリウマチ友の会では、バリアフリーやユニバーサルデザインの考え方が普及してない1970年代から、リウマチ患者のための自助具の開発に取り組んできました。自助具とは、病気や障がいのある人が生活の中で困難を来たしている動作を、可能な限り自分自身で容易に行えるように補助し、日常生活をより快適に送るために特別に工夫された道具のことです。

リウマチ友の会会長の長谷川三枝子さんによると、当時、リーチャー(マジックハンド)や坐薬挿入器などの自助具への反響はとても大きかったそうです。現在会員に対して送料のみ負担していただき配布を続けていますが、リウマチ以外の患者さんや、医師や看護師、作業療法士、理学療法士などからの問い合わせも多いそうです。近年、ユニバーサルデザインの道具や機器が開発されるようになりましたが、大量生産ができず、価格が高いことも多いため、やはり自助具を活用している会員が多いそうです。長谷川さんは、「リウマチは女性に多い病気で、女性は身体が不自由になっても人の手を借りたくない、自分でしたいという人が多いので、その気持ちが自助具の開発につながったのだと思います。自分ではできないと諦めたり、人に依存したりしていたことが自助具を使うことにより可能になると、生活の幅が広がるだけでなく、精神的にも積極的になるなど生活の自立度を高める効果が期待できます。他の病気でも自助具は役立つと思いますので、その存在をもっと広く社会に知らせていきたいですね」と述べます。

また、自助具を活用してきたという福島県支部長の渡邉政子さんも、「自助具は、今や私たちの生活の一部です。自助具を使い、自分で工夫し、自立できる喜び―。これが患者として生きるためには必要なことだと思います。もうできないと諦めてしまうと症状が悪化することもあります。自助具を上手に使って身体をできるだけ動かしていくことも大切ですね」と語ります。

リウマチ友の会の自助具は、患者団体が主体となって患者の声を活かし、ニーズにきめ細かく応えながら開発してきたことにより、生活の自立に役立ち、また社会的にも注目を集める価値の高いものとなったと言えそうです。

サポート機器として期待されるロボットスーツ
CMT友の会が体験会を開催

2010年10月17日に開催された「CMT友の会」の横浜交流会では、サイバーダイン株式会社の協力でロボットスーツHAL®の体験会が行われました。

CMT(シャルコー・マリー・トゥース病)とは末梢神経が損傷されることで、主に手足の機能の一部が不自由になる病気です。進行性であること、現在有効な治療法がないこと、患者数が少ないために情報が得にくいことなどから、不安を抱えたまま不自由な生活を送っている患者さんが多いのが現状で、CMT友の会は、前向きな生活を送るために役立つ情報を発信する活動を行っています。

体験会で使用した「ロボットスーツHAL®福祉用」は、下肢に障がいのある人や、脚力が弱くなった人の下肢運動や歩行をサポートし、歩くことを取り戻すための自立支援ロボットです。装着者が「脚を動かそう!」とするときに脳から伝達信号が筋肉まで届きます。その際、筋肉の皮膚表面に生体電位信号が現れます。HAL®福祉用はその信号をセンサーで読み取って(装着者の意思に従って)筋肉の動きと一体的に関節を動かし、身体動作をアシストします。結果的に装着者の自立動作を助けるため、介護する方々の負担を軽減することもあります。2009年の秋から本格的にレンタルが開始され、すでに医療・介護・福祉現場で実際に運用されており、自立動作支援や運動訓練等に活用されています。

今回、装着体験をしたCMT友の会の津賀範夫さんは、「ロボットスーツには以前から興味を持ち、ぜひ体験したいと考えていました。私は背筋や腹筋の力が弱く、今日は初めて装着したので立ち上がるところまではできませんでしたが、自分が動かそうとすると脚がスッと持ち上がる感覚はありました。もっと時間をかけて調整し、慣れてきたら、もっとスムーズに操作できる気がしました。また、患者の立場からは、人の力を借りなくても装着できるようにしてほしいと感じました。今後もこうした技術の発展に大いに期待していますし、また機会があれば体験してみたいと思います」と語りました。

CMT友の会では、これからもサポート機器などの技術開発にかかわる医療者や企業と積極的に交流し、患者のQOL向上に役立つ機器の実現を訴えていきたいとのことです。

身体に不自由のある人のQOLを高め、快適な生活をサポートする道具や技術の開発に、どのように当事者や患者団体がかかわっていけばよいのか、今後もまねきねこでは期待を持ちつつ見守っていきたいと思います。