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日本の患者団体も参加してアジア地域での初開催が実現 ICORD 2012 第7回国際希少・難治性疾患創薬会議 東京大会

日本の患者団体も参加してアジア地域での初開催が実現
ICORD 2012 第7回国際希少・難治性疾患創薬会議 東京大会

ICORD 2012(International Conference on Rare Diseases and Orphan Drugs:第7回国際希少・難治性疾患創薬会議)が、2月4〜6日、東京大学駒場リサーチキャンパス・コンベンションホールにて開催されました。
アジア地域で初開催となった今回のICORDでは、日本難病・疾病団体協議会(JPA)をはじめ、世界の代表的な患者団体、各国の行政当局や製薬企業・研究機関などから、疾病にかかわるあらゆる立場の参加者が集い、多様な課題をテーマに活発な討議が展開されました。

希少・難治性疾患の分野で国際連携を目指すICORDとは

ICORDは、世界中の希少・難治性疾患の患者とその家族や関係者にとっての「よりよい社会環境整備のあり方」について、当事者だけでなく、政府関係者・研究者・企業らがともに考え、社会に向けて発信していくことを目的とした国際学会です。第1回は2005年にストックホルムで行われ、その後、マドリッド、ブリュッセル、ワシントン、ローマ、ブエノスアイレスの各都市で開催されてきました。

当学会の国際シンポジウムによって、昨今、世界の希少・難治性疾患とオーファンドラッグに関する研究・倫理・政策・活動が推進され、関係者間の潤滑なコミュニケーションと議論の促進、総合的なオピニオンの形成がなされてきました。また、治療薬創製に向けての研究や関連する政策の選択などについて協働と協調も推進されてきました。これまでは欧米や南米での活動が中心でしたが、今回初めてアジア地域での開催が実現し、この分野で真の意味での国際協調が始まったといえます。

東京大会のキーパーソンに聞く、ICORD日本開催までの経緯と今後
念願だったICORD日本開催の実現について、まず、日本での開催に至る経緯を聞かせてください

開催事務局 事務局長 西村 由希子 さん
NPO法人 知的財産研究推進機構(PRIP Tokyo) 理事
東京大学先端科学技術研究センター 助教


日本では患者団体のメンバーに当事者や家族が多いことから、国際会議などに参加する余裕がないため、国際交流が盛んではなく、世界的な動きにも参加できていませんでした。そのような中で、私たちは2008年のICORDに初めて参加しました。そこで、さまざまな立場の人が一堂に会し、学際的な議論を行うというICORDのあり方に大きな感銘を受け、2009年も発表者として参加しました。その大会後に日本開催を打診され、「日本の患者団体の活動を活性化し、また、日本における希少・難治性疾患の現状を海外にも知ってもらうためには、開催が必要」と考え、引き受けました。当初、2011年5月に開催予定でしたが、東日本大震災の影響で延期され、この時期の開催となりました。

日本での開催はとても注目度が高く、5大陸21ヵ国から300人近くが集い、海外からの参加者がその半数以上にのぼりました。アジア、特に中国からの参加者が多かったことも印象的です。また、希少・難治性疾患にかかわる研究者、大学、企業、医師、厚労省、患者など、ステークホルダーの幅広さやバランスもよく、充実したシンポジウムになったと思います。

今回のICORDには、どんな特徴がありますか

まず、アジア初開催で、中国・台湾・韓国などアジア各国が参加し、真の国際化への一歩を踏み出したことが挙げられます。アジアとしての活動も検討されており、今後、アジア地域でのミーティングなども増えてくると見込まれます。

また、「経済的な困難さから活動が停滞する団体が多い」という日本の実状に対して、突破口を探りたいとの観点から、患者団体の運営資金の話を初めて取り上げました。オーファンドラッグの規制に関しても、アメリカのFDAやヨーロッパのEMA、日本の厚労省といった、規制する側と製薬企業が加わる会議がついに実現したことも画期的だと思います。

日本の難病対策研究班からポスターセッションにも多くの参加があり、海外の研究者からも高い評価を得ました。今までのICORDでは“研究者の声”が弱かったので、その部分が充実したことも特徴に挙げられます。

日本の患者団体の活動は、どのように認識されたのでしょうか

今まで国際交流が少なかったので、日本の患者の状況や患者団体の活動の様子はあまり知られていませんでしたが、今回の東京大会で患者団体が古くから活動していることや、多くの希少・難治性疾患の団体の存在、患者団体のネットワークがほぼ全国をカバーしていることなどを知ってもらうことができ、驚かれました。難病連のように、地域での行政との連携というのは、他国からみて非常に特徴的なようです。また、難病対策委員会などにも患者代表が参加できることや、厚労省が発表した国の取り組みも高く評価されていました。

ICORD 2012を経て、今後期待される展開はありますか

各国の患者団体による共同宣言に、日本も参加が決まりました。患者や家族の生活・研究をよりよくするために“国や病気で分けず”“もっと広い視点で”“難病そのものに対し”、声をひとつにして国際社会にアピールしていこう、という作業です。ワールドワイドな活動を求める動きに合流できたことは、本当によかったと思います。

次回のICORDは、2013年秋に中国・上海で開催の予定です。上海は日本から比較的行きやすいところなので、日本からも多くの方に参加してもらい、今回の議論の続きをしたいと考えています。

東京大会を振り返って、どのような感想をもたれましたか

日本からの参加者には、刺激的な2日半だったと思います。患者団体にとっては、世界の動きを知り、今まで考えていた選択肢の幅が一気に広がる機会になればよいですね。内側を向いていた患者団体が外を向くきっかけにもなり、企業やNPOとの連携など、さまざまな可能性を感じてもらえたのではないでしょうか。行政当局も、世界規模での希少・難治性疾患分野の動向や活動を知ったわけですし、ICORDが終了したところから、国内の議論を改めてスタートしてほしいと切望します。

日本の患者団体の課題としては、人手不足や言葉の壁があり、アピール力が弱いことが挙げられます。しかし、今回のように日本で開催すれば、日英通訳はつきますし、英語の話せる日本人も増えているので、国際的な交流を深めることは可能だと思います。私たちのNPO(知的財産研究推進機構:PRIP Tokyo)は患者と連携する組織で、情報発信にも協力できます。やっと国際的な動きに合流できたので、患者団体とも積極的に連携して、今後も活動していきたいと考えています。

日本のアピール力を高めていきたい

開催実行委員長 金澤 一郎 さん
国際医療福祉大学大学院 院長/厚生科学審議会疾病部会 難病対策委員長


今回のICORDは、患者さんのグループ、研究者などアカデミーのグループ、行政に関するグループ、企業。この4グループがバランスよく参加しているところが、とてもよかったと思います。

各国の発表の中で、英語で制作されていた台湾の活動紹介ビデオは、国際的な場で活動をアピールするのに適していると感じました。日本の難病対策については、さまざまな課題がありますが、ICORDで学んだことや気づいた点を活用して、国内でも議論を深めていきたいと考えています。

日本の患者団体も国際的な仲間入りを

開催実行委員 伊藤 たてお さん

日本難病・疾病団体協議会(JPA) 代表理事
日本の患者団体は、世界的にみても歴史があり、疾病も幅広く、構成員の数も多いのですが、海外との交流はほとんどありませんでした。まず言葉の壁に加え、我々の対外的なアピールも弱く、専従職員を置くこともできずに、国内の活動だけで手一杯という団体が多かったのが現実です。

今回、自らファンドを作ったり、行政や企業とともに研究活動を支える海外の活動を知り、大いに刺激を受けました。人手不足と言葉の壁という課題はありますが、学ぶべきところは学び、国際的な仲間入りをしたいと思いました。我々の経験や蓄積が、他の国の人に役立ててもらえる可能性もあります。地域の難病連が地方行政と連携している形は、欧米では例をみないようで、関心をもたれました。今後は、日本からの発信も必要だと感じました。

また、製薬企業などとの新しい連携方法を学ぶことができ、厚労省にも海外の団体と行政の関係、研究者との関係を知ってもらえたことも、よかったと思います。新たな連携をしていかなければ、日本の成長はありません。今回学んだことを活かし、日本の難病対策の制度や仕組みが、患者や家族を総合的に支援し、社会復帰できる方向へ向かうように、私たちも連携して働きかけていきたいと思います。