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難病患者と社会をつなぎ希少・難治性疾患の認知度向上を目指す Rare Disease Day(レアディジーズデイ)2014(世界希少・難治性疾患の日)開催

難病患者と社会をつなぎ希少・難治性疾患の認知度向上を目指す
Rare Disease Day(レアディジーズデイ)2014(世界希少・難治性疾患の日)開催

Rare Disease Day(世界希少・難治性疾患の日:以下、RDD)とは、希少・難治性疾患の患者さんの生活の質(QOL)の向上を目指し、毎年2月の最終日に世界中で開催されるイベントです。2008年にスウェーデンなど欧州各国とカナダでスタートし、現在では70ヶ国以上で開催されています。日本では2010年から始まり、5回目を迎えた今年は「よりそう〜WE walk together with YOU〜」をテーマとし、2月28日、東京など全国21ヶ所で開催されました。
東京では、東京駅近くの丸の内オアゾの1階広場において、地方会場とインターネットでつながっての情報交換や、希少・難治性疾患の患者さんとの対話、高校生や厚生労働省関係者とのディスカッションなど多様なプログラムが行われ、患者団体や医療関係者、一般参加者など、さまざまな人々が集いました。また、希少・難治性疾患に関連した書籍の展示や、パネル展示なども行われ、丸の内を行き交う人たちが足を止める姿も多く見られました。
日本での開催5年目を迎えたRDDの意義や展望について、日本開催事務局である特定非営利活動法人 知的財産研究推進機構(以下、PRIP Tokyo)※の池田和由さんにお話をお聞きしました。

RDDを通じて患者さんに寄り添い、社会とつなぐ架け橋を目指す
まず“よりそう”という今回のテーマに込めた思いを聞かせてください

PRIP Tokyo 池田 和由 さん

今年のテーマは「よりそう〜WE walk together with YOU〜」です。希少疾患や難治性疾患を取り巻く現状を知って、患者さんの思いに寄り添う。一つでも多くの疾患の治療法が確立し患者さんが笑顔で生活できる、そんな未来への一歩がRDDであると考えています。難病について知らない方、特に学生や若い社会人の方に、患者さんの現状やその支援について知ってもらい、そして身近に感じてもらい、「やれそう、できそう、つながれそうな可能性」を発見できる場所を提供することが目的です。

私自身は患者でもなく、患者団体に所属しているわけではありません。難病の患者さんにとって我々の存在はどういうものかと考えた時に、患者さんの隣や一歩引いたところで同じことに共感し寄り添うというのは、我々の立ち位置そのものではないかと考えています。そして、患者さんの気持ちに寄り添って「難病が完治するような世の中になるまで一歩一歩みんなで進んでいこう、それまで側にいる」という思いでこのテーマに決めました。

日本での開催は5回目を迎えて、地域や患者団体からの参加が21ヶ所に増えました。継続していくことで活動が広がってきたという手応えは感じています。しかし、まだ社会的な認知度は高くありませんので、道半ばだと考えています。

5年目を迎えて今年のRDDの特色はどのような点でしょうか

今までも地域とのつながりを大切にしてきましたが、さらに連携を深めたことが今年のRDDの特色です。パネルやパンフレットなどの提供から一歩進めて、インターネットを利用して地域の参加者とも対談したり、意見を交換したりする試みを行いました。地域会場との調整が大変でしたが、一つのことにともに取り組むことには楽しさもあり、一体感が増すということがわかりました。地域会場から参加してくれたのは、それぞれの地域の患者団体や難病連、全国組織の支部の方などです。女性や年配の方も多く、インターネットとはあまり縁のなさそうな方も積極的に取り組んでくれるなどして、その意外性も面白く、興味深かったですね。今回の取り組みを通して、連携が深まってきていると実感しています。

また、難病に関する書籍の展示コーナーを設けたことも特色の一つです。「何か知りたい、もっと知りたい」という人に、患者さんの体験などが書かれた本を紹介することで、より深く知ってもらう方法を提供しようと考えました。『困ってるひと』の著者、大野更紗さんとの対談は立ち見客が出るほど盛況でした。難病を語ることは難しいと思いますが、大野さんの話は辛辣でありながら明るく、面白さがあり、その発信力は印象的でした。

また今回、厚生労働省と医療従事者や薬学関係への進学を考えている高校生のパネルディスカッションを企画しました。高校生の目線は、一般の人や難病を知らない人の目線に近く、また医学を志す若者たちの存在によって患者さんが勇気づけられる面もあり、RDDならではの話し合いができたと考えています。

今後に向けての課題や思いを教えてください

難病対策に関する法改正などを控え、患者さんの意識も高まってきています。また、医療者でも一般の人でも、難病に対する意識が少しずつ変わってきている印象を受けています。今後、難病患者の就労に関して、社会的な理解がますます必要になってくると考えられますので、さらに地域や患者団体の方たちとの連携を強めていくことも重要だと考えています。また、メディアについては、地方ではかなり積極的に取り上げてもらいましたが、全国レベルでの報道が少なかったので、もう少し東京のメディアへの働きかけも必要だと感じています。

PRIP Tokyoは、RDDの日本開催事務局として、アメリカやヨーロッパの希少疾患の団体と連携し、海外の情報を提供したり、日本の情報を集約したりするなどの活動を行っています。ボランティア活動ですから活動時間を確保する難しさなどがありますが、ボランティアだからこそできることもあります。私たちがコネクターやハブになり、私たちを通して患者さんや医療関係者、行政や企業など多くの皆さんにつながってもらえることに活動の意味があると考えています。

私自身は、創薬の基礎的な研究に携わっています。薬として完成するのは何十年も先になるので、すぐに患者さんの役に立てないというもどかしさを感じていました。しかし、RDDの活動に参加し、患者さんは薬だけではなく社会とのつながりも求めていることや、薬の研究に携わる人間がいることを知って喜んでもらえることがわかったことで、研究へのモチベーションが高まり、日々の研究が温かいものになった気がしています。

難病に関して、一般の人たちに直接働きかけるRDDのようなイベントはほかにはあまり見当たりません。患者さんの間でも難病のことを広く知ってほしいという気持ちが高まってきていますし、活動に賛同してくれている人が増えていると感じています。来年は2月の最終日が土曜日に当たるので、通りすがりの人が「難病って何?」と思うきっかけとなり、多くの人に興味を持っていただけるように、ファミリー向けのイベントも行いたいと考えています。また、地域との連携を深め、より幅広い年代の人、さまざまな立場の人に参加していただけるように努力していきたいと思います。

※特定非営利活動法人
知的財産研究推進機構(PRIP Tokyo)「国際的視点からの政策提言」と「知的成果を用いた社会貢献」を目指して活動を行う組織。希少・難治性疾患分野では研究者等ネットワーク構築・情報共有・研究連携をはじめ、患者団体・海外組織と連携した各種社会発信、創薬開発支援を行う。研究者や薬学部学生などが参加している。RDDイベントが日本で初めて開催された2010年より日本統括事務局に就任し、東京開催を主催するとともに地域開催支援を実施。