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若年がん患者の国内初イベント
「AYA week 2021」が開催
AYA世代のがんについて社会に発信

若年がん患者の国内初イベント「AYA week 2021」が開催
AYA世代のがんについて社会に発信

(一社)AYAがんの医療と支援のあり方研究会 理事<br>NPO法人 がんノート 代表理事 岸田 徹さん (一社)AYAがんの医療と支援のあり方研究会 理事
NPO法人 がんノート 代表理事 岸田 徹さん
AYA世代(15~39歳)が罹患したがんのことを、もっと世の中に発信したいとして開催された「AYA week 2021」。これまであまり認知されていなかった若い世代のがん患者の悩みやニーズをテーマに、オンラインの交流会、動画配信、写真展などが全国規模で行われた興味深い取り組みです。そこで、ITのスキルを活かしてAYA世代のがんについての情報発信に取り組んでいる「AYA week 2021」の共同実行委員長の1人、(一社)AYAがんの医療と支援のあり方研究会 理事の岸田徹さんにお話を伺いました。

AYA世代のがんをより多くの人に知ってもらうために

AYA week 2021 AYA week 2021 「AYA week 2021」は、一般の方にAYA世代のがんを広く知ってもらい、患者さんや学生、企業や医療従事者など多様な方たちと、従来の枠を超えて一緒にイベントを行い、〝AYA〞という言葉を杜会に浸透させたいと考えて企画しました。今回はAYA世代のがんの啓発を主眼に置き、多様な団体にイベントを開催してもらい、それらの広報を主催者として担う形となりました。企画を発表したところ予想以上に反響があり、全国74団体から84のイベントが開催されました。一部は、リアルで開催しましたが、多くはオンライン開催でした。
AYA世代のがんは、壮年期や高齢者のがんに比べて治療研究などもあまり進んでいないのが現状です。生活面の支援も十分ではありません。そこで、社会に理解を広げて、研究の促進や支援の拡充につなげていきたい。そのためには、イベントにも若い方を中心とした発信や、属性にとらわれない多様性も必要だというのが僕たちの考え方です。一般の人々を巻き込み、社会に理解を広げていくためには、多くの方々の興味や関与も大切な要素となります。まず〝AYA〞を知ってもらって、自分には何ができるかを考えてもらう土壌を「AYA week」をきっかけに培っていきたいと考えています。

自分もAYA世代のがん患者だからこそ立ち上げた「がんノート」

「がんノート」は原則、台本なしの生配信。<br>「患者さんの等身大の思いを直に感じてほしいから」(岸田さん)<br>(https://gannote.com/) 「がんノート」は原則、台本なしの生配信。
「患者さんの等身大の思いを直に感じてほしいから」(岸田さん)
(https://gannote.com/)
僕自身、25歳と27歳のときにがんと診断されました。そのとき、医療情報は医師に聞けるけれど、学業や仕事、治療費や家族との関係、もっとセンシティブな性や恋愛の問題など、医師には聞けない、患者としての生活側の情報がもっとシェアできたらいいのになと考えて、2014年に「がんノート」を始めました。患者さんをインタビューしてウェブで生配信する90分の番組です。コロナ禍により、対面でのインタビューができなくなったので、現在は、主に患者さん2人とのテーマに沿ったトーク番組「がんノートnight」、ペイシェント・ジャーニー※を使った「がんノートmini」をオンラインで配信しています。活動の中で大切にしていることは、患者さんのリアルな声を伝える等身大の発信と、〝今〞を伝えるライブ感、そして、笑いやユーモアを交えることです。撮影は、台本なしのぶっつけ本番。その方が等身大の姿が出せると思うし、そういうリアルな姿を見てもらうことで、多くの患者さんたちに「悩んでいるのは自分だけではない」と知ってもらい、ほんの少しだけでも笑って前を向いてもらいたい。ひとつでも自分と同じような例を知ることができれば、見通しや希望がもてるのではないかと考えています。家族構成やがんの種類によって治療やその後の経過は異なりますし、AYA世代のがんには希少ながんも少なくないので、できるだけ多様な患者さんの声を届けることも大切にしています。

※ペイシェント・ジャーニー:患者さんが病気や症状を認識して、どのように感じ、行動しているのかを可視化してまとめたもの。

2人に1人ががんになる時代社会啓発を進めてムーブメントを目指す

今後は、AYA世代のがんの治療成績の向上や支援の拡大につながるように、〝AYA〞の活動をLGBTQ(セクシュアルマイノリティ性的少数者)の活動のようなムーブメントに発展させ、社会に浸透させたいというのが目標です。がんノートとしても、発信の機会をもっと増やすことで、社会への啓発を進めたいと考えています。一生のうち2人に1人はがんになるという時代ですから、もっと多くの方に自分のこととして考えてもらえるように、追体験ができるようなボードゲームや、プロモーションムービーも作成しています。これらは、在宅時間が増え、オンライン化が進むコロナ禍だからこそのチャレンジにもなるのではないかと期待しています。個人としては、国際学会への参加や、海外の情報取得を視野に英会話を勉強しています。「がんノート」も「AYA week」も活動の持続化が重要です。「AYA week 2022」の実行委員会もすでに始動していますし、僕自身もAYA世代のうちに、いろいろな取り組みを完遂したいと思っています。

AYA week 2021

2021年3月14~21日を中心に開催された、AYA世代(15~39歳:思春期・若年成人、Adolescent and Young Adult)のがん啓発を目的に、患者団体や支援団体、医療従事者、企業、学生、クリエイターなど多彩なメンバーが連携して患者とつながった日本初のイベント。がんへの正しい理解や、若い世代の未来を願い、セミナー・シンポジウム、動画配信、交流会、体験談発表、インタビュー、啓発活動、ワークショップ、展示などのイベントが日本各地で展開された。
主催:AYA week実行委員会、(一社) AYAがんの医療と支援のあり方研究会
https://ayaweek.jp/

岸田 徹さん プロフィール
1987年生まれ。大学卒業後、IT関連企業に就職。社会人2年目にしてがんを発症。手術、抗がん剤治療を受けて職場復帰するが、がんが再発。学校や仕事、お金や家族、恋愛や結婚など、AYA世代のがん患者の生活に関する情報が足りていないことから、悩んでいる患者に適切な情報を届け、前向きに生きるきっかけをつくりたいと、2014年からがん経験者による「インタビュー型ウェブ番組 がんノート」をスタート、がん経験者の声を生配信している。NPO法人 がんノート 代表理事、(一社)AYAがんの医療と支援のあり方研究会理事。国立研究開発法人 国立がん研究センターで広報を担当するかたわら、大学等での講演も多数行っている。