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第1回疾患啓発勉強会
正しい健康・医療情報を発信するために
ヘルスケア関連団体の情報の捉え方を学ぶ

第1回疾患啓発勉強会
正しい健康・医療情報を発信するために
ヘルスケア関連団体の情報の捉え方を学ぶ

2022年7月24日、(一社)VHO-netとファイザー株式会社の共催で、「第1回疾患啓発勉強会」がオンラインで開催されました。この勉強会は、ヘルスケア関連団体リーダーが疾患情報を正しく捉えて発信するため、相互に学び合うことを目的として企画されました。

まず、VHO-net代表理事の森幸子さんが「患者は治療や生き方を選択し決定せざるを得ない場面に何度も遭遇します。ヘルスケア関連団体に求められる情報の捉え方や、伝わる発信の仕方を学びましょう」と期待を述べて、勉強会がスタート。続いて、京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻健康情報学分野教授の中山健夫さんによる講演、参加者によるグループワークが行われました。

講演:健康・医療情報のチェックポイント〜科学的なエビデンスを考える〜

京都大学大学院<br>医学研究科 社会健康医学系専攻<br>健康情報学分野<br>教授:中山健夫さん 京都大学大学院
医学研究科 社会健康医学系専攻
健康情報学分野
教授:中山健夫さん
中山さんは、健康情報学を専門とし、公益財団法人日本医療機能評価機構MindsやEBM※・診療ガイドラインに関する厚生労働科学研究にも携わり、日本の医療情報の分野で貢献されています。
講演では、情報の捉え方や意思決定のあり方について、具体的な例や資料を示しながらわかりやすく解説。参加者からは、とても有意義な内容で、所属団体の会員とも学びを共有したいとの声が聞かれました。

*EBM:Evidence-Based Medicine(根拠に基づく医療)

講演で紹介された内容

講演の内容(抜粋) 講演の内容(抜粋) ● 情報リテラシーとは、情報に振り回されず、情報をうまく使って、意思決定できる力のこと。特に健康や医療にかかわる場合「ヘルスリテラシー」と呼ぶ
● データの数値は、分母の確認が重要
● 情報を判断するときは、利益相反や、交絡因子(第3の要因)に注意する
● 「エビデンス」とは、薬や治療方法、検査方法など医療の内容全般について、それがよいと判断できる証拠。しかし、エビデンスが不確かでどうしたらよいかわからないときは、相談・協力し、一緒に悩んで決める「シェアード・ディション・メイキング(共有意思決定)」が必要
● テレビや雑誌の情報はすべてうのみにせず、批判的な目で見ることが大切
● 白か黒か確実な情報を求めがちだが、情報は灰色のことが多いことを知っておく
● 行動・意思決定は、情報(エビデンス)に加え、価値観や資源にもよる。総合判断が大切
● 信頼できるウェブサイトを見ることも情報リテラシーの向上に役立つ

情報を見極めるための10か条
「その根拠は?」とたずねよう
情報のかたよりをチェックしよう
数字のトリックに注意しよう
出来事の「分母」を意識しよう
いくつかの原因を考えよう
因果関係を見定めよう
比較されていることを確かめよう
ネット情報の「うのみ」はやめよう
情報の出どころを確認しよう
物事の両面を見比べよう
グループワーク

グループワークでは、講演での学びや気づきを今後の活動につなげていこうと、各グループで発展的なディスカッションが繰り広げられました。チャット機能を活用して参加者が病気や障がいに関係なく積極的に書き込み・発言するなど、オンライン開催のメリットも活かされました。

講演の感想や、学び、気づき

● エビデンスやリテラシーについて理解することができた
● 見かけの情報だけではなく、裏にある情報も考え判断することが必要
● データの数値を信じがちだが、分母が重要ということは大きな気づき。団体として発信する数字の表記にも注意が必要だと感じた
● シェアード・ディシジョン・メイキングの重要性に気づいた。団体にもできることではないか
● 判断に迷うときは相談して一緒に考えて協力して決めたい
● 担当医だけでなく、医療専門職や患者仲間の話を聞く必要もある
● 多様な視点で考える、意思決定につながるような情報整理が大切
● 患者は医療者との二人三脚であることを痛感した
● 意思決定には、その人の環境やさまざまな面が影響する。個人の環境には踏み込めないが、社会資源の活用など手助けができるようにしたい

今後団体のリーダーとしてどのような知識やスキルを身につけていく必要があると考えますか

● 患者家族への発信だけでなく、社会へも発信して理解を深める
● 正しい知識をもつことは重要。古い情報は更新していかなくてはならない
● 情報の取捨選択。情報をどのように捉えるかを学ぶ必要がある
● 正しい情報を正しく発信するスキルを高めたい
● 統計学を意識する
● オンラインでの活動に対応できるかどうかの差は大きい
● SNSでしかコミュニケーションできない人への対応が課題
● 医療者と対等に話を進めるなどコミュニケーション能力を高める
● 医療顧問の先生や信頼できる団体とのつながりをもつことが必要
● 注意喚起や、情報の見方、捉え方も併せて、発信活動をしていく
● 納得のいく意思決定を促せるようにしたい

知識やスキルを身につけることで、団体の活動がどのように変わると考えますか。もしくは、何を実現したいと考えますか

● 今回のような講演を団体の会員にも聞いてほしい。正しい情報の捉え方を学んでほしい
● 医療ソーシャルワーカーや理学療法士など専門職の団体と患者の療養生 活の困りごとなどを共有したい
● 医師と対等に対話できるよう患者力を向上させたい
● 医療者に、患者がどう感じているかを発信していきたい
● 医療に参画できる患者を輩出していきたい
● 聴く力も大切。より良いピアカウンセラーになれたらと思う
● 相談業務では、注意喚起をしながら情報提供を行っていく
● 情報発信力やコミュニケーション能力を高め、新しい人たちが参加できる団体にしていきたい
● 希少難病は患者数が少なくエビデンスが得られにくいので、ナラティブ(語り・物語)の集積で、社会に啓発して理解者を増やしていきたい
● 内向きから外向きの活動を増やしていきたい。社会資源を活用できる手助けができるようにしたい
● たくさんの引き出しをもっているのが団体の役割でもある。さまざまな情報を集約し提供して意思決定をサポートしたい
● 患者と医療のパイプ役になることを目指したい
● コミュニケーションの方向を増やしていきたい

中山さんより、VHO-netの皆さんへメッセージ

意思決定における「シェアード・ディシジョン・メイキング」は非常に重要ですが、残念ながら、まだ医療者の間に浸透しているとはいえません。また、日本では担当医との関係が強くなりがちです。多職種のスタッフが加わりチームで患者さんの意思決定を支えるのが理想ですから、患者さんももっとスタッフを巻き込むことを意識してほしいと思います。医療をより良くしていくために私たちも努力していますので、ぜひ一緒に力を合わせて進んでいただきたいと願っています。