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第23回ヘルスケア関連団体ワークショップ 新たなる挑戦!ポスターセッション:ピアサポートの質の向上・企業との協働

第22回ヘルスケア関連団体ワークショップ

新たなる挑戦!ポスターセッション:ピアサポートの質の向上・企業との協働

2023年10月21・22日、(一社)ヘルスケア関連団体ネットワーキングの会(VHO-net)の第23回ヘルスケア関連団体ワークショップが、対面(会場 : ファイザー株式会社 会議室)とオンラインを併用したハイブリッド形式で開催されました。今回は、新しくポスターセッションでの発表形式を取り入れ、事前準備から始めて分科会での活発な討論を経て、プレゼンテーションのための1枚の大きなポスターを完成させるという試みにチャレンジ。これまでになかったプログラムで展開されました。

今回のテーマは、「新たなる挑戦! ポスターセッション:ピアサポートの質の向上・企業との協働」です。まず、VHO-net代表理事の森幸子さんが開会にあたり、「社会に信頼される法人として、求められ、活躍できるよう事業に取り組んでいきたい。最近ではピアサポート体制加算や、企業との協働ではPPI(患者・市民参画)が重要と、各方面で認識されてきました。今回のワークショップは、そんな時代の先端を行くテーマです。2日間が大きな実りとなることを願っています」と挨拶。続いて、ファイザー株式会社代表取締役社長の原田明久氏が「患者団体の方々は、日本や世界でどんな治療法が行われているのか、自分たちが抱えている社会インフラをどう整備していくのか、他国の事例を目にし、情報を得ることもあると思います。皆さんが発信する情報が、この社会には重要だということを念頭において今後も活動していってほしい」と来賓の挨拶を述べました。

その後、ファイザー株式会社から参加し、分科会をサポートするボランティアについて、その役割や注意点についての説明がありました。

ポスターセッションというスタイルで進められる分科会では、その目標として、活動を伝える力を磨く、外部に向けての発信力をつける、活動を魅力的かつ簡潔にまとめるスキルを学ぶことが掲げられました。

今回の特筆すべき点は、8グループに分かれた参加者が、事前にミーティングを重ね、「ピアサポートの質の向上について」「企業との協働について」という2つのテーマから、さらに議論したい話題を絞り込み、1000字程度にまとめた『抄録』を作成したことです。そのために、オンラインで話し合いを重ね、ワークショップに臨みました。そしてできあがった抄録をたたき台にして、2日間、計6時間30分をかけて議論を重ね、試行錯誤し、発表のための1枚のポスターを完成させました。ポスターは会議室壁面に張り出され、ギャラリーウォークとして全員が閲覧。会場は臨場感あふれる展示となり全員が熱心に見入りました。その後、グループ発表が行われ、投票で選出されたベストポスター賞の発表後、全体討論へと進みました。

閉会の挨拶でVHO-net理事の増田一世さんは、「ポスターセッションへの挑戦、参加者がさまざまな立場で意見を出す多様性に加えて、今回、新たに研究的視点が加わりました。調べてみよう、そこから何が見えるのかを考え、それをどう伝えるか、知恵をしぼりました。支えてくださった多くの皆さんへの感謝とともに、これからも法人化したVHO-netはいろいろなチャレンジをしていきたい。今回のワークショップは、その大きな布石を打つ機会になったと思っています」と述べ、充実した2日間を締めくくりました。

ポスターセッションの流れ
ポスターセッションとは?

近年、学会の研究発表などでよく使われている手法で、取り組んでいる研究や課題などを1枚のポスターにまとめて掲示し、参加者に対面で、その内容を伝える発表形式です。イラストや図、グラフなども取り入れ、引用には出典も必ず記載。模造紙B0サイズに、発表内容をA4横サイズ10~15枚程度にまとめレイアウトします。テーマに興味をもった参加者が、そのポスターを訪れ、発表者がポスターを使って発表。質疑応答や活発なディスカッションが可能で、発表者も参加者も考えを深めることができるメリットがある発表形式です。

①抄録の作成(事前準備)

各グループそれぞれが、<br>議論して、内容をまとめる 各グループそれぞれが、
議論して、内容をまとめる
各グループが事前ミーティングを重ね、テーマに沿って、議論したい内容を1000字程度にまとめる。




②抄録に沿って議論(分科会)

抄録に沿って議論を深め、<br>ポスターとして完成させる 抄録に沿って議論を深め、
ポスターとして完成させる
ワークショップの2日間で、議論を深め、A4サイズにそれぞれの展開を記述し、1枚のポスターに完成させる。





③ギャラリーウォーク

完成したポスターを会場壁面に掲示(オンライン参加者は指定フォルダから閲覧)し、参加者は、興味のあるテーマについて内容を読み込む。

④投票

事務局より参加者全員に全グループのポスターの画像を送信。どのグループのポスターが秀逸だったかを各自が選ぶ。Googleフォームの指示に従って投票し、事務局が集計を行う。

⑤ポスターセッション(グループ発表)

ポスターセッション(グループ発表) ポスターセッション(グループ発表) 会場と、オンライン上に各グループが登壇。自分たちの意見を、モニターに映し出されたポスターを使って発表し、質疑応答を受ける。(発表時間7分、質疑応答3分)





⑥ベストポスター賞の発表

ベストポスター賞 グループ3 ベストポスター賞 グループ3 ベストポスター賞 グループ3「社会を変えた患者団体と企業との協働活動」





⑦全体討論
全体討論でのコメント

●抄録作成の準備段階から、一人では検索できないことをチームのみんなで集め、何倍もの情報を得ることができ、多くの学びを得ることができました。
●初めて東京会場に参加し、熱気と明るく真剣な議論の場を体験することができ、貴重な経験でした。
●事前ミーティングから始まり、長い時間をかけて、1枚のポスターが完成したことに感無量です。

ファイザーボランティアの感想

●自分に何ができるのか不安なままに応募したものの、たくさんの未知の情報やチームワークでの作業の素晴らしさに感動しました。
●普段、目にすることのない情報に学びが多く、企業として何ができるのか、今後に活かしていきたい。
●2日間の体験を、社内に持ち帰り共有し、明日から何ができるのか考えていきたい。

新たなる挑戦! 分科会ポスターセッション

8グループがポスターをもとに発表

分科会終了後のポスターセッションでは、「ピアサポートの質の向上」「企業との協働」をテーマとして、会場参加4グループ、オンライン参加4グループの発表と質疑応答が行われました。同じテーマであっても、それぞれのグループの視点や個性、これまでの議論の方向性により、ポスターの内容や表現方法は多彩で、8枚のポスターが掲示された様子は壮観でした。ここでは、各グループの特徴や発表のポイントをご紹介します。

ピアサポートの質の向上について
グループ1:ー(マイナス)1歳からのピアサポート

~人生の岐路に立つ-1歳とその家族
小児疾患や遺伝性疾患のピアサポートにかかわるメンバーも参加するグループ1では、重症疾患児の死産、出生前診断を迷う夫婦、診断を受けた妊婦と家族へのピアサポートを事例として考察。NPO法人親子の未来を支える会の活動も紹介しながら、胎児を『マイナス1歳』と認識することを提案。医療の進歩とともに必要になった「胎児診断を受ける妊婦とその家族へのピアサポート」という難しい課題に、ともに取り組んでいきたいと結びました。

グループ2:ピアサポートの原点に立ち返り深めよう

長くVHO-netで活動してきたメンバーが多く参加したグループ2 は、改めて団体の活動の原点を考えようと「ピアサポートの原点に立ち返り深めよう」をテーマに設定。「ピアサポートはなぜ必要か」「ピアサポートを維持していくためには何が必要か」を腎性尿崩症友の会の事例を挙げ考察。各ライフステージの悩みに応えるために、医師との連携による各団体のホームページの充実や、VHO-netのホームページの活用にも言及しながら、ピアサポーターの存在や正しい情報の発信が重要であるとまとめました。

企業との協働について
グループ3:社会を変えた患者団体と企業との協働活動

~事例から探究する対等な関係づくりとそこから生まれるもの

団体リーダーや研究者など多様なメンバーが参加したグループ3では、患者団体と企業との協働の事例を収集し、研究・開発、啓発(資金調達)、共生社会に分類して考察。企業との協働は人とのつながり、やる気、想い、ビジョンに加え、「社会を変えていく気持ち」をもち、尊重し合いながら進めることが大切としました。そして「協働には共感が必要であり、お互いの価値を認め合い、支え合うことが重要」とまとめました。

就労を進めていくための企業と患者団体との連携

-日本の現状と今後の可能性-

就労支援や障がい者支援に取り組んできたメンバーも参加するグループ4では、当事者の就労に着目した企業との協働をテーマに設定。多様な働き方を提案することが可能になれば、疾病や障がいのある人はもとより、人手不足に悩む企業にとっても意味をもつとしました。ファイザー株式会社社長・原田氏の「皆さんが発信する情報が社会のインフラを整備していく」との来賓挨拶での言葉も引用して、活動の可能性に言及しました。

  • オンライングループのポスター作成は、ボランティアスタッフや会場参加者が行いました。

    オンライングループのポスター作成は、ボランティアスタッフや会場参加者が行いました。

  • 昨年に引き続いてのハイブリッド形式のワークショップ開催で、会場とオンラインの連携もとてもスムーズでした。

    昨年に引き続いてのハイブリッド形式のワークショップ開催で、会場とオンラインの連携もとてもスムーズでした。

  • 熱心にポスターを読む姿が印象的なギャラリーウォーク。

    熱心にポスターを読む姿が印象的なギャラリーウォーク。

ピアサポートの質の向上について
グループ5:ピアサポートにおける専門職とのパートナーシップ

長い歴史をもつ全国組織の団体に所属するメンバーも参加したグループ5では、行政や大学病院などと連携してきた多くの事例をもとに、ピアサポートにおける専門職とのパートナーシップをテーマとして考察。よりよい信頼関係を構築し、クライアント(相談者)が望む暮らしをサポートするためには、長期間のパートナーシップ継続が重要であるとまとめ、連携は“バームクーヘンのように”丁寧に一層ずつ積み上げて、その厚みを大きくすることが必要と結びました。

グループ6:安心感・信頼感が得られるピアサポート

-雰囲気と関係づくり-

地域で当事者団体として活動するメンバーを中心とするグループ6では、ピアサポートの必要性が高まっている現状から、安心感・信頼感が得られるピアサポートをテーマに設定。共感し合えるピアサポートの場をつくる支援や、当事者の回復力を高めるピアサポートが必要とまとめました。社会に向けてメッセージを発信し続けるために、各地で行われるRDD2024(世界希少・難治性疾患の日)のイベントで今回のポスターを掲示し、厚生労働省での掲示も目指そうと提案しました。

ピアサポートの質の向上について
グループ7:ピアサポートの役割と課題

-VHO-netに関わる研究者の専門分野による切り口の違いー

多様な背景をもつメンバーによるグループ7では、VHO-netにかかわる社会学、社会福祉、臨床心理、医学、看護の専門家によるピアサポートに関する考え方や提言を抽出して、VHO-netで作成された『ピアサポート5か条』も参考に、ピアサポートの役割や課題を考察。専門職や公的機関との連携が求められていることから、医療や行政との横のつながりも大切にしながら社会へ広く訴えかけ、ピアサポートの理解を広げる必要があるとまとめました。

企業との協働について
グループ8:企業との協働

~企業と患者会との協働における現状と課題、今後の方向性

長くVHO-netの活動に参加してきたメンバーと、初参加のメンバーで構成されたグループ8では、多様な視点から企業との協働を考察。協働が推進されることは、多様性を尊重し、誰もが平等な機会が享受できる社会のために重要であり、包括的社会の創造が期待できるとまとめました。発表は初参加の2 人が担い、「今後、企業と協働していくときは、このグループのメンバーに相談してほしい」との頼もしいメッセージで締めくくりました。